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私が領主のバーガー伯爵です

 そろそろ夕闇が迫ろうとする時間に、やっとこさ合流したいつもの三人組・狂茶隊 + おまけの少女がやって来たのは、バーガー伯爵領の街を守る城壁の西側の門であった。

 門には三種類あって、貴族以上の身分が使う『第一門』、庶民の使う『第二門』、そして主に商人が使う何台もの馬車が通るための大きな『第三門』がある。


 キーンコーン カーンコーン


「西の3か」

「絵本書いたり、オンラインサロンやったりしとる?」

「キンコンの西野さんと違っと」

「そやそや、三重県人ならカナやんだろう(やん)?」

「西野カナでもなか。しょーもない漫才で字数かせぎやめっと」

西野カナ(カナやん)(の物まね)なんか(やん)できない(やれやん)でしょう(やん)?」

ついに(とうとう)サッカーくじ(TOTO)当選しましたね(取っとーと)?」


 とにかく、教会の鐘が鳴っている。後二時間ほどで城門が閉まるという事だ。


混んでるねぇ(詰んどるなぁ)

「皆、焦り出してるなぁ」

「で、第三門を管理してる部隊と官吏があれ」

「なんか、商会で見た顔がおるんやけど」

「であっちにある倉庫が、検疫したり、没収したりの場所」

「相手が商人やと、倉庫も大きいなぁ」

「後はあそこから抜荷を見つければえぇんやな」

「既に決めつけてるよ」

「あの手紙の銀貨ね。こすり出し(フロッタージュ)だったでしょ?つまり、持ち出してないって事だよね?なら、まだバレてない可能性が高くない?」

「なるほど、持ち出したら何時かはバレるけど、そうじゃないなら…あるいはすぐバレるシステムなのか?触れない何か理由があるか?」

「それに、この子のお姉さん。いなくなった時期と手紙が途絶えた時期がズレてるのはなぜ?」

「まだある。この手紙を出したのは誰?」

「「「…う~む…」」」

「私ら実はミステリーに向いてないんじゃ?」

「どっちかと言うと、証拠も証言もぶん殴って集めてたよね、ゲームじゃ」

「ハードボイルド小説はインタビュー小説って偉い作家先生が言ってたらしいよ」

「私はトレンチコート来たゴリラが鉄砲ぶっ放しまくる小説って、聞いたことがあるんだけど、言わない方がいいよね?」

「「言ってる言ってる」」

「しようがないからゲーム(いつも)のノリで行きましょ」


〇●〇●〇●〇●


「すみません、兵隊さん」

「なんだ?うわぁ!」


 門番の兵士は、自分よりはるかに大きいヒゲ面の大男に背後から声を掛けられ驚いていた。


「失礼、私は肩車のヤシチと申す者です。こちらはアキ。この娘の父親がそろそろ帰ってくる頃なのでこうして迎えにきたのです。イセヤァ商会の隊商はまだ来ていないでしょうか?」


 ステッドは女の子を肩車から下ろしながら、ペラペラと適当な事をシャベリ兵隊の気を引いている。その間にシンディーたちは倉庫に忍び込む。


「あの子、名子役だね」


 ウソ泣きをしながら「お父さんに会いたいよー」などと言い、兵士三人ほどを右往左往させていた。


「まずは事務所に入って、資料を探る」

「私は鍵束を持ち出して、倉庫に押し入る。んじゃまた後で」


 倉庫には数々の木箱がうず高く積まれていた。その中に隠されるように地下室への入り口ある。鍵などはないが、でかい木箱が置かれて動かせない。


「【月の重(グラビティ―・オブ)力場(・ザ・ムーン)

 ここ、隠れ家としては手抜き建築よね」


「あーもういや、めんどくさい!!」


 地下室から奇妙な声が聞こえる。


「助けに来ました。あなたがシェリーさん?」

「え?やっと来てくれたの?あー助かったぁ!じゃ、あなた。こっちからそこまでの資料まとめて。それから検算もしっかりしといて。あいつらの計算は信用できないから。はい、これ。ペンとメモ用紙とソロバン。じゃよろしく」

