ミッシング・イン・アクション
「どあー!もう戦争終わっちゃったよ。どうしよう。どうしてこうなった?」
奇妙な杖を持ったエルフは、森の片隅で困り果てていた。
風の精霊の力で遠くから盗み聞ぎをしながら。
(「これにシンディーとFP五人。一人は街に置いてきた。で四人……一人足りません」)
「どあー!なんでこんな時に限って俺がいないってバレるんだろう?」
彼は妙に印象に残らないタイプで、リアル世界でも異世界でも、何度も食堂のオーダーを忘れられたり、受付の順番を忘れられたりしているのに。
「どあー!早く帰って何とか誤魔化せないか考えよう」
〇●〇●〇●〇●
「どうした?我らが友よ?」
奇妙な杖のエルフが“エライ物”の監視のために残した風の精霊に話を聞こうと語り掛ける。
そこにあった物は人の腰くらいの高さの不気味な石柱、いや石の邪神像であった。そこに触れたであろう冒険者が倒れ、それを見つけ助けようとした者も数珠繋ぎで倒れていた。
命の気配は消えていないため生きてはいるのだろうが、なんとも気色悪い。
迂闊に触れる事もできず、何かの毒なのか呪いなのか専門家に見て欲しかったのだが、如何せん先に戦争が始まってしまった。
「なに?命と魔力が少しずつ吸い取られたと?そして何処かに送られたと?
つまりHPとMPが死なない程度に吸われて何処かに送られるためにギリギリで生かされているんだね?これはそのためのシステムなのか?
えーとスマホがあれば写真撮って送ればいいんだけど。通信機も魔道具もないし…」
思わずジリジリと後じさってしまう。
「おい?」
「どあーーー!!」
背後から肩を叩かれ、思わず大声を出してしまった。
ドラスネーに頼まれて探しに来た冒険者のパーティーだった。
「君、ゴブリン調査のメンバーだよね?急に居なくなってどうしたの?」
「どあー!縛り首ですか?嫌だー!教会で蘇るんだろうけど、痛そうだし苦しそうだし、嫌だー!!」
「何を言ってんだ?そんな事する訳ないよ」
「どあー!じゃあ銃殺刑?」
「あのね…。戦闘中に寝落ちなんてヤツもたまにいるの。そりゃあ文句も言うしヒンシュクものだけど、ガチガチの軍規でやってたら誰も遊んでくれなくなるから、その辺はいいの」
「本当に?」
「まぁ、戦闘中に寝落ちする奴も急に居なくなる奴も、そのうち遊んでくれなくなるだろうけど」
「どわー!}
「にしても、あれは何だ?おーい、しっかりしろ」
「どわー!ダメ触っちゃ!」
バッタリ
パーティー六人のうち、助けに向かった三人が気絶してしまった。
「!?!?なに?なんだコレ!?」
「どあー!僕にもなにがなんだか」
「俺が誰か呼んでくるから、みんな見張っててくれ」




