◇第14話 水色仮面
海斗が紆余曲折を経て新たに笹木綺亜蘭を仲間と加えた翌日。綺亜蘭は学校帰りに制服のまま海斗の家に寄った。
「それじゃあ一緒にダンジョンに挑戦するということで能力の確認をしようか」
「はい!白仮面さん!」
「ははは。今は家の中だから海斗でいいよ。ちなみに俺は魔法陣で遠距離が主軸かな。そしてジョンは大きさを変えれて近接専門って感じ」
「わんわん!」
「知っています。よろしくお願いしますジョンくん」
「わおん!」
綺亜蘭がジョンを撫でるとジョンも任せとけと言いたげに胸を張る。
「私の能力は相獣です」
「パートナークリーチャー?」
「今呼びますね。 出てきて!にゃーちゃん!」
綺亜蘭がそう呼ぶと虚空から綺亜蘭の腕の中に黒猫が召喚された。
「にゃ~」
綺亜蘭の腕の中にいる黒猫のにゃーちゃんは本当の猫のように飼い主の綺亜蘭にスリスリして甘えている。
「なるほど。 つまり召喚系の能力ってことか」
「はい。にゃーちゃんはすごく速くて引っ掻く攻撃が強いんですよ。それににゃーちゃんを召喚している間の私もにゃーちゃんと同じ身体能力になってるんです!見てください!」
ダン!
そう言って綺亜蘭はその場で数mある天井に触れた。それは当然ながらただの人間ができることではない。
「どうでしょうか?私は役に立てそうですか?」
「ああ……十分に役には立ってくれそうだけど……戦うときはパンツスタイルのほうがいいかもな……」
「え?」
海斗は若干気まずそうに綺亜蘭に顔を背けてそういった。その言葉に一瞬理解できていなかった綺亜蘭もすぐに理解が追いつく。簡潔に述べるのなら先ほどの綺亜蘭の跳躍によって下着が見えてしまったということ。
それに気がついた綺亜蘭もまた顔を赤らめて制服のスカートを抑える。
「ち!?違うんです!?戦う時のための服は別でもってきているんです!?これです!?」
そう言って綺亜蘭は荷物の中から服を取り出す。それは動きやすそうなスポーティーな服装でもちろんスカートではなくパンツとなる。
というわけで綺亜蘭を部屋に案内してそこで着替えてもらうことに。
「この状況……絶対に誰にも知られるわけにはいかないな……社会的に俺が殺されそうだ……」
別の危機感が高まってきた海斗であった。
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数分後
「あの……どうですか?海斗さん?」
着替え終わった綺亜蘭は若干恥ずかしそうに海斗に感想を求めた。
「うん。かわいいよ。綺亜蘭ちゃんは可愛いからなんでも似合うんじゃないかな?」
そう海斗が褒めると綺亜蘭は嬉しそうに表情を輝かせた。
「ありがとうございます!!それじゃあ行きましょう!!海斗さん!!」
褒められて上機嫌の綺亜蘭。海斗としては急にテンションが高くなった綺亜蘭に戸惑いを見せつつダンジョンへと続く扉を開く。
「それじゃあ綺亜蘭ちゃんはこの仮面をつけてくれるかな?」
そういって海斗は自身は白い仮面をかぶり綺亜蘭には水色の仮面を渡す。
「わかりました。配信もするってことですよね?」
「そうだね。楽しみにしてる人もいるみたいだし。それで生活費を稼いでたりするしね」
というわけで配信を開始。海斗のスタイルとしてはただ撮るだけ。配信用にトークしたり企画したりなどはない。なので海斗のリスナーは突然の白仮面以外の仮面の戦士の登場に困惑しているのだがそれを海斗は知る由もない。
「それじゃあ行こうか。ちなみにここは第五階層で公園の中にいる子供たちを守り切ることができたらチャレンジ成功。次の階段が現れるって感じだと思う。でも失敗しても公園の外に出されるだけでデメリットはないから最初は様子を見ながらでいいと思う」
「バウバウ!」
「はい!頑張ります!頑張ろうね!にゃーちゃん!」
「にゃ~」
こうして海斗とジョンに加えて綺亜蘭と相獣のにゃーちゃんを加えた2人と2匹での挑戦が開始した。
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「にゃーちゃん!曼智環!」
「にゃご!」
ザシュ!!
綺亜蘭は召喚した相獣のにゃーちゃんに戦闘を任せるのではなく自身も共に戦うスタイル。この曼智環とは綺亜蘭とにゃーちゃんが同時にクロスするように相手を斬りつける協力技。
「グガアア!?」
バタン!
そうして綺亜蘭は最高級ダンジョン相当といわれている街ダンジョンの第五階層で魔物を討伐した。
「やったー!やったよにゃーちゃん!海斗さん!やっと魔物を倒せました!」
あまりの嬉しさに綺亜蘭は海斗に報告する。しかしまだチャレンジは続投中である。
「綺亜蘭ちゃん!?後ろ!?」
「え?」
綺亜蘭が振り返ると先ほど倒した魔物とは別の魔物が綺亜蘭が守っていた子供に嚙みついている。
「……にゃ~……」
まるでやれやれとでも言うようににゃーちゃんは首を振る。そんなこんなで幾度かの失敗を挟みつつも魔物を討伐することで爆発的に綺亜蘭のレベルが上がった結果。
「雷閃紫弓×100!」
「バウバウ!」
「蘇古折耳!」
「にゃー!」
公園の中心にいる子供たちを囲うように2人と2匹は無尽蔵に押し寄せる魔物たちを連続で討伐し続ける。いつまでも続きそうな予感もする終わりの見えないこのチャレンジも終わりを迎えた。
【ピコン♪チャレンジクリアです。おめでとうございます】
そのアナウンスがすると魔物も子供までも消えて残ったのは公園と第六階層に続く階段だった。
「「ハアハア……ハアハア……」」
「……バウ~……」
「……にゃ~……」
全員が満身創痍。何度も失敗しての成功も喜ぶ体力も残っていないようだ。
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◇:おお!とうとう第五階層をクリアしたぞ!
◇:仲間ができてから速かったな。
◇:で?この水色仮面はなにものなんだ?女の子ってのはわかるけど。
◇:にゃーちゃん!!にゃーちゃん!!
◇:さっそく猫派が沸いてんな。
◇:私はジョン君一筋!ジョンくーん!!
◇:なにはともあれ。白仮面に仲間が登場か。これで攻略も一気に進むかもな。
◇……白仮面……。
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蘇古折耳:お互いが半円を描くように走りながら斬りつける対多戦の技。最後には円が出来上がる。
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