◇第3話 魔法陣
海斗は押し寄せる魔物たちに大きくなったジョンの背中に乗って逃走。駅前の大通りを魔物に追いかけられながら海斗が固定砲台として魔物に対抗する。
「うおおおお!火炎放射!放水光線!雷閃弓!」
海斗は赤い魔法陣から炎を放ち、青い魔法陣から水のレーザーを放ち、黄色の魔法陣から雷の矢を放つ。必死に魔物たちを討伐するために魔法陣を展開し続ける。すると海斗は徐々に理解する。自身の魔法陣が弱いのではなく最初の熊の魔物が例外なだけだということを。
「よしよし!ちゃんとダメージを与えられてる!このまま続ければ倒せるかも!」
熊の魔物には効果が見られなかった3つの魔法陣はしかしほかの魔物には倒し切れてはいないものの魔法が当たれば苦しみ痛がるため少なくないダメージが入っていることがわかる。
するといつまでも追いかけてくる魔物の軍団の中から一体の魔物が突出。空を飛び海斗へと向かってくる。
「シャー!」
それはひと言でいうのならばまさに"デカカマキリ"だった。その大きさは2mを超え羽を広げて両鎌にて海斗を切り裂こうとする。
「っ!?魔法陣盾!」
「バウ!」
バシン!
海斗は咄嗟に白色の魔法陣を発動。魔法陣盾は魔法陣自体を盾として相手の攻撃を防ぐ魔法陣。それでデカカマキリの攻撃を防ごうとした海斗であったがその前にデカカマキリはジョンによってはたき落された。
「ナイスジョン!虫には火だろ!火炎放射!」
ブオオオ!
地面にたたきつけられたデカカマキリは即座に反応した海斗の火炎放射によって焼き殺された。これが海斗の初めての魔物討伐だった。
「よっしゃー!討伐成功!」
「バウバウ!」
喜ぶ海斗とジョン。もちろんそんな中でもジョンの脚は止まらない。すると海斗の脳内に声がする。
【レベルが12上がりました。現在のレベルは12です】
そんな声が脳内から聞こえてくる。そこでダンジョンに疎い海斗は探索者としての常識中の常識を思い出した。
「そういえばダンジョンってレベルがあるんだった。上限は確か9999だったっけ?」
「バウバウ!」
思案しているとジョンに吠えられる海斗。それは攻撃を休めるなという意味だと海斗は理解した。
「ごめんごめん。考えるのは後にするよ。火炎放射!」
ブオオオ!!
放たれる炎。それが海斗にはそれまでよりも若干だが炎の威力が上がっている気がした。
「ガウ!?」
それは熊の魔物が痛がる反応をしていることからも明らかだった。
「そうか!レベルが上がったら強くなるのか!だったらより多くの魔物を倒さないとな!いくぞジョン!」
「バウバウ!」
こうして数時間もの間、海斗とジョンはダンジョン攻略を進めた。基本的にはジョンが駆けその背中に乗った海斗が固定砲台として魔法陣を展開し続ける。たまにジョン自身が魔物に対して突進したり前足で攻撃したり。ビルの屋上にひとっ飛びして少しの休憩をしたり。
そんなこんなで海斗はレベルが64にまで向上した。
「治療!」
これも白い魔法陣。治療は怪我を治す魔法陣でありほかの赤や青や黄の魔法陣とは違い白の魔法陣には属性というものは存在せず支援が役割の魔法陣。
「どうだジョン?痛くなくなったか?」
「バウバウ!」
海斗は魔物によって怪我をさせられたジョンに対して治療をかけた。そのためにビルの屋上にて休憩しているというのもある。
「ふう……ダンジョンってすごいな~……本物の街みたいだもんな……ほかのダンジョンもこんな感じなのかな?」
「バウバウ?」
ダンジョンや探索者については常識の事柄であっても忘れているような海斗。自身が知らないことが多いことは自覚していた。
ドドドド!ガガガガ!
それはビルの屋上に壁をよじ登る魔物や階段を駆け上がってくる魔物が押し寄せる音。幸いとして空を飛ぶ魔物はこの階層には少ないらしくほとんど見受けられない。
ぽふん
突然に巨大化していたジョンが小さくなった。
「うん?どうしたジョン?」
「わんわん。わおん」
「お腹すいたか。それじゃあ今日はこの辺りで終わるか」
「わん!」
「それじゃあ最後のひと踏ん張りをしてくれるか?」
ぼわん
「バウバウ!」
海斗は再び巨大化したジョンの背中に乗って帰宅するために入ってきたダンジョンの入口へと向かった。
これがのちに"白仮面"と呼ばれ日本初のレベル9999の神域者に至る六ノ宮海斗の初陣だった。
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◇:え?なんで街中に魔物が発生してんの!?
◇:やばいじゃん!?なんでどこもニュースでやってないんだよ!?
◇:バカ乙。ダンジョン配信なんだからダンジョンに決まってんだろ。
◇:にしても街型ダンジョンとか聞いたことないけどな。
◇:拙者が知る限り世界初でござるよ!ニンニン!
◇:オタク忍者?
◇:というより出てくる魔物が高級ダンジョンに出てくるような奴らばっかなんだが?
◇:最初のやつなんてトリデントベアーじゃね?
◇:っぽいな。あんなの高級ダンジョンの上位階層とか最高級ダンジョンにしかでないようなバケモンだぞ?生きてるだけですげーわ。
◇:そんな事よりも私はモフモフ犬に乗りたい。
◇:同じく!ジョン君に埋もれたい!潰されたい!
◇:とにかく今後に期待だな。この白い仮面の初心者。
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こうして海斗は世界初の街型ダンジョンとジョンの効果によって初日から注目の配信者となる。しかしそのことを海斗が知るのは少し先の話。
ダンジョンにはランクあり。低級→中級→高級→最高級。高級に挑戦し続けることが出来る探索者は一流の探索者と言われている。
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