ステッドとスピカと年長組 2
カシャカシャカシャカシャ
あらかじめ【使い魔化】したフウァールウインド・ハリスホークを飛ばす。【感覚共有】を【感覚強化】して観察する。
ここまではゲーム的技能で、後は中の人の技能だ。
カウンターをカシャカシャやりながら数を数える。中の人は日本野鳥の会の人だ。双眼鏡は無くてもカウンターのある世界…ま、いいや。
「紅組89人。緑組756匹」
「紅白歌合戦のエンディングやん」
「初めてこれ見たほとんどの人、そう言います」
ドヤ顔をしながら、メイジの男は言う。
「ご苦労さん。メイジくん」
「俺の事は動物使いと呼んでください」
分類上はメイジなんだけどね。
一方、こっちの魔法使いたちは…
「【取り換えっ子】【取り換えっ子】【取り換えっ子】」
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【取り換えっ子】
ごく近距離の目視できる人と人、または物と物、または人と物の場所を入れ替える。
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当初は誘拐したり、誘拐された人質を取り戻したりする魔法であったが、いつしか忍者の移し身の術代わりに使われ、最近では麻袋を用意して、土嚢と塹壕を同時に作れる裏ワザとして使用されるのが流行りだ。
「なぁ。これって発想が第一次大戦やなかと?」
「それなら戦車でも発明すれば勝てる?」
「さっきの動物使いに、アース・ドラゴンかベヘイモスかアイアン・ゴーレムあたりの戦車代わり持ってないか聞いてみるちゃ」
「いや、向こうは普通になんもワラワラ来るだけだなも」
「これくらいにしてMP回復せんと、本番でバテると」
「親父ギャグやん」
戦闘前なのに呑気なものである。
「あのー。ところで、私の言う事を」
奇妙な棒を持ったエルフは、まだいた。




