第9話 祥子の決意
海斗による戦いという名の拷問が終了した。
「ふう……ちょっとやりすぎたか……」
「白仮面怖い白仮面怖い白仮面怖い白仮面怖い」
陣はいまだにうずくまりそう連呼している。傷自体は回復させたのでどこにでも行けるのだが海斗にとって精神を壊されてしまった。それを見てさすがにやりすぎを反省した。
「どうするかな~……もしこのまま日常生活もできないほどに精神を壊してたら……」
やっている当初は海斗も頭に血が上っており現在のような半分植物状態までやるつもりがなかったため今更になる少しの罪悪感が生まれた。そうしてこれからについて考えていると海斗は別の人に話しかけられた。
「あの!白仮面さんですよね!」
「っ!?」
そこにいたのは23歳の海斗よりも少し年下の印象を受ける青年だった。そんな青年が白仮面=海斗に興奮したように話しかける。
「いや~!光を追ってきてよかった!まさかあんな場面に出くわすだなんて!」
「(光?……そうか。俺が移動していた時の火炎噴射か)」
つまりこの青年は海斗が火炎噴射にて移動した際の光を視認して興味を抱き追ってきたらしい。
「あの!僕!白仮面さんのファンになりました!すごい強さですね!正直今までは!ああ!?いや!?えっと!?」
興奮した様子で早口で語りかけていたかと思ったら急に慌てだしたりと落ち着きがない青年。しかしその目はキラキラしていた。それは自身のヒーローを見つけたかのように。
「とにかく!?ファンです!!握手してください!!」
目をつぶり頭を下げてお願いする青年。その勢いに海斗は完全に引いており逃げることにした。
「(もうあの男のこととかどうでもいいからとりあえず逃げよう。なんか怖いこいつ)」
そうして海斗は火炎噴射を使用して一気に逃亡した。
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一方でひとり残された祥子はといえば。
「また……助けられちゃったな~……ずるいよ海斗……」
祥子はすでに陣の家から出て帰宅のために歩いていた。実は祥子は最近話題の白仮面が自身の幼馴染の六ノ宮海斗だと気が付いていた。その理由としては単純に背格好だったり・発する声だったり・ジョンの存在だったり。幼馴染として好きな人として子供のころから長く海斗を見続けていた祥子には顔を仮面で隠そうが無意味だったようだ。
「愛莉も言ってたもんね。"挑戦せずに諦めるのは馬鹿らしい"って」
パチン!
祥子が気合いを入れるように頬を叩く。するとなにかを決意した表情へと変わる。
「私も探索者になろう!力をつけて今度は海斗のことを守れるぐらいに強く!強く!」
そこには海斗たちの知る昔のような元気溌剌な太陽が顔を出していた。
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海斗は少し遠回りして途中で誰にも気づかれないように仮面を外して帰宅。それをジョンが出迎えてくれた。
「わんわん!」
「ああ~ジョ~ン」
わしゃわしゃわしゃわしゃ
ジョンを抱き寄せて撫でまわすことで海斗は陣のことや最後の青年のことだったりで疲弊した精神を癒す。
「ふう。ありがとうジョン。助かったよ」
「わおん!」
海斗はスマホを見る。画面は祥子の画面。
「う~ん……やっぱり連絡するのはおかしいよな。愛莉も連絡するって言ってたし後のケアは任せるか」
外はすでに日も落ちてきている時刻となっている。
「よし!ジョン!夜ご飯の時間だ!」
「わおん!わんわん!」
その言葉にジョンは尻尾を激しく振る。
「そして明日からまた頑張ろう!」
「わおーん!!」
海斗は再び街型ダンジョン攻略への気持ちを高く持ち気合いを入れた。
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翌日となり海斗とジョンは昨夜の勢いのまま第三階層の魔物が無限に押し寄せる地下鉄エリアをクリア。階段を上り第四階層へ。
「ここは……海水浴場?」
「バウ?」
第四階層に広がっていたのは白く輝く砂浜のビーチと透き通ったきれいな海。さらには日差しが夏のように燦燦と降り注ぐ。
「これはあれだな……準備が必要だな……」
「バウバウ?」
ダンジョン用に大きくなったジョンが首をかしげているがそれを無視してジョンに待てを指示。ジョンは海斗の指示に従い待っていると家に戻った海斗が戻ってくると服装が変わっていた。目には水中ゴーグルをつけ浮き輪に入り水着を着用。
「これでよし」
「バウ?」
その主の姿にジョンは再び首をかしげる。海斗は完全に遊ぶつもり満々だった。しかしさすがに海斗もここがダンジョンの中ということを忘れていない。
「どうせあれだろ?海の中とかにあるんだろ?そんで次は海の魔物が相手だろ?」
「バウバウ」
どこかほっとしている様子に見えなくもないジョン。
「行くぞジョン!久しぶりに海で遊ぶぞー!」
結局浮き輪で海を漂っていた海斗はすぐに浮き輪を割られ魚の魔物に食われかけたところをジョンに助けられる。
「ぷはー!?危なかったー!?ありがとうジョン!!」
「バウバウ!」
「やっぱ真剣に攻略だけを考えないといけないみたいだな」
そうして海斗は苦戦しつつも割とすぐ数日で第四階層を攻略した。
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