第17話 新たな仲間
低級ダンジョンで散歩していた海斗はなぜかそこにいた祥子にさらになぜか正体がバレており連行される形で海斗の自宅に向かっていた。その道中は無言のまま。ちなみに仮面は適当なところで取っている。
「(やっぱあれか……俺があの男をボコボコにしたことを恨んでるとしか……)」
海斗は自身が怒られている理由が祥子の元カレである矢島陣をトラウマができるレベルまでボコしたことにあると考えた。しかしそれは即座に否定される。
「言っておくけど陣の件で怒ってるわけじゃないからね?」
隣で終始無言だった祥子がそう否定する。
「え?なんで」
海斗は口に出していないのにどうして考えてることが分かったのかと疑問の声を上げる。
「そんなのちょっと顔を見たらわかるよ。 私がどれだけ海斗を見てきたと思ってるの?」
「っ!?」
そう話し自身を見上げる祥子の表情に海斗はドキッとした。幼馴染として見慣れたはずの祥子の顔。しかし祥子に恋をしていた海斗はそのころの気持ちを思い出した。
「(そういえばここって……小学校の通学路か……)」
小学生の頃の一緒に通学していた道を通って帰宅していた海斗と祥子。海斗がそのころのことを思い出していたら祥子の表情は曇っていた。
「……ごめんね。私があんなに怒る理由なんてないのに……」
そのしゅんとした姿に海斗は若干慌てる。
「い、いや!?俺は全然大丈夫だから!気にしてないし!」
「ふふっ。相変わらず優しいね海斗は」
海斗の慌てながらのその言葉に笑顔になる祥子。そして海斗の前に出て真剣な表情となる。
「ありがとう。私を救ってくれて。私を気づかせてくれて。本当にありがとう」
そういって祥子は海斗に対して頭を下げてお礼を述べる。それは矢島陣の件でのお礼だということはすぐに理解できた海斗。しかし海斗としてはどうして正体がバレたのかが気になっていた。
「祥子はどうして俺だって?」
配信では白い仮面で素顔を隠していたはずなのにどうしてバレたのかという最大の疑問を問いかける。再び歩き出した祥子はその海斗の問いかけに逆に首をかしげて不思議そうにしている。
「どうしてって……その姿とか声もそのままだったし。それにジョンがジョンだったし……海斗をよく知ってたら気づかないほうがおかしいと思うよ?」
「そ、そうなんだ……」
言われて初めて正体を隠すという行為が穴だらけだったと気づいた海斗。しかし白仮面=六ノ宮海斗とその正体が世間にバレていない理由が友達の少なさにあるということを理解した海斗はなんとも言い難い気持ちとなった。
「私ね?あれからダンジョンに潜ってるの。強くなるために。 自分の意思を貫くのには強さがいるっていうのが分かったから。 それに……夢をかなえるために……」
「夢?それって?」
「うふふっ。教えなーい」
「おいおい。ここまで言っておいてそれかよ」
そんな会話をしながらも2人は海斗の自宅の前にやってきた。そこで海斗は肝心の疑問が晴れてないことに気づく。
「そういえばなんで出会ったときにあんなにも激怒してたんだ?話を聞いてると怒る理由がなさそうなんだが?」
それは当然の疑問なのだがその海斗の問いかけにより祥子に笑顔ながらも目の奥が笑っていない表情を作らせてしまう。
「っ!?(やばい!?また怒らせた!?)」
その表情に一瞬で海斗は自身が逆鱗に触れたことに気が付き慌てる。しかし海斗がなにかを言い繕う前に祥子の口が開く。
「どうしたの?なんでそんなに慌ててるの?当然の疑問だと思うよ。私も言った通り私に怒る理由なんてないんだもん。だからね?全然怒ってるわけじゃないの。だけど1つ聞かせてほしいことがあって……」
「な、なんでしょう?」
怖がりながらもなんとか返答した海斗。祥子が話し出そうとすると家の扉が開く。
ガチャ
「あれ?海斗さんどうかしましたか?」
それは海斗と共に住んでいるエプロン姿の笹木綺亜蘭だった。
ブチッ
海斗の耳にはそんな幻想の音が聞こえてきた。その音は祥子の怒りが限界突破した音だった。
「霊刀・黄泉比良坂」
それは祥子の能力。徐々に祥子の手の中に実体を表すように1本の刀が具現化した。
「すべてを……話しなさい」
刀を突き付けられた海斗は祥子のその有無を言わさない恐怖のオーラに家の中ですべてを事細かく説明した。
/////
「───ということがこれまでの全てです」
海斗は自身が会社を辞めてからのすべてを話した。家にダンジョンを発見し・探索者となり配信をし・いつしか白仮面と呼ばれたところから、綺亜蘭との出会いと一緒に住むことになった経緯も。
そのすべてをなぜか正座しながら海斗は椅子に座っている祥子に事細かく説明した。
ちなみに綺亜蘭までもなぜか海斗の隣で正座している。
「綺亜蘭は正座しなくていいんだよ?」
「いえ。こうなったのは私のせいですから。 でも知らなかったです。海斗さんに彼女さんがいたなんて」
そうなぜか悲しそうに言う綺亜蘭。その様子を見て祥子は理解する。椅子から立ち上がり綺亜蘭を見下ろす祥子。
「綺亜蘭って言ったかしら?あなたいつから?」
その質問の意図に気づき綺亜蘭は立ち上がりながら答える。
「数日前に出会った時からです」
「そう。私は何十年も前からよ」
「ふふっ。そういうわりには発展していないようですが?」
「言うじゃない小娘が」
なんだかわからない2人のそのやり取りに海斗はなぜか寒気がした。
「??」
すると祥子が海斗が驚くとんでもないことを宣言する。
「海斗」
「は、はい?」
「わたしもここに住むことにしたから」
「ええ!?住むって!?なんでそんな話に!?」
驚きでそれまで正座だった海斗は立ち上がる。
「いやなの?この小娘は許したのに?幼馴染の私はだめだっていうの?」
「正直に言ってもいいんですよ海斗さん!嫌だったら嫌だって言いましょう!」
「あなたは黙ってなさい。小娘」
「私の名前は綺亜蘭です!おばさん!」
「はあ!?まだ23歳よ!」
「17歳女子高生の私からしたら十分おばさんですよ」
そんなこんなで逆らえなかった海斗は祥子に同居を許可せざる負えなかった。こうして白仮面に水色仮面・赤色仮面という仲間が誕生した。ここからダンジョンの攻略は加速する。
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