第19話 新たな力
海斗の橋での戦闘は外からは煙で覆われているため外からはわからない。その場にいる祥子や綺亜蘭たちは海斗を信じて海斗の勝利の時を待つ。そしてそれは突然にやってきた。
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「うう~!煙が邪魔で海斗さんの様子がわかりません!」
「大丈夫よ。海斗ならきっと勝って帰ってくるわ」
綺亜蘭が目の前に広がる煙にヤキモキしていると祥子はなにも心配していないかのように普通にふるまっている。しかし……
「……その割にはさっきからジョン君を撫で続けてますけど?ジョン君も乱暴な撫で方に迷惑そうにしてますよ?」
「バウ~」
「ハッ!?こっ!?これは!?」
祥子が言い訳をしようとしているとその煙の中から天にまで届くかのような赤い火柱が発生した。
ボウ!!!
「海斗!?」
「海斗さん!?」
思わず駆けだそうとする2人だがその足が止まる。それは先ほどの火柱により煙が晴れた先に存在した光景によって。
地面に転がるいくつもの炭と化した蛇の亡骸。さらに唯一立っている赤い髪に白い仮面から覗く赤い眼。身体の周囲には赤いオーラのようなものが漂っている。海斗が変異していた。
祥子は恐る恐るそんな海斗に対して話しかける。
「海斗……なのよね?」
その声に立ったままだった海斗は祥子たちのほうを向き答える。
「怖がらせてごめん。どうやらこの魔法陣を使うと姿まで変わるみたいだな」
そう言って海斗は仮面を脱ぐ。
「海斗さん?仮面をとっちゃっていいんですか?」
「ああ。念のために俺が戦う前から配信は終了してるから。さっきの祥子の海斗呼びも配信に乗ってないよ」
「あ!ごめんなさい!わたし!」
「いいんだよ。俺も祥子にバレてたみたいだしバレたらその時に考えよう」
どうやら現在は配信をしていないらしい。すると我慢の限界に達したジョンがたまらず駆け出す。
「バウバウ!バウ~!」
ダッ!
その嬉しさからの行動はしかし海斗によって阻止される。
「ジョン!おすわり!」
「バウ!」
ザザー!
条件反射のようにお座りをするジョン。
「悪いなジョン。まだこの力に慣れてないから撫でてあげることはできないんだ」
「バウ~」
その発言にしょんぼりするジョン。しかしその言葉に綺亜蘭が気になっていたことを問う。
「海斗さん。その姿はなんなんですか?目の色も髪色も赤くなってるし」
「ああ、これは俺のレベルが1.000に達したことで解放された新しい力だよ。結構すごいぞ?これ」
そう言っていると橋の向こうから新たな蛇が今度は先ほどの倍以上の数でやってくる。
「この力の試運転にはちょうどいいか」
そう言って海斗は白い仮面をかぶりなおす。手を突き出し現れた赤い大剣を握ると大きく振りかぶる。
「すう…ふう」
目をつぶり深呼吸する海斗。しかしその間に大量の蛇たちが海斗に接近。
「海斗!?」
「海斗さん!?」
祥子と綺亜蘭が叫ぶ声を上げるがその心配は無用だった。次の瞬間にはすべてが終わっているのだから。
「はあ!」
ブン!
振り下ろされた大剣は近くにいた蛇を切り裂いただけではなくその大剣から大きな炎の斬撃が飛んでいくと先ほどの倍以上は存在した蛇が一匹のこらず炭となった。
「へえ~なるほど。これが炎人モードの力か」
海斗は戦闘前は987レベルだった。そこから十数レベルあがり1.000を超えた。たった十数レベル上がるだけでそれまで煙というハンデがあったとはいえ追い込まれていた海斗はわずか一撃でより多くの敵を倒して見せた。その成長度合いは世界が驚愕するほどに。
「……」
「……」
祥子も綺亜蘭も驚きすぎにより思考が停止。時が止まったかのように動かない。すると海斗が振り返る。
「いま配信を開始したからこれ以降は呼び方に注意してほしい。聞いてるか?赤色仮面?」
「あ、うん……じゃなくて!?白色仮面!?なにさっきの!?」
「白色仮面じゃなくて白仮面な」
「そんなのどうでもいいので説明してください!白色仮面!」
「…綺亜蘭のそれはわざとだろ?…」
そこから海斗は新たに手に入れた力について説明した。
「これは炎人モード。俺がレベル1.000に到達したから手に入れた力だよ」
「炎人モード……なんだかすごそうな名前ね」
「イフリートといえば確か精霊の名前だったはず」
「そう。この姿は炎の精霊のイフリートと融合することでなることができるんだ。ちなみに火の魔法陣だからイフリートだけど、水の魔法陣だったら氷人モード。さらに雷の魔法陣だったら雷人モードっていうのになる」
「ほかに2つも」
「当然同じぐらい強いんでしょ?」
「ああ。それをこれから試そうと思う。 それでこれからなんだけど」
橋を渡ろうとすれば現れた蛇。やはりその先にある時計塔になにかがあると考えていいだろうと。だからここからは二手に分かれることに。
「ジョンは2人を守ってやってくれ。第六階層の魔物はどうやらこれまでよりも強大かもしれない」
「バウバウ!」
こうして海斗単体とそれ以外の祥子たちの班で別れて時計塔に向かうことになった。
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