そして勇者は帰還する
「んで?何でこんな所で大集合してんの?}
ここは“始まりの街”アムレーハルクスの教会。ゲーム内では復活ポイントであった所だ。
そこにジャスター・ジョー御一行百人近く + シンディーたち三人が大集合していた。全員が祭壇に注目していた。シンディーなどはかぶりつきで見ている
ザッ!!
後ろにいるステッドのツッコミに、一瞬全員の注目が集る。『何を言ってんだこの人?』といった顔をしてまた向き直る。
「そりゃスーちゃん。□グかSA〇かの確認する大チャンスやん。でなきゃ『相手に気づかれずに尾行する』必要ないやろ?普通に助けに行けばええやん」
「誰かが自主的に生贄になってくれて万々歳。自身納得づくか、でなきゃ気づいてないまま行ってくれるのが望ましい」
「自分で死んでみるのは真っ平ゴメンだけど、誰かを殺してみる訳にもいかないからね」
「そうそう俺たち、そこまで外道じゃないから」
「…誰かが死ぬのを今か今かって待ってるのも十分外道だと思うんやけど」
「出来ましたー!『□か〇か対策本部』表に貼ってきます」
「毛筆なんかどこにあったんや!」
スーちゃん、すっかりツッコミ係だ。
「ゲーム内ならいざ知らず、ゲームが現実になったのに変わらずにヒャッハーしたがる奴らなんて、正直面倒見切れないね」
尤もな話だ。
「こちら透明ヴァンパイア。彼ら五人、第一階層でゴブリン数匹に取り囲まれていますが、これくらい楽勝でしょう」
「了解。引き続き尾行せよ。くれぐれも気付かれなように」
「了解」
通信の魔道具を有効活用している。
「お~っとぉ!今度はオーガーだ!魔法使いが先制攻撃だぁ!」
「いや、実況はいいから。静かにしろ!」
「えらく楽しそうやん」
◇◇◇◇◇
「最後の戦士がやられたぁ!ついに、ついに全滅だぁ!!」
「「「「おっしゃ!」」」
「おっしゃ、じゃない!!ガッツポーズやめい」
感覚が麻痺してきている。
「こちら透明ヴァンパイア。死亡確認…死体は…光の粒子になって消えました。全滅してから一定時間で光になるようです。一人二人死んだ時はそうなりません。教会を確認してください」
「こちら教会。解った、後でレポートにして提出して。今日は帰っていいよ。お疲れ様」
「お!祭壇が輝きだしました!
光の粒子が人の形に集まり、やがて完全な人間になり、そして目を開ける。
「はいはいごめんよ、ちょっと道開けて」
額帯鏡をかぶり聴診器を首にかけたジャスター・ジョーが前に進み出る。キャラクターの外見からは想像つかないが、ジョーの中の人は医大生である。
「はい、この指見て。目で追ってみて」
目の前で指を左右にゆっくり動かしてみる。
「口開けて。舌だして。何か体調不良はない?頭痛いとか、気分が悪いとか…よし次」
◇◇◇◇◇
「みんな、心配したぞ。無事でよかった、ほら、こうしてクランのも皆も迎えに来てくれた」
「親分っグス」
蘇ったパーティーは皆、涙ぐみ親分の言葉に感動していた。
「あいつら、絶対騙されてるやんね?」
「迎えに来たんなら、ダンジョンやよね。教会に迎えに来たって…」
「あいつら、中学生?小学生かも」
「真相教えたる?」
「あんなにジョーに心酔してるねん。教えたこっちを逆恨みされそう」
「そんな義理もないし」
「将来も色々騙されそうたいね」
感動的に盛り上がるジョーのクランを尻目に、ヒソヒソ話を続けるシンディーたち三人であった。
「よし、この情報は全世界に共有しよう。もちろん君たち名前を込みで。君たち名前は?」
「僕たちにパーティーは『ファースト・ペンギン』です」
「そうか、よし!おーい皆。勇者たちの名前は『ファースト・ペンギン』だ」
「「「「おーー!!」」」」
「あら、□って確定したってみんなにバラシていいの?」
「どうせ、早晩広まるだろ。情報を秘匿して恨まれるよりは積極的に広めよう。あいつらの銅像でもたてて、隣に看板を設置してやるさ」
こうして、異世界転移最初の謎 『死んでも蘇るか・死んだらそれまでか』問題は解決した。
五人の勇敢な若者の献身(文字通りの)によって。
「…にしても『ファースト・ペンギン』って皮肉な名前やなぁ」
「ついでに店の名前も『アイスバーグ・ラウンジ』に変えてやるか。ペンギンを記念して」
「それは単なる趣味やろ」
スーちゃんはすっかりツッコミ係だ。