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エルフのメイド

 ……よし、とりあえず出るか。


 記憶は混濁してるし考えはまとまってないが、これから考えれば良い。


 それに、上手い言い訳も考えたし。


「ふぅ、さて……」


「御主人様、お疲れです。それでは、身体をお拭きしますね」


「うんうん、よろし……へっ? な、何してんの!?」


 シャワーを出たら、カエラがタオルを持って待っていた。

 当然、俺は生まれたての姿である。

 そして、ムスコは丸見え。

 こちとら、十六歳なので普通に大人です。


「何って、いつも通りに拭きに来ただけですが……?」


「……今日からは自分で拭くから平気だよ」


 そ、そうだったァァァァ! 俺って公爵家嫡男だった!

 お手伝いさんはもちろんのこと、洋服を着せられたり……このように風呂上がりに拭かれたりする。

 いつも俺は、カエラに拭いてもらっていた。


「……えっ?」


「いや、そんなこの世の終わりみたいな顔しないでよ」


 というか、タオルを落としてるし。

 どんだけショックだったんだか。

 ひとまず、そのタオルを拾い腰に巻く……これで一安心だ。


「わ、私の楽しみが……ヨヨヨ」


「ヨヨヨじゃないよ。というか、早く出てってくれると助かるんだけど?」


「……本当にどうしたんですか? 頭でも打ちましたか? いや、やっぱり婚約破棄されたことが……」


 そうだ、それもあった……考えるのは後にしようっと。


「別に大したことじゃないよ。俺も成人したし、色々と考えないと思ってね」


 これが言い訳の一つだ。

 成人を機に、自分のことは自分でやろうとする……別に変じゃないよな?

 というか、こんな美少女に身体を拭かれるのは勘弁である。

 それが当然と思っていた前の俺ならいざ知らず、今は前世の記憶があるわけだし。


「……ふむふむ、これは私の予想通りということでしょうか?」


「なに? どういうこと?」


「いえいえ、御主人様はお気になさらずに。では、残念ですが私は下がるとします」


「待て待て! 俺の履いてたパンツを握るな!」


「えっ? これもですか? これを嗅ぐのが、私の朝の」


「か・え・せ。そして、嗅ぐんじゃない」


「むぅ……仕方ありませんね」


 そう言い、パンツを置いて部屋から出て行く。


「いやいや……思い出した今、美少女にパンツを洗ってもらうとか勘弁だ……まあ、ご褒美という人もいるかもだけど」


 モデル体型の、銀髪美少女エルフがメイドか……。

 確かエルフの髪は本来は金髪だけど、あの子は銀髪だ。

 銀髪は不吉の象徴らしく、排他的な種族であるエルフから追放されたとか。

 その際に親父が身元を引き受け、うちにやってきたんだよな。


「それを、俺が世話をしてて……今では、俺が世話されていると」


 最初はおどおどしてたけど、今ではあの有様である。


 俺にいたずらすることや、からかうことを生きがいにしてる節がある。


 そうだ、あの子はお調子者のカエラだ。


 俺は前の自分の記憶と、今の記憶を擦りあわせていくのだった。


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