全員で会議をする さらにステッドはネットゲームの深淵について熱弁する
「じゃあ、最後の質問でーす。現実世界に帰りたい人、手を挙げて」
「えーと1,2,3,~集計は後程。ざっと見てほぼ半々ですか」
結局、冒険者の宿のロビー兼食堂では全員を巻き込んでの大会議となった。冒険者ギルドのマスター(NPC)に黒板を借り受け、なぜかシンディーが司会者になって。
質問や意見のあるものは一人づつ前に出てプレゼンし、時にはみんなで挙手によるアンケートを試み、質疑応答を繰り返していく。
今回は解らない事だらけのため、議論が白熱することもなく、大規模情報交換会としては成功だった。
結果判ったことは
この世界には何故転移してきた/させられてきたか?誰も知らない分からない。5W1H全てが不明。上限と下限のプレイヤーは居ない。みんなキャラクター的にはLVカンストまでいっていても、プレイヤー的には微妙な実力の人ばかり。特に大きな功績も無し。(中くらいならソコソコいる)おそらく平均値の前後数十パーセントづつの中からランダムで選ばれた。全員に共通する要素はそれ以上は不明。各自のフレンドリストは半分から三分の一になっている。おそらくはプレイヤー全員が連れてこられた訳ではないから。ステータスボード上は技能も呪文も現実世界のFFFFのまま(要検証)。死んだら蘇るの□グ・ホラ型か、死んだら死ぬ(←ん?)S△〇型かは不明(要検証…て訳にもいかない)
改めてシンディー、スピカ、ステッドはメモを見ながら話し合う。
「まぁ予想の範囲内やんねぇ?」
「これからどうすっと…するの?」
「やっぱコネ作りからやん?『ネットゲームは情報が全て。そのためにはコネ作り』ってSFサークルのOBが熱弁してたわ」
ステッドの説明はこうだ。
「来る日も来る日も手紙を書いて、切手代とコピー代のためにバイトして」
「てっ手紙?切手?」
「コンビニのコピー機の紙。空にするのも一度や二度じゃなくて」
「家にプリンターとか複合機とかないの?」
「ワープロもそれほど一般的じゃなくて」
「ワープロって何?」
「だから『手書きじゃないのは失礼』って風潮のせいでいちいち冒頭で謝らなきゃならないし」
「手書き?メールで??」
「西に即売会があれば出かけ。東に集会があらば足を運び」
「いちいち行くの?」
「リストを作り、名簿を作り」
「SNSは?まとめサイトは?」
「下手に中心人物になれば、暇もプライバシーも無くなり」
「え?そんなに?」
「なかにはそのまんま運営側に成り上がった者も」
「だから、何の話しとんのや(しとっとたい)?」
「だから、『ネットゲームは情報が命!情報のためには交流が命!!』って先輩に教えられてきたの」
「ワシらの思っとるネットゲームと、スーちゃんの言うネットゲームって全然別物やん?」
ともかく、交流の大切さが解ったところで
「誰とコネをつけるかって話なら…こう言う話って、キャラのスキルより中の人の技能がモノを言うたりすっとたい?」
「そうやん。腕力は分からんから、頭の良さそうなんとか面倒見の良さそうなとかなぁ」
「あんまり広く知られてない方が良かかね?」
「有名プレイヤーやん来てへんやん?」
「二人とも女の子忘れてるんじゃないか?」
「「………」」
「スーちゃんより頭の良い人そうそういないわよね、マジで」
「そうね。お世辞抜きで巨大姉兄さまとお姉兄さまくらい頭いい人そうはいないはね」
「スピちゃんだって、すごい物知りだし」
「いやいやいや…」
「まぁまぁまぁ…」
「それにお姉兄さまって強いんでしょ?}
「いやー全国制覇ってほどでもなかったけどね。スピちゃんだって、あの反射神経は只者じゃないよ。本当はかなりの実力者なんじゃ?」
「まぁ空手も柔道も両方黒帯ですけどね(照れ)
「いやいやいや…」
「まぁまぁまぁ…」
「微妙に話が進んでないのも女の子同士の会話っぽいか」
理系女は、女性にしては珍しくとっとと話を進めたいタイプの人間だった。
「あ!!一人おるやん!!あいつやあいつ!!!」
「「誰?誰?誰?」」
「ジョーや。ジャスター・ジョー!ほら見て異世界に来とる。このロビーにおらんだから、きっといつもの店や」
「ジョーかぁ」
「ジョーだよ」
「ジョーかぁ」
「ジョーって誰?」
シンディーとスピカとは共通のフレンドであったが、ステッドは知らなかった。
そして二人の含みのある言い方が途轍もなく気になっていた。
ネットゲームはU演体の登録商標です…………だったよね?