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助けてくれるからって

 ここは“始まりの街(アムレーハルクス)”の西にある山、単に西の山とも呼ばれる、ダンジョンとゴブリン・コボルド・オークなど、低級妖魔の多発地帯だ。


「こっちは只の洞窟です」

「こっちのはダンジョン化が始まってる」

「こっちは、昔、ゴブリンが住んでたっぽい。今は何もなさそう」


 狂茶隊を中心としたラジオ体操友の会(略してラジ友)の有志にドラスネー傘下(クラン)とナガト傘下(クラン)とパメラお姐さまで結成(期間限定)された『ゴブリン恐怖症相談室』は、魔道具で連絡を取り合いながら、ゴブリンの生態調査をしていた。


「しかし、ゴブリンが怖くて冒険者なんかやってけるのかなも?」

「でも、霊長類最強の吉田沙保里もゴブリンが嫌いって言うとったちゃ」

「オバケが怖いとは言ってたけど、ゴブリンとは聞いてない。

 ともかく、強さと怖さは関係ないって事ね」


 そこに、魔道具により連絡が入る。


「皆さーん。お昼休みにしましょう。樫の木の野営場の本部に集まってください。冒険者の宿提供のお弁当がありますよー」


 大きな樫の木が目印になる、森の奥にしては開けた広場、冒険者や旅の商人が野営地として重宝してりるそこに、リアル世界では運動会で使うような大きなテントが設営されていた。

 そこの長机には大量のお弁当がおかれていた。

 配っているのは、もちろん、美女と美少女の魔法使いコンビ・シンディーとスピカだ。

 今回の仕事は、冒険者ギルド依頼なので、多少安いが危険度も少なめで、こうして弁当も出る。


「はい、どうぞ。お茶とお弁当。受け取ったらここに名前書いといてね」

「冒険者ギルドからお弁当せしめるとか。シンディーって、何気にそういうの得意やんね。」

「営業職長いからね」


 三々五々、集まってくる冒険者たち。チャンと行列に並んで弁当を受け取ると、それぞれに集まって食べ始める。


「あれだなも。まるで町内会の草刈りみたいだなも」

「あぁ。夏前に公園とか土手とかでようやっとるちゃ」

「町内会は金ないから、お茶しか出やんやん」

「お弁当あると、ピクニックみたいね」


ウゥウウウウウーーーーーーー


 呑気に話していると、遠くからサイレンの音が聞こえる。


「懐かしいなも。ワシの子供の頃、近くにメリヤス工場があってな。朝昼夕方とよう鳴っとた」

「うちは田舎やから、今でも山の方で昼と夕方になっとるよ」

「うちもちゃ」

「上流のダムから放水する時も、サイレン鳴らすのよね」

「下流で遊んどりやーす人とか、急に増水したら危ないなも」

「ダイナマイトとか爆発させる前にも、サイレン鳴らすんだって

 シンディーの実家でね。近くの山でトンネル工事してる時によく聞いてたんだって」

「はぁ。あいつも色々レアな体験しとるちゃ」


 ところで、こんな所で人にお昼知らせるって誰?そういう設備のない世界では、わざわざ魔法を使ってやるんだよね。

 て事は、危険を知らせるため?何?

 …と皆が漠然と考えていたら、何かから慌てて逃げる数匹のゴブリンが目の前を通り過ぎていった。


「「「「………」」」」


「「「「!!!!!!」」」」


「「「「「【火の防(プロテクション・)御陣(フロム・ファイアー)】 【(ファイアー)耐性(レジスト)】 えーと、取り合えず【身体強化(ストレングス)】 よく分からんから忍者の『逃げ足』 『超跳躍(ハイジャンプ)』」」」」」」


 こんどは冒険者たちが慌てだす。サイレンが鳴りやんで数秒後…


「特大【火炎地獄(インフェルノ)】!!」


 文字通りの火炎の地獄と化していた。数秒後にはウソのように鎮まる。


「「「「「あービックリした みんな、無事か? けが人はこっちに」」」」


 そしてシンディーは


「ギャー――!お弁当がぁぁぁ!」


 まだ配ってない半分ほどが、消し炭になっていた。


「誰や!こんな人のいる所でMAP兵器ぶっ放したんは?」

「すいませーん!!」


 なにか、向こうから若い冒険者が飛んできて、フライング土下座を決めた。


「あれ?お前ら、ファースト・ペンギンだな?道化師(ジャスター)ジョーの傘下(クラン)の」


「ありゃ?シンディーさん? 実はうちのソーサラーがゴブリン見たらパニック起こしちゃって。すいません。ちゃんと言っときます」

「これがゴブリン恐怖症か…とにかくお前らも手伝え!」

「え?すいません、俺たち依頼が…」

「そうか…お弁当の半分がダメになったんだけど…て、ことはここにいる冒険者達の半分は腹ペコね…その原因を作ったのは誰かって、本当の事を教えてあげたら、楽しい事が起こるかも?」


 食べ物の恨みは恐ろしい。古今東西の真理である。たとえそれが異世界であっても


「…分りました。手伝います」

「喜んで?」

「喜んで、手伝わさせていただきます」

「うん、素直ないい子たちだね。そういう態度は暴動に巻き込まれないコツよね」


 誰が巻き込もうとしてるんだ?


 思わずリーダーの戦士の頭をナデナデしてしまった。

 リーダーは顔を真っ赤にして俯き、向こうの方でメンバー紅一点の修道女が怖い顔で睨んでいた。


 


今回も半分以上本当の話ですw

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