シンディーちゃんの初めてのお使い 前編
「だからね、ゲド戦記なのよ」
「あぁ、それなら西郷隆盛も…」
「???」
“始まりの街”アムレーハルクスに帰って来た狂茶隊の三人は早速にバーガー伯爵邸に転がり込み、「まずは」とお掃除を始めた。
普段は道場などを黙々と掃除するシンディーとスピカではあったが、「少しは女の子らしく、可愛らしく」と、意識的にペチャクチャお喋りをしだした。
しかし、如何せん中の人はアラサーのオッちゃん同志、しかも稀代の変わり者コンビとなれば、本人たちは可愛らしいつもりでも、傍から見たら???だらけだ。
歴女ではない理系女のステッドには、ファンタジー小説の傑作と明治の元勲になんの関係があるのか、サッパリ分からなかった。
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「スピちゃん。そっちの砂時計取って」
「はーい。でも本当に一人で行くんですか?姉兄さま。巨大姉兄さまが心配しますよ。私だって」
トランクに着替えや下着と細々した物を詰め、簡単に旅支度を整えていた。
拠点を構えてすぐではあるが、シンディー・マーチンが転移後初のソロプレイでの依頼を受けていた
「まぁまぁ。これは一人じゃないとかえって邪魔になるのよね。
さて、化粧品一式は持った」
「メイクできるの?いつも巨大姉兄任せでしょ?」
「あのヒゲじゃメイクできないからね。メイクの腕を落としたくないからって、毎朝私にしてくれるけど、私だって少しはできるようになったんだから。
ヘアブラシに、手鏡に、魔導書っぽく見える手帳に、お財布に、扇子に、ハンカチに免許証はないから冒険者ギルド他の身分証明書にiPhone…はないし。他は何かいるかな?」
「いるの?そんなに?細々したものばっかり」
「備えあれば憂いなしってね」
「いつもの旅のマントとか、保存食とか、革袋の水筒とか、野宿道具一式とかが無いのは」
「今回は冒険者っぽく見えないようにしなきゃいけないの。色々試したいことがあって受けた依頼だからね」
「西への街道が一番物騒らしいですわよ。夕方から夜にかけて、山賊が何組もでるらしいって」
「その情報は私も掴んでるから。大丈夫」
「それじゃ行ってきます」
「行ってらっしゃい。お気をつけて」
「もー心配しすぎだって」
そして、西の街道。夕日が沈むころには山賊たちに取り囲まれていた。
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