20話 夢と現実
梨沙にメッセージを送った。半年前のメッセージがまだ既読にすらならないのに、そんなことも気にせず送った。そうでもしていないと、俺の気持ちが収まりそうにもなかった。片思いとストーカーは紙一重だとよく言われるが、その気持ちが今になって少しわかる気がした。
「俊平!ご飯できたわよ!」
「あー、はいはい」
リビングから飛んできた母親の声を聞いて、俺は携帯をポケットに突っ込み、そのままダイニングへと向かった。テーブルには既にある程度晩ご飯が配膳されていて、俺はいつもの席にいつも通り座った。俺に少し遅れて、弟も席についた。
「はい、これ俊平の分」
父親が味噌汁を両手に抱えて持ってきた。片方を俺が受け取った。
「じゃあ、いただきます」
支度を終え、最後に席についた母親がそう言う。
「いただきまーす」
俺は焼き魚に箸をつけた。骨から上手く身を剥がし、白米と一緒に口に運んだ。何の魚なのかはわかるはずもないが、とりあえず美味かった。
「俊平。あんた夏休みいつまでなの?」
「あー、えっと10月の頭から。あと1ヶ月ちょい」
「ふーん。大学の夏休みってそんなに長いのね」
「まあ、うん」
大学を中退したことは、両親には伏せていた。まさかバンドをやるために大学を辞めたと言ったら、彼らが何を言い出すかわからない。どうせ打ち明けるのなら、少しでも結果を出して認めてもらってからだ。弟と相談して、それまではこのまま黙っていることにした。
「就活はどうなんだ?3年の夏休みだったら、インターンとかあるだろ」
「まあ、考えてはいる」
「どういう会社がいいんだ?」
今度は父親が、俺に質問攻めを仕掛けてくる。俺はご飯を口に運ぶ十分な時間すら与えられなかった。
「いや、今のところはなんでも」
「そんなことで就職できるのか?就活で今後の人生の全てが変わるんだぞ」
「……はい」
今の俺には、そう答える他ない。喉の奥に飲み込んだ言葉を決して悟られないよう、俺は努力せざるを得なかった。俺の事情を知る弟は、何も言わずにただ凄い勢いで米を掻き込んでいた。
「あのね、俊平。もうお父さんも定年が近いんだから。俊平が働いて支えなきゃダメなんだからね」
「定年って65とかでしょ?まだまだじゃん」
「お父さんの会社は55なの」
「へー、そうなんだ」
肩身が狭い思いで押し潰されそうだった。お金や家族のことを思えば思うほど、自分の選んだ道がこれで良かったのか、自分を信じれなくなってくるのだ。早く売れたい、俺は初めてそんな焦燥感に駆られた。それが俺にとっては何よりのストレスで、歌が好きだとか、梨沙が好きだとか、そんな動機でバンドを始めた自分が少しずつ嫌いになっていく気がした。
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