第15話 実力不足
ちなみに笹木綺亜蘭はアメリカ人とのハーフの女の子です。たぶん書いてなかったですよね?
大苦戦した街型ダンジョンの第五階層。次は階段を上がり第六階層への挑戦となるかと思われたが現在またしても海斗は暇をしていた。それというのも、
ーーー
・数日前・
『私は海斗さんの仲間失格です』
それは海斗たちが第五階層を攻略してリビングに戻りゆったりしていた時のこと。この言葉から始まった。
「急にどうしたの?」
「わふ?」
なにやら悔しそうな様子の綺亜蘭に理解できない様子の海斗とジョン。
「今回一緒にやってみて痛感しました。私がどれほどに足を引っ張っていたかということを」
「いやそんなことないよ。現に俺とジョンだけだったら第五階層は失敗続きだったのに綺亜蘭ちゃんが来たらその日にチャレンジが成功して次の階段が現れたんだから。これは綺亜蘭ちゃんがいたからこそだよ」
「わふう」
ジョンも海斗の発言に頷き賛同する。しかしそれでも綺亜蘭の悔しさは晴れない。
「多少の役には立ったのかもしれません。それでも強さが桁違いに違います。レベルが違いすぎます」
「それは、まあ……ついこの前に探索者になったばかりなんだったら仕方ないんじゃないかな?」
海斗は探索者として魔物を討伐して約1ヶ月程度。さらに最初から今まで最高級ダンジョン相当といわれている街型ダンジョンに挑戦知っているのでレベル以上の強さを持っている。
それにひきかえ綺亜蘭は数日前にダンジョンに入り探索者になった。レベルも二桁で海斗とはだいぶ開きがある。
「(俺が言えたことじゃないかもしれないけど、ついこの前に低級ダンジョンからはじめていきなり最高級ダンジョンに連れてこられて多少なりともやれたということ自体が十分すごいのでは?)」
そう考える海斗だったが自覚している通り本人がそれ以上のことをやっているので"誰が言ってんだ"状態だろう。
「なので!私に街型ダンジョンの第一階層から挑戦させてくれませんか!今回は多少は役に立てたかもしれませんけどもっと難関になる次の階層で完全に足手まといになりたくないんです!」
「(確かに。第五階層よりも第六階層のほうが攻略が難しくなるのは当然だよな。それに今回は失敗が可能な変な階層だったけど次も同じように失敗できるとも限らないし。案外段違いでレベルが上がるなんて可能性もあるわけだし)」
思案する海斗。その間もドキドキと海斗からの返答を待っている綺亜蘭。
「うん。わかった。 俺としても綺亜蘭ちゃんがより強くなってくれたほうが心強いし」
そう返答すると今までドキドキと心配そうに海斗を見ていた綺亜蘭の表情が晴れやかとなる。
「ありがとうございます!さっそく連絡しますね!」
「うん?連絡?」
海斗の疑問の声を無視して綺亜蘭はスマホを取り出してどこかに電話をしだした。
「あ!お母様!あのね!話したことあったよね!わたしを導いてくれたお方のはなし!」
「(親に連絡?にしても導いたってのはいくらなんでも言い過ぎだろ?)」
「うん!その海斗さんの家に今いるんだけど!」
海斗は親への連絡を自身の家に通う許可を求めてのものだと考えた。娘が定期的に男の家に上がり込むというのはさすがに説得が必要と考えたのだろうと。しかし綺亜蘭はそれ以上のことを勝手に決定していた。
「うん!海斗さんの仲間になったの! ちょっとやめてよ!お母さま!海斗さんが隣にいるんだよ!」
海斗はなにやら盛り上がってるな~程度に考えていたが次の綺亜蘭のセリフに持っていた麦茶を吹き出すことになる。
「うん!そうなの!だからね!しばらくは海斗さんの家でお世話になることになったから!」
「ブーー!?!?」
海斗は麦茶を吹き出すほどに驚きだった。
「(はあ!?なんでそうなった!?いつの間に俺の家に住むことに!?そんな許可出してないけど!?)」
突然の綺亜蘭の言葉に頭の中が大混乱。しかしその言葉の後にだんだんと綺亜蘭の表情が曇っていく。
「大丈夫!学校は海斗さんの家から行くから! なに言ってるの!?海斗さんがそんなことするわけないでしょ!?」
「(揉めてる? まあそりゃそうだよな。高校生の娘がよく知らない男の家でしばらく暮らすなんてどこの親が認めるんだって話だろう。 お願いだから拒否してくださいお父様お母様)」
その内心の願いはしかしその後の綺亜蘭の言葉によって届く前に消滅させられた。
「もう!お父様なんか大っ嫌い!」
どうやら向こうがスピーカーにして主に父親が反対をしていたらしい。だがその綺亜蘭の一言によって父親は撃沈。残る母親は娘のダンジョン挑戦を許可した人物であり心配はしつつも背中を押す役目。そして今回もまた娘の背中を押してしまう。
「うん。うんわかった。ありがとうお母様。ちょっと待ってね」
そう言いながら綺亜蘭がスマホを手に持ったままむせている海斗のほうへ。
「大丈夫ですか?海斗さん?」
「あ、ああ。大丈夫。お茶が変なところに入ったみたいで。 それで?親御さんはなんて?」
「海斗さんと話したいそうです。今からスピーカーにしますね」
そう言って綺亜蘭のスマホはスピーカー状態に。
『初めまして海斗さん。綺亜蘭の母親の笹木リリアと申します。これから娘がお世話になるということで。不束な娘ですがどうかよろしくお願いします』
「え、ええ。はい。 で、ですが本当に大丈夫なのですか?心配ではないですか?家には俺一人ですけど?もちろんなにかをするつもりなどは毛頭ありませんが!」
『ふふふっ。娘が少し会っただけのお方をここまで全幅の信頼を置いているのでしたら私はその娘の勘を信じたく思います』
「そ、そうですか」
『ああ。ご心配なく。家事は綺亜蘭が幼少のころからみっちり教えてきましたので一通りはできるはずなので。 それでは綺亜蘭。海斗さんの迷惑にならないように励むのよ』
ブツッ。
電話は切れた。そしてここに綺亜蘭が海斗の一人暮らしの家に住むことが決定した。
「よろしくお願いします!海斗さん!」
これが海斗が暇をしていた理由である。それ以上のことが起こっていたが。
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