エピローグ
チャンカチャン チャンカチャン
ピュイアピュイピュイ ピュイアピュイピュイ
ハイヤイヤサッサ ハイヤイヤサッサ
宴会である。
血沸き肉躍るアクションシーンも、感動的な姉妹の再会も、アーネットとは何者かというミステリー的な引きも、全てすっ飛ばして宴会なのである。
「この領地では、これがデフォなの?」
「沖縄には、カラオケのない飲み屋はあっても、三線の無い飲み屋はないさー」
「へー。そう言うモンなんだ」
中世ヨーロッパ風居酒屋の片隅で雇い主の領主と話す美女(実は男の娘)。それにしても、この三線だの泡盛だのはどこから持ってきたんだ?
「それで、あの人たちは?」
「脱税くらいで極刑はないさー。資産没収の上、街から追放さー。まぁ、隣の国の経済的侵略の片棒担いでた疑惑もあるけど、それはそれさー。兵士はダメだけど」
透明ヴァンパイア、改め沖縄ヴァンパイアこと、ヌーヤル・バーガー伯爵は事件が解決して満足そうだ。
スピカは上機嫌で飲んでいる。美少女でも中の人はアラサーの九州のオッちゃんだ。
リアル世界で下戸だったステッドは、試しに一口飲んで既にグーすか寝ている。
シンディーも下戸だが、領主との話があるからと言い訳して飲んでいない。実は酒の匂いだけで酔いそうになっているのだが。
「…ごめん。気合が抜けるから三線から手を離して」
「…楽しいのに…しかしまぁ、呪われた領地だよなぁ」
この領主さま、三線を手に持つと沖縄訛りがひどくなる。そうでなければクールなイケメンなのだが。
「領主がヴァンパイアだしね」
「それはまぁ置いといて。
ゲーム的に言えば時代劇プレイするための単なる仕様なんだろうけどな。商人が現れては腐敗し、NPCとは言え共に街を発展させようと誓い合った奴も腐敗して殺されるか、腐敗した商売敵に殺される」
「そいつはキツイな。精神的にくるか?」
「そん時は開き直って、俺も悪徳領主役になるさ。ラスボスはゲームマスターも同然だろ?」
「…同情して損した…案外楽しんでるな」
「ふふ。吸血鬼の種族的特性は知ってるか?利点も多いが弱点も多い」
「あぁ。ロール・プレイング派のプレイヤーとしては遣り甲斐のあるキャラだね」
「理解してくれるか?嬉しいね。
それで俺の思う最大の特徴は『仮初の死』なんだ。死んで蘇るがゲーム的なペナルティー無しでできる。ならば、正義の味方に殺されてやるのも役割かなって」
「なるほど。大人だね」
「ベテランのプレイヤーなら阿吽の呼吸で解ってくれるけどね。そうじゃない中坊からは誹謗中傷が来る。まぁ無視するけどね」
「それ、ゲーム世界に来てからは?」
「うん?ほぼ来てないな。深刻に考える人は来てない?」
異世界転移の条件は頭の軽さ…数日前に自分が言った事だが、案外真実なのかもとシンディーは思い始めた。
「さて、これを持っていけ」
領主様はテーブルの上に鍵束を置いた。
「ほんの礼だ。“始まりの街”の俺の屋敷の鍵だ。地下墓地しか使ってないんでな。よく廃墟だと思い込んだDOQな冒険者が入りこむんだ。シェアハウスを探してるんだろ?家賃はいいから住んでくれないか?」
「それって、別荘番を只でやれって事?」
「素直にありがとうって言えよ」
「敷金も礼金も無しなら」
「…この野郎」
※※※ おまけ ※※※
「なんで私は今だにこんな所に閉じ込められてるの?」
「申し訳ありません、シェリーさん。何分、一刻も早く不正とそうじゃない部分を仕分けしなきゃならないもんで…普通に国庫に入れる分。懲罰として没収する分。被害者がいるなら返す分。それには裏も表も知っているシェリーさんの協力が不可欠なんです」
「私は悪事とは無関係です」
「知ってます。それに関してお館様からメッセージが二つ届いてますです」
『今回の件について金は払うので協力してほしい。そちらさえ良ければ、引き続き官吏として登用してもよいので頑張ってほしい』
「…です」
「何で休みなしでなのよ!宴会の後でもいいでしょ?」
『キチンと歓迎会は開く」
「…二つ目のメッセージです」
「……………」
PV伸ばしたいなー
やっぱ、女性キャラの方がウケがいいかな?
という訳で、次回はここの所出番の少なかった、この物語唯一の女性キャラを主役にします