「え~と、そっちの助けるじゃなくて」

「なに、ご飯の係?炊事場はそっちの奥でお茶を入れるくらいしかできないけど…」

「違ゃうわい!何ボケとんやこの姉さんは

あなた、閉じ込められてたんじゃないの?」

「あぁ!いつもと変わらないからスッカリ忘れてた!」

「ブラック企業に洗脳された人って、こんな感じ?」

「いやぁ。なんか金の流れが変なんで追っかけてみたら、商会と代官での山分けのが不均衡なんで、言ったら揉めだして」

「一足飛びにそこまで行くの?金の流れが変ならどっかに訴え出たら?」

「どこに訴え出るかは慎重に見極めないと。訴えた先が黒幕だったてありがちでしょ?」

「そりゃそうだけど。ところで、アーネットて人知ってる?」

「私をここに連れてきた人かな?迷ってるうちに連れてこられたんだけど、なんかそんな感じで呼ばれてた」

「で、これはなんの資料なの?」

「為替レートがどうとか、銀貨の兌換率がどうとか。それと毎日どれくらいづつ持ち込んだのか。それを照らし合わせて、表と裏の辻褄合わせして…」

「あぁ、あれね!A国が金貨一枚につき銀貨5枚、B国では金貨一枚に銀貨15枚で交換するとなると、B国よりA国で交換した方が良いっていう」

「浮いた分を所得隠しが脱税で不正蓄財。でもお互いが信用してないから私の出番…あれ、私なんで悪党の仲裁しなきゃいけないの?」

「お姉さん、悪事の片棒担いだことにされるよ。とにかく、ここから出ましょ」


〇●〇●〇●〇●


「おーい。今日の分の資料持ってきたぞ…ん!」

 

 こっそり出ようとして、怪しい荷物を運び入れている人たちと出くわしてしまった。いくら【隠形】を使っても狭い一本道では無理だった。

 キャラのスキル【格闘術】と中の人のスキル・剣道でとにかく殴り倒しながら外に出る。


「お前が連絡のあったお館様の犬だな!」

「ほー。面白い話だな。私がどうしたと?」


 その場のすべての人々の頭に直接声が響く。

 逢魔が時に本来貴族用の『第一門』ではなく、ここ『第三門』に来た黒いベール又はフードに顔を隠した人々に前後を守られた伯爵家の紋章の霊柩馬車(ハース)。それは貴族の葬列に見えるが吸血鬼(ヴァンパイア)大名行列(パレード)であった。

 電気の(エレクトリック)亡者(・ゾンビ)、いわゆるフランケンシュタインの怪物が前に進み出て棺を担いで馬車から降ろす。


「もはやこれまでか。こうなったら、謀反だ!伯爵もろとも全員をやれ!」

「面白い。やれるものなら下克上を果たしてみよ。では、狂茶隊の皆さん。懲らしめてやりなさい」


 今日は三線を持っていないので普通に喋っている。


「よーし、じゃ、闘いましょうか突撃魔法少女(アサルト・メイジ)ちゃん」

「いやですよー!最後くらいまともに闘いましょうよ」

「?」


 付き合いの長い狂茶隊メンバーにしか分からないが、闘いの前に「闘いましょうか」なんて言うのは…さらに言えば「突撃魔法少女(アサルト・メイジ)」失礼な方の仇名で呼ぶのは、何か闘い以外の意図があるのだ。闘いたいなら、無言か「ガンガン行こうぜ!」とか言うはずだ。この場合は「伯爵に押し付けて逃げよう」が真の意味だ。

 絶対安全(コメディー・)領域(フィールド)のない、シティ・アドベンチャー用のこの街で、敵味方に加えて、門の周りで手続きを待つ人々や野次馬に囲まれてMAP兵器は使いたくないのだ。

 伯爵は伯爵で、近くに銀貨が大量にあるような場所には出たくないし、吸血鬼の闘いを領民に見せるのはドン引きされるに決まっているので狂茶隊に闘ってほしい。

 意外に血の気の多いスピカは、許可は下りたしクライマックスくらい大暴れしたい。ステッドもやっぱり最終決戦はしなきゃ閉まらないよね、と思っている。


「しかたがないか。こっちで行くか」


 そう言うと魔法少女のバトンを正眼に構える。


「にしても敵が少ないね」

「お前らのせいだろ!」


 商会からの援軍は来ない。覗きの現行犯逮捕と、ランチに毒を盛ったのと、逃げ出す時に叩きのめしたので、結局全滅させてしまっていた。


「えーと、戦わずして勝のが最上って、昔中国の偉い人が」

「それパリピの人?」

「いや、もっと古い人。孫さんの」

「悟空なら強そうだね」


 理系女は歴女ではなかった。


「他の兵士はどうした?」

「隊長が言ったんでしょ!関係ない奴らに見つからないように、早く帰したじゃないですか」

「だから俺たち、いつも残業で…」

「事務仕事が雑になって、あの女入れなきゃなくなって」


 本当にブラック企業だな。


「戦闘員がたった三人って、予算の無い特撮みたいだね」

「特撮なら名乗り上げからやろうか」

「今度練習しよう」


 そう言って闘いに突っ込んでいった。


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