鋭いメスを入れ
依頼を受けたなら、当然であり必然である。無論であり勿論。お約束のあるあるネタが待っているのである。すなわち、メイド服である。
「まぁ潜入調査には変装はつきものか」
「でも、もっと可愛いのない?なんか野暮ったいメイド服だわ」
「私はこれくらい清く正しくクラシックな方がいいけど。まさか頭の悪い深夜アニメみたいなのがいいの?現実にあんなの着てたら風〇嬢だよ」
「姉兄さま酷いー!言いだしたら、私たちのいつもの衣装も微妙に…」
「…これ以上触れないようにしましょ」
「にしても、騙されましたかね」
「騙されたってか、乗せられたってか。ねぇ。交渉事はお貴族さまには敵わないね」
そして、数日前の事を思い出す。
「でも、透明ヴァンパイアの本業って、暗殺者でしょ?いくらなんでも…」
冒険者の宿の食堂の片隅で、ギルドを通さない闇営業…ではない、直接交渉が行われていた。
「俺にはヌーヤルって名前があるさー。暗殺て言うからテンション下がるさー。必殺仕事人だと思ったらアゲアゲに」
「なりません!!」
「そっち系の仕事なら、ジョーの所の方が本業でしょ?」
「半分ほどが異世界に転移してないから、そっちはボロボロさー。こういうのは事前の調査が肝心さー。『段取り九割』は異世界でも同じさー」
「うん。うちの上司も口癖やった」
「うちの所は『一に段取り、二に根回し、三四が無くて、五に飲み会』が仕事を円滑に進めるコツ言うとっとたい」
「「「 いたいた。そんな上司いたよww なぁ 」」」
「みんな………異世界転移前は昭和の世界に住んでたの?」
なぜか全員、涙ぐんでしまった。
「とにかく!頼みたいのは調査だけさー。犯罪行為はないさー」
「でも、結局は必殺仕事人の下準備やろ?」
「仕事人も水戸黄門も大して違わないさー。公的に奉行所に渡すか、私的に56すか…」
「大違いだよ!」
「なら水戸黄門なら只でやってくれる?}
「まぁ、水戸黄門なら…」
…と言う訳で、ヌーヤル・バーガー伯爵領来ていた。
「はー。あれはきっとワザとだな。方言って人が純朴に思えるからねぇ…関西弁以外は」
「そーよねー。なんか人が良く聞こえるからねぇ…関西弁以外は」
「警戒感が無くなるんだよね…関西弁以外は」
「お貴族さまで領主さまなの忘れさすよな…関西弁は特に」
「…段々、ただの関西弁の悪口になっとたい。しかもシンディーも関西弁たい」
「三重県は微妙に関西と違ぁうわい!」
「遠くからやと違いが分からんと」
「そんな事より、この手紙よ」
「誤魔化したな」
いつまでも遊んでないで本題に入れ。




