奴隷傭兵、戦場に立つ
「けっ、てめぇが俺の仕事の邪魔をしておいて何言ってんだよ」
「そいつぁ悪かったな。明日の仕事は街の近くに陣取ってる敵を叩く。おまえにも行ってもらうぞ」
ニヤニヤしやがって、相変わらずの気持ち悪い笑顔だ。
「おまえの強さを見込んでその歳で十人任せてるんだ。働いてもらわんと元が取れねぇだろ」
「チッ」
舌打ちしただけで、俺は返事をしなかった。コイツの捨て駒にされたせいで、いったい何人死んでると思ってんだ。
次の日、俺たちは街の近くに陣取っている敵を叩くために戦場に出る。俺の所属してる傭兵団は三百人ほどで、比較的小さい集団だ。だが、それでも今回みたいに規模の小さい敵に対しては単独で仕事を任されることもある。
今回は、侵入してきた敵の撃退という任務だった。行ってみると、街からは煙が上がってる。
「ありゃまぁ。ちぃっと遅かったか?」
ゴズの野郎がニヤニヤしながら言う。ワザとだな・・・・・・。ワザと遅れやがったコイツ。遅れたら何がいいって?決まってる。ドサクサ紛れて街から略奪するつもりだろう。
戦争中だ、どっちがやったかなんてわかりゃしねぇ。街の連中にとっちゃ最悪のケースだ。
街に近づくと、敵も気付いて街から半分出て来ていた。そこに俺たちは突っ込んでいく。戦術なんぞない、俺たちは傭兵団だ。突撃して、ぶつかって武器を相手に斬りつけ、あるいは叩きつける。俺はロングソードを手に右に左に力任せに斬りつける。
ガタイの良さと歳不相応の膂力を武器に、剣を振るってきた。最初は俺たちが優勢に押していく。敵はどんどん押し込まれ、遂に街のなかまで引っ込んで行った。間髪入れず団長が突撃を叫ぶ。街のなかに入って行くと、壊れた建物や犠牲になった住民たちの遺体がゴロゴロしていた。
そんな住民たちを横目に敵を追ってなかへと入り込んでいく。街の中心まで入り込んだ時、異変が起きた。鏑矢が飛び、つんざくような音が響き渡ると建物の影や、なかに潜んでいた敵軍が一斉に飛び出す。今度は俺たち傭兵団が狩られる番だった。
「くそっ!罠を仕掛けてやがった。てめぇら、撤退だ!」
ゴズの判断は早かったが、もう遅い。後ろからも包囲され四方八方から敵の攻撃に晒されることになった。みるみる数を減らしていくなかで、ゴズは細い通路を駆け抜けることを選択する。
「バーン!おまえここで橋頭保を作れっ。俺が敵を引き付ける、その間におまえも逃げろ!」
「てめぇ、ひとりだけ逃げたら承知しねぇぞ!」
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