第12話 錬金術?
相変わらず第五階層が攻略できないまま数日ほど経過。
「そもそもがあそこって最高級ダンジョン相当って言われてるし初心者が最初にあそこに挑むのが間違ってるんだよな〜」
「わんわん」
その日もまたジョンの散歩にて街をぶらぶらしている海斗。
「今からでも低級から順番に挑んだほうがいいかもな〜。そろそろ1000レベルを超えそうだからそうなったらまた新しい魔法が使えるようになるかも知れないし」
海斗はレベル100で新たな魔法が発現したがレベル500でも発現しなかったことで次の可能性はレベル1000なのでは?と考えていた。
「まさかのこれ以降の新たな魔法無しっていうのは嫌なんだが?」
「わおん!わんわん!」
海斗が能力の魔法陣について思考していた時のこと。突如として普段は吠えないジョンが吠え出したことで思考を中断した。
「どうしたジョン?吠えるなんて珍しいな?」
「わんわん!わんわん!」
ジョンが吠えている先を見ていると向かいから白衣を着たメガネ女性が必死に海斗たち方面へ逃げてきているのを発見した。その女性は腕にアタッシュケースを抱えており黒服の男たちに追われていた。
「なんだなんだ?」
「わおん?」
白昼堂々と人の多い場所でも関係なく追いかけている黒服たち。よほどに女性を捕らえたいなにかがあると予想できる。
「とりあえず助けたほうがいいよな?」
「わおん!」
海斗がそう呟くとジョンが"当然!"と言ったように頷く。
「ハアハア!ハアハア!」
「待ちやがれ!」
「くそっ!意外と足が速え!」
「それは我が秘密結社"ババババ"がいただく!」
そして息を切らせながら女性が海斗とすれ違う。それから海斗が動く。
ドガッ!
「ぐあっ!?」
海斗が一番先頭にいた黒服を顔面グーパンでぶっ飛ばす。もちろん手加減しているしその証拠に殴られた男は気絶すらしていない。
「秘密結社が大声で名乗るなよ」
海斗が助けたことで女性は驚きで立ち止まる。
「えっ!? ハアハア…ハアハア…」
4人ほどの黒服たちは突然の事態に少し驚くもすぐに正気を取り戻す。
「お!?お前!?邪魔をするな!?」
「我々に手を出すとタダでは済まんぞ!?」
「まさか貴様も狙っているのか!?あの装置を!?」
「あの装置?」
「わふん?」
海斗とジョンは振り返り女性が抱えているアタッシュケースを確認する。
「……とりあえずジョン。任せた」
「わおん!わんわんわんわん!」
「「「「うわあ〜!?!?!?」」」」
というわけで黒服たちは身体中にジョンの歯形がついたまま追い払われた。
「よ〜しよしよし。よくやったジョン!」
「わおん!わんわん!」
海斗は"褒めて褒めて"とやってくるジョンを撫でまわしていると女性が話しかける。
「あの。 助けていただいてありがとうございます」
「ああ、いえ。さすがにあんな状況だと助けないわけにはいかないですよ。探索者をやってたりしますし」
「探索者の方……あの!少しこちらに来て頂きますか?お願いしたい事がございまして」
「分かりました」
というわけで近くのペット可の喫茶店に入る海斗たち。
「まずは改めてお礼を。助けていただいてありがとうございます」
女性は頭を下げて海斗にお礼を述べた。
「お礼はさっき受け取りましたよ。それよりもあの黒服たちは?」
「あの黒服たちについては分かりません。しかし私が追われていた理由なら説明できます。 これです」
そう言って膝の上にあるアタッシュケースを見せる女性。
「その中になにかあるんですか?」
「色々と説明を致しますがその前に自己紹介を。私は思井金念慈博士の助手をやっております時雨メロウと申します」
「それじゃあ俺も。俺は六ノ宮海斗です。こっちはペットのジョン」
「わん!」
「海斗さんにジョンさんですね。先ほどに助けていただいてありがとうございます。ジョンさん」
メロウはジョンを撫でながらお礼を言う。それにジョンは尻尾を振って嬉しそうにする。
「ふう……それではお話しします。私が追われていた理由を」
どうやらメロウは博士からアタッシュケースを友人に届けるように頼まれたらしい。決して中を開けず誰にも渡してはならないと念を押された。
「なんだか物騒な物言いですね?」
「はい。 博士は様々な変わった奇妙な発明から世界を変える大発明まで行う方で界隈では知らない人がいないほどの有名人です。そんな人がそこまで言って助手の私に預けたものということで裏の世界ではまことしやかに語られていた"例の物"ではないかと噂が広まったのです」
「例の物?」
「……それは石を金に変えるいわゆる錬金術です」
「錬金術?それは能力ではなく?」
「はい。科学的に錬金術を成功させたのではないかというのが裏の界隈で噂されているのです」
「へえ〜。錬金術か〜」
あまり信じていない海斗。能力を使用してならあり得そうだけど科学的に石を金に変えるなんて事が本当にできるのかと首を傾げている。
「(それにアタッシュケースに入る大きさでそれが可能って。あり得んのか?)」
「つきましては海斗さんにジョンさん!ぜひ私を護衛してくれないでしょうか!」
というわけで海斗とジョンはメロウの護衛をすることになった。海斗としては魔法陣を使わないといけないほどの強敵が出てきたらどうしようとそっちの心配をしていたのだが、襲ってきたのは先ほどの黒服同様になんの能力も持たない者や魔法陣を使わなくとも勝てる程度の探索者。
「雑魚しかいねえ」
「わんわん」
「おかしいですね?価値を考えればもっと大きな組織が動いても良いはずなのですが?」
兎にも角にも目的地にやってきた。そこは住宅街にある一軒家。
「ここです。それでは行ってきます」
メロウがチャイムを鳴らし出てきたのはお爺さん。メロウが玄関まで歩いて行きアタッシュケースを渡す。するとなにやら驚き→落胆しているメロウ。
「う〜ん……なんとなく想像できるな」
「わふう」
メロウが帰ってくる。そしてアタッシュケース中身はといえば、
「今は手に入らない幻のエロ本でした」
「……エロ本をアタッシュケースに入れるなよ……」
「わんわん」
というわけでその日の海斗の珍道中は終わった。
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-とある博士の研究室-
「メロウや!これを! おっと使いに出しておったのを忘れておったわ。 ふむ。なら今のうちか」
そうしてとある博士が書棚をガサゴソといじると書棚が1人でに動き出しその奥に通路が存在する。
「さすがにメロウであろうともこれを見せるわけには行かんな」
そうしてとある博士は通路の奥へと脚を進めていく。果たしてこの博士は何者か?いったい何をしに行ったのか?
思井金念慈は72歳。
時雨メロウは34歳。
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