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第21話 祥子と綺亜蘭

海斗と別れた祥子たちはそこから左側の時計塔へと進んだ。


「祥子さん。作戦などはどうしますか?」

「そうね……私の能力は覚えてる?」

「もちろんです。聞くだけでも随分と()()()()()だなって思いましたから」

「ずるいね~。その代わり()()()()()()()になっちゃうんだけどね?」


祥子が腰に差している自身の能力で生み出した「霊刀・黄泉比良坂(よもつひらさか)」。当然能力で生み出した刀なため普通の刀とは違う。「霊刀・黄泉比良坂(よもつひらさか)」には条件は存在するがあらゆる物体を素通りし直接()()()()ことができる防御不可能な力がある。


「たしか10秒間の納刀が必要で抜刀後は1秒で効果が切れるんでしたっけ?」

「うん。そのとおり。しかもその10秒間は動いちゃダメなんだよ。 だからすごい使いどころが限られる能力なんだよね~」

「動けないっていうのは辛いですね」


祥子がその能力を使用するのは敵を瀕死に追い込んだり遠くに吹き飛ばしたりなどで10秒間時間を稼げるときでないと不可能。しかしそれはソロでダンジョンに挑んでいるときの場合。今は仲間がいる。


「だから魔物の強さとかにもよるんだけど、魔物をみんなに足止めしてもらってその間で私がその能力の準備に入るかとは頭に入れていてもいいかもしれない」

「なるほど。それはどちらも危険となる作戦ですが……まさに最後の手段といった感じですね」


祥子が能力を発動するということは10秒間無防備状態の祥子をみんなで守る必要があるということ。それは単体でも総がかりでも勝ち目がないと判断を下した末の作戦。守る側の危険性はもちろんのこと祥子の守りが緩めば攻撃は無防備な祥子に向かうことになる。できることなら選びたくない作戦といえる。


「バウバウ!」

「にゃ~」


そんな祥子と綺亜蘭(きあら)が作戦について話し合っているとジョンとにゃーちゃんがそろって鳴いた。視線を前方に向けるとそれは時計塔につながる橋に到着した合図だった。


「よし。私たちだって海斗に負けてられないから!」

「海斗さんにいいところを見せましょう!」

「バウバウ!」

「にゃ~」


ちなみに祥子も綺亜蘭(きあら)もどちらも配信をしていないので名前を口にしても問題なかったりする。


祥子たちは橋に足を踏み下ろした。広さ的にも祥子と綺亜蘭(きあら)とジョンが横に並んでも少し余裕のある広さをしているため全員横並びで進むことにした。にゃーちゃんは綺亜蘭(きあら)の腕の中から飛び出して一歩前を歩いている。


「後ろがふさがれるのも同じですね」

「だね。でも出てくる魔物を討伐すれば消えることも知ってるから大丈夫」


橋に入るなり背後が閉じられたがそれの対処は海斗で知っているために落ち着いている。そして予想通りに魔物が出現した。それは鷲のように大きな赤い鳥の魔物だった。


「今度は鳥か」

「近接が主体の私たちだと空から攻撃されると厄介ですね」


その鳥たちは赤い身体を燃え上がらせたかと思ったらそのまま祥子たちのほうへと低空飛行のまま襲い掛かる。


「「「クエーーーー!!」」」


バサア!


「来てくれるならありがたい!霊道!」


ズン!


まず初めに動いたのは祥子だった。祥子は刀を抜き襲い掛かってくる鳥に向かって駆ける。そのスピードは祥子よりもレベルが高い綺亜蘭(きあら)が見失うほどの速さだった。


「っ!?にゃ~ちゃん!私たちもいくよ!」

「にゃ~」


そんな祥子に驚きをあらわにするもすぐに切り替えて自身も行動に移る綺亜蘭(きあら)


変異進化(キャスパー)!」

「にゃお~!」


それは綺亜蘭(きあら)が街型ダンジョンを第一階層から挑み第四階層にて覚醒したにゃーちゃんの進化した本来の姿。

黒猫のにゃーちゃんは変異進化(キャスパー)を唱え黒虎へとその姿を変えた。


「本当は海斗さんにも見てほしかったんだけど」


綺亜蘭(きあら)は黒虎と化したにゃーちゃんの背中に乗りながら文句を垂れる。それをにゃーちゃんが叱咤する。


「にゃ~ご」

「そうだね!今は戦いに集中しないとね! 暴れよう!にゃ~ちゃん!」

「にゃ~ご」


ダッ!!


駆ける黒虎のにゃーちゃん。その速度はジョンさえも上回りわずか3秒の間にその場にいた数十体の鳥の魔物を切り裂いた。


「……速すぎじゃない?」

「バウバウ」


鳥の魔物をジョンと共に対処していたらいつの間にかすべてが倒されていた祥子は呆気に取られていた。


「どうですか祥子さん!これがにゃーちゃんの真の姿です!」


にゃーちゃんの背中に乗った綺亜蘭(きあら)が胸を張って祥子に自慢する。


「それが綺亜蘭(きあら)ちゃんが内緒って言ってたやつね」

「はい!祥子さんも消えたと思うほどに速かったですけど私のにゃ~ちゃんのほうがもっと速いですから!海斗さんの隣に並び立つのは私ですね!」

「へえ~。ってことは私の動きに綺亜蘭(きあら)ちゃんはついてこれなかったんだ?よくそんなので胸を張れるね?」


言い合いを始める2人。それをジョンはあきれた様子で眺めている。ちなみに祥子のあれは霊道と名付けられた高速移動術。にゃーちゃんを召喚していてレベルも祥子より高い綺亜蘭(きあら)さえも見失ったそれは「霊刀・黄泉比良坂(よもつひらさか)」の能力というわけではないし綺亜蘭(きあら)よりも速いというわけでもない。祥子がダンジョンに挑戦している中で自然と身に着けた()()だった。


さらに言えば祥子の能力は使用する場面が限られるので普段は()()()()とみんなが総じて恩恵を受ける()()()()()()()()()()()()()のみで戦闘を行っている。それは周りに比べてハンデを背負っているようなもので能力が無いに等しかった。


祥子はこれまでの人生で格闘技などとは無縁の生活を送っていた。殴り合いの喧嘩をしたことさえない。ゆえに自身に流れる()()()()()()()に気づいたのは探索者となってから。


本宮祥子という女性はこと戦闘センスに限れば海斗さえも上回る。

読んでくださりありがとうございます!


もし少しでも面白いと思ったら☆☆☆☆☆をつけてくれるとそれが作者の描き続ける原動力となります!よろしくお願いします!

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