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仲直りする?

そのまま二階にある教室を出て、四人で一階にある食堂に向かう。


そして、行列が出来ているので大人しく並ぶ。


その光景は、前の世界と遜色ない感じだ。


流石に食券機とかはないけどね。


「わぁ……人がたくさんです」


「あぁ〜驚くよね」


そもそも、人族は数が多い。

大きな群れを作らない獣人族にとっては、それだけで驚きに値する。


「こうやって並んで食事をもらうんですね。確か、お金?を払うとか聞いたことあります」


「……そうか、お金がないんだったね」


「はい、人族だけだって聞いてます」


獣人族に限らず、人族以外は貨幣制度がない。

物々交換や等価交換によって成り立ってるらしい。

それもあり、文化の違いは大きい。

そんな話をしていると、俺達に気づいた周りの人達が反応する。


「お、おい、セレナ様にトール様がいるぜ?」


「それにアレク様も……あと、あれって獣人よね?」


「確か、留学生がくるって聞いたような……」


「というか、婚約解消をしたって話では……?」


やれやれ、どこの世界も噂話が好きですな。

そんな中、俺たちの前に並んでいた一年生の女子が、恐る恐る声をかけてくる。

ちなみに胸につけてる赤のバッチが三年、二年は青、一年は緑となっている。


「あ、あの、セレナ様! お先にどうぞ!」


「平気よ、貴女の方が先にいたんだから」


「で、でも、王族の方ですし……」


「ここでは、王族も貴族も種族も関係ないわ。それを建前だと思ってる人もいるけど、私自身はそうは思ってないから。ともかく、そこまで気を遣わなくて良いわよ。こっちの方が疲れちゃうし」


「は、はいっ!」


そう言い、元の場所に戻っていく。

前までは思わなかったけど……セレナのこういうところは、割と素敵だなと思う。

口調や態度こそアレな部分はあるけど、言ってることは好ましい。

この国において王族の権力は大きい。

その気になれば、生徒一人くらいどうとでもなるし。


「セレナ様は、優しいですね」


「……ふぇ?」


「ですが、もう少し言い方を気をつけたら良いかなと。もっと、笑いかけるようにとか」


「な、何を生意気なっ! というか、いい加減他人行儀な口調はやめて!」


顔を真っ赤にして、怒りの形相で俺の背中を叩いてくる。

前言撤回! とんでもない暴力女だっ!


「イテッ!? 背中を叩くなよ!」


「あっ……ア、アンタが変なこと言うからじゃない!」


「変なこと言ってねえし!」


「おっ、前みたいな口調に戻ったな? いやいや、そっちの方が楽っすね」


「な、仲良しさんなんですね!」


……しまったァァァァ! つい、前の時の癖が!

婚約者でもあり、幼馴染でもある。

記憶を取り戻す前は、こんなやり取りが日常茶飯事だったなぁ。

ぐぬぬ……こうなるから、なるべく関わりたくなかったんだ。


「……失礼しました。以後、気をつけますね」


「だ、だからやめなさいって……そんなに嫌?」


そう言い、少し悲しそうにする。

……ァァァ! もう! 俺はあんたのためにいってんのに!


「別に嫌とかではないですよ。ただ、婚約解消をしたのに仲良くしてるのはアレかと。新しい婚約者とかにも誤解されますし」


「べ、別に婚約解消したって話すくらい良いじゃない。それに、新しい婚約者なんていないし……」


「あっ、そうなんですね」


「そもそも、そんなに節操なしではダメだわ。最低でも、一年や二年は空けないとね……」


「あぁー、それは……」


厳密にはルールはないが、婚約解消をしたら期間を空けるのが当然か。

つまり、これは……俺のせいでもあるってことだ。

セレナの暴言がしんどかったこともあったが……。

元はと言えば、俺がダラダラし過ぎていたから婚約解消されたわけだし。

そのことについて、セレナには責任がない……とは言えないが、そこまで悪くもないな。


「つまり、アンタの責任よ! そ、それに! 友達なら良いじゃない!」


「わかり……わかったよ、セレナ……ったく、これで良いか?」


「っ〜!! うんっ!」


すると、記憶を取り戻して初めて……満面の笑顔を見せるのだった。


不覚にも、可愛いと思ってしまったことは内緒である。


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