第30話 世界的大富豪
ダンジョンクリア報酬の宝石の鑑定にIGJに依頼することになった海斗たちはまずは紹介状をもらうために世界的大富豪笹木家に向かうことになった。
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「もうすぐ迎えが到着するそうです」
「ごめんね?車まで頼んで」
「俺は免許は持ってるけど車がないからな。レンタカーをしてもよかったんだけど」
笹木家に向かうために免許の持っている海斗がレンタカーを借りて向かうことも提案したが綺亜蘭が母親に対して連絡した際に笹木家での送迎が決まった。
「大丈夫です。私の家に行くわけですし。 もともと顔を見せる予定もありましたから」
そんなこんなで談笑していると綺亜蘭により笹木家からの送迎が決まってから数十分後に車が到着した。
ピンポーン
チャイムが鳴って家の外に行ってみるとそこにはあの高級車のリムジンが止まっていた。
「おお……リムジン。 綺亜蘭ちゃんって本当にお嬢様だったのか……」
「ちょっと。今からあの笹木家の屋敷に行くんだからね?失礼のないようにしなさいよ?」
「そんなに気を張らなくても大丈夫ですよ。お父様もお母様もお優しいですから。 さあ行きましょう」
そうして綺亜蘭を先頭にリムジンに向かって歩きていく。するとそこには綺亜蘭を出迎えるように執事服を着た男性がリムジンの扉を開けたまま待っていた。
「お待ちしておりましたお嬢様。そしてお嬢様のお仲間の方々。 お話は伺っております。どうぞお乗りください」
「ありがとうございます」
その男性が当然のように海斗たちにも恭しく対応。そしてそれを普通に受け入れる綺亜蘭。
「あの?うちの愛犬なんですけど。一緒にいいですか?」
「わん?」
結果的に綺亜蘭の言葉もありOKが出て一同は車に乗り込み笹木家の屋敷へと向かう。
「ねえ?これからについてなんだけど。私はソロでもダンジョンに潜りたいって思ってるの」
向かっている道中の車内にて祥子がそう言いだした。
「別に全然かまわないけど。 というかこの先も俺たちって一緒にチーム的なやつを組んで潜るのか?」
海斗としては純粋にどうするのかという意味で聞いただけだがそれに綺亜蘭ちゃんが強く反応した。
「ええ!?違うんですか!?私はお2人と今まで通りチームを組んでいろいろなダンジョンに挑んでみたいですよ!?そのつもりでしたし!?」
「私ももちろん綺亜蘭ちゃんと同じ気持ちよ。でもこいつはあのダンジョンを攻略できたからもういらないんだって。私たちは都合のいい女ってわけね」
「そんな!?海斗さん!?」
「……言葉を間違えたか……」
話の脱線もありつつも今後の活動を話し合うことに。
「私がソロでもダンジョンに潜りたいって言ったのはあまりにも海斗と私とでレベルに開きがあるから。このままだと海斗の足を引っ張るだけになっちゃう……魔王の時みたいに……」
「……祥子さん。 そうですね……私たちが海斗さんと今後もチームを組んで一緒にやっていくのなら海斗さんに守らないといけないと思わせていたらダメなんですよね……」
どうやら祥子と綺亜蘭は魔王と相対した際に痛感した"共に戦えない"という己の実力不足に激しい悔しさが存在するらしい。
「……2人がその気持ちなら……わかった。 でも俺は待たないぞ?俺だってレベル上げたいし」
「そこは"高みで待ってる"的なカッコいい言葉を吐くところじゃないの?」
「でもそうですよね?もう少しで神域者の仲間入りするわけですし」
海斗の現在のレベルが8236であり神域者とはレベルが9999でカンストした者を指す言葉。海斗はそれに近づいている。
そんなこんなで談笑をしながら数十分。
「お話し中に申し訳ありません。ご到着いたしましたお嬢様」
そう先ほどの執事服を着ていた運転手の男性が述べる。その言葉に車の外を見るとそこは周囲が木に囲まりている森の中でちょうど開けだした場所に門と柵が存在する。だが笹木家の屋敷は見えなかった。
「到着って?ここは?綺亜蘭ちゃんの家に向かってたんじゃ?」
「それにこんな森の中にどうして門と柵が?」
頭にハテナを浮かべる海斗と祥子だったがその次の綺亜蘭の言葉から驚きの連続となる。
「あそこから数キロ先にちゃんと屋敷がありますよ。ここは庭に当たりますね」
「「はい??」」
執事の方の操作で自動で門が開き再び車は動き出す。その中は庭と表現するだけあり色鮮やかな花畑の道だったり様々な種類の木々が左右に並びそれらを管理するために何人もの庭師とすれ違う。その間もいろいろと説明する綺亜蘭だったが海斗たちは笹木家の予想以上のスケールの大きさに圧倒されていた。
「……こんなにすごかったのか……笹木家……」
「世界的大富豪とは知っていたけど……門から数キロ先に屋敷があるなんて……」
「「綺亜蘭ちゃんお嬢様すぎ」」
「一緒に言わないでください。 あの……引きましたか?」
綺亜蘭が少し悲しそうな表情でそう問いかける。それは笹木家の実情を理解した2人がこれまで通りにともに笑ってくれるのかどうか。
「引いたというか……このクラスの家に生まれた綺亜蘭ちゃんに普通の感性があるのが逆にすごいな~って思ったかな」
「ほんとそう。一緒に買い物に行ってもお嬢様って感じがなかったし……浮世離れしてるって綺亜蘭ちゃんから感じたことなかったから……」
「それはお母様の教育のおかげですかね」
「へえ~。そうなんだ」
綺亜蘭はそれまで友達だった子が笹木家の実情を理解して友達ではなくなったことを幾度か経験している。そのため2人の態度に変化を感じないところに嬉しくなり笑顔となった。
こうして海斗たちは笹木家の屋敷に到着した。
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