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旗揚げ! 狂茶隊

 当面の懸念が払拭されたとの情報は瞬く間に全冒険者たちに広まった。おかげで冒険者の宿は大盛況である。

 ゲームであったころなら「初心者ですらやないNPCのための依頼」とまで言われていた超不人気仕事『薬草の採集』が、その安全性から妙に人気が上がっている。


「やっぱり、蘇るからって死ぬのはイヤか」

「でしょうねぇ。私たちも何か依頼を受ける?」

「んじゃアレ行く?」

「アレこそ初心者救済措置なんじゃ」

「ウォーミングアップ代わりに危険度・低からやってこう」


 んで、三人組がやって来たのは東の竹やぶである。


「なんで中世ヨーロッパ的世界に竹やぶがあるんだよ!」


 スーちゃんはすっかりツッコミ係である。


「解ってるんでしょ?木の棒とか棍棒とかの超初心者用武器て、しっかり加工しなきゃいけない」

「武器になるくらいに硬い物なら、加工しにくい。超初心者用のわりには高くつく」

「その点、竹なら切っただけで武器として使用できる」

「竹槍でモンスターと戦うって…」

「籠とかに加工してもよし、最悪、竹竿にして売ったらいいし。無一文からでもなんとかできるように運営側が用意したある種の救済措置だ」

「♪竹屋~竿竹っ!10フィートの竿竹!…アホやん」

「この時期、タケノコも美味しいわよね」


 プレイヤーの99%が日本人だからできる世界観であった。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「やっぱり、現実世界より体力はあるのかな。竹を切って運ぶだけじゃ全然疲れてない」

「それはスーちゃんだけでしょ。こっちは体力も筋力も背も全然少なくなってんだから」


 依頼を終え、冒険者の宿に報告に戻って来た。

 シンディーとスピカは疲労困憊である。これは予想通りの検証結果ではある。

 金のためならもっと魔法使い的な仕事か女の子らしい仕事を。自分の体と世界を知るためには、もっと様々な事をやってみるしかない。


「あー汗流したい」

「シャワールームか共同浴場にでも行く?」

「でも、男湯なんか入りたくないんだけど」

「そっか。でもスーちゃん、女湯に入れないしね」

「ここには個室は無かよ」

「うーむ」

「なーにー。愛しい恋人が全裸でいる所に全裸の男に取り囲まれていいの?」

「………」

「…一瞬、変なDVDの事考えたやろ!」


 レンタルDVD店の奥、数字を書いた暖簾の向こうの話である。


「俺も風呂入るか…俺はいいけど、周りが騒ぎになるな」


 男の娘てのも、こういう時は面倒だ。


「スピちゃんはいいよね。女なんだから」

「いやいやぁ。中の人がオッちゃんてのバレてそうだからねー、ヒンシュクどころじゃない大炎上になりそう」

「そっか、三人が三人とも風呂に入れないとは、トホホ」

「「「………」」」

「三人でどっかシェアハウスする?

 冒険者の宿みたいな安宿は共同浴場しかないし、個室に風呂がついてる高級ホテルはバカ高いし」

「本当に良かかね?二人はリアル世界でも恋人たい?そんななかでお邪魔しても」

「いや、まぁ。二人とも気にしない方だし、賑やかなのが好きだし、中の人はスーちゃんでも、あんまりヒゲ面大男とはキスとかしたくないし」

「私はしたいけど」


 ステッドの中の人は腐女子気味でもあった。


「よっ。さっきはどうも」


 後の世にいう『□か〇か問題』で一躍有名クランとなった『ジャスターズ・シンジケート』の総帥・道化師(ジャスター)ジョーだ。色々な事を差配し終えて冒険者の宿に来ていた。


「どうも乙。すっかり有名人だね」

「いやー照れるね。たまたまだけどね。いつかは誰かが発見してただろう。でもまぁ、名声はしっかり利用させてもらうとするよ。

 それでさ、どうする三人、本当にうちの傘下(クラン)に入るなら歓迎するけど

 名前は『犯罪結社(シンジケート)』まんまだけど、そっちは廃止に向けて縮小していくし、新しい事業も考えてる」

「「「何やるの?」」」

「まずは普通に冒険者クランばい。それから引退したヤクザの定番○○〇か×××。両方ヤクザか元ヤクザしかおらんばい」

「○○〇業界と×××業界に謝れ!」


 炎上しそうなんでピー音入れときましたから、私こう見えてちゃんと人見てから毒吐きますんで。


「いや、さっきまで竹やぶで話し合ってたんだけど。俺たちのテーマは『世界の謎を解き明かしてリアル世界に帰還する』だからね。小回りの利く三人パーティーでやってくよ。大規模クランとじゃ出来る事がそれぞれ違うと思うからね」

「そうか。じゃお互い頑張ろうな。パーティー名は付けたのか?教えてくれよ」

「まだだけど、スーちゃんに任せる。一番センスありそうだし、一番の物知りだし」

「それなら…引用して、ちょっと変えて …『狂茶(マッド・ティー・)(パーティー)』」

「うん。流石はスーちゃん。カッコ良か上にそこはかとなく可笑しか」

「なるほど。三人にピッタリの名前だよ」

「じゃ、早速ギルドに登録してくるね。…リーダーはシンディー・マーチンで」

「お、おい!ちょっと待て」


 冒険者の宿は、新たな世界に向けて活気づいていた。


                                       第一部 完

すでにお気づきの方もいらっしゃいますが、この話全然冒険していませんw

でもまぁ、普通の人なんてそうそう命を懸けた冒険に出るはずがないもんです;

それに第一話・一行目から『□か〇か問題』解決まで二~三時間程度しかたってません。

今回の噺も三時間かせいぜい半日ですw


切りがいいところなので、これにて第一部の完結とさせていただきます

少しお休みをいただき、気が向いたら近いうちに再開したいと思います


では、短い間でしたがありがとうございました。

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