あんまり無茶するなっての
「ごめん、一旦街に帰るわ。スーちゃん、スピちゃん後よろしく。【瞬間帰省】」
シンディーはそういうと、お騒がせ冒険者パーティー、ファースト・ペンギン(以下、FP)の五人を連れてさっさと街に帰ってしまった。
「すいませーん。残りのお弁当が少し遅れます。ごめんなさーい」
こういう時は幼気な美少女スピカちゃんの出番である。これで後一時間くらいは暴動は起きないだろう。
まぁ、中の人が一般的日本人な冒険者たちが、そうそう暴れだすはずもないけどね………ないよね?
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街に戻って最初に連れて来たのは、裏町の『ジャスターズ・バー』だ。FPたちの所属するクランの本拠地である。
FP達は全員顔を青くしていた。
ここは尊敬し崇拝する親分の居城だ。
「親に言いつける」「学校に言いつける」、ゲーム世界においては「クラン・マスターに言いつける」中高生にとってはリアルかつ最大限の恐怖だろう。
シンディーは相変わらずズカズカと無遠慮に店に入っていく。しかたなくFPの五人は後に続く。
「ハーイ、ジョー。昼時にゴメンね。ちょっと頼みがあるの」
「ランチ食ってるだけだ、構わんよ。で、なんだ?」
「彼ら。あんたの所のファースト・ペンギンよ。ソーサラーがゴブリン恐怖症をになったみたいなの。カウンセリングしてあげて」
「そう言うの苦手なんだけどな。OKやってみよう」
公共心に乏しいジョーも流石に身内だと邪見にはできないようだ。
「それから、みんなに過剰な火力に頼りすぎないよう言っといて。なんか自然破壊が酷くなってるみたいだから。
はい、次行くよ」
ソーサラーだけを残して、さっさと出ていく。
「解った…って、ランチぐらい食ってけよかばい」
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次に来たのは『冒険者の宿』だ。
「ハーイ。ごめんね。厨房に用事。うん、おねがい」
「あれ、どうした?何か問題か?」
ギルマスがやってきた。
「うん、お弁当がゴブリンにやられてね。こんだけ追加お願い」
「え?」
「嘘ではないでしょ」
こっそりウィンクする。
「いいけど、追加料金もらうぞ」
「OK、それは彼らが出すから」
「ちょっと、シンディーさん…いえ、何でもないです」
シンディーは只微笑んでリーダーに近づいているだけだ。
メンバーの紅一点、修道女が慌てたように割って入る。
「ちょっと、なんですか。あなた、さっきから。近づきすぎでしょ」
「いやまぁ。話を円滑に進めるためには女子力でもなんでも使って」
「あなたのは、女子力ではなくて色仕掛け力です。フェミさんにバレたら炎上しますよ」
「うまいこと言う」
かなりご機嫌斜めだ。
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「それになんですか?言いつけるでも、怒るでもなく。恩を売るつもり?なら無駄ですよ!」
「面倒なだけよ」
「急がないと、調査の人たち腹減らしてるぞ」
「ペガサス使うわ。その料金も彼らにつけといて」
「ちょっと、シンディーさん…もぅいいです」
そして、森に戻ってみると…とんでもない事になっていた。




