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シンディー・マーチンは目を覚ます

連載に初挑戦です。よろしく


初回限定、豪華三本立てSP

 新堂雅人が目を開けると、中世ヨーロッパ風の世界が広がっていた。

 

(これはきっとアレだよな。うん、きっとアレじゃなくてアレだ。『ヨーロッパ世界遺産・古都の旅』とかなんとかのツアーで、時差ボケでボーっとしてるだけだ。当初の計画通り、スーちゃんに跪いて指輪を渡し……)


焦って心の中でベラベラ喋り続けている。


「ワ~!!アカンアカン!妙なフラグ立てるトコやったヤン!」


 思わず声をだしてしまう。根は西日本の人間である。


(いや待て待て。俺は新堂雅人、三重県出身、大学は東京、そのまま東京で就職、学生時代一心に剣道に打ち込んだ(ダブルミーニング)ガチムチ大男、アラサー独身、遠距離恋愛の彼女あり。なんでこんだけ記憶があって昨夜(ゆんべ)の記憶だけないんや?最後に飛行機に乗った記憶は………三年前の北海道出張やん!その前のハワイ社員旅行なんて出国と入国、両方でえらい手間やったやん。忘れるはずないやん)


三重県人はやたらと『ヤン ヤン』言う。もしくは『ナァ ナァ』と。

 

 改めて見回してみると、石畳の道に石造りの建物。中世ヨーロッパ風の街並みだが、街灯やネオンなど電気製品は一切見えない。看板もアルファベットではない謎文字で書かれていて、ご丁寧にも横に字幕が浮かんで見える!VRゴーグルなんか掛けてないのに!?(ペタペタ顔を触って確認済み)

 ただし、ゲームのプレイヤーとしてよく利用する店などはかろうじてアルファベット風にしてあって解りやすくなっている。『武器屋』は『ARMS』、『防具と盾』は『ARMOR & SHIELD』、『冒険者の宿』は『HOTEL』などと言った具合だ。

 よくよく気を付けて見ていると、そこかしこで「わー!」だの「ギャー!」だの騒いでいる人たちがいる。全体の5~10人に一人といった所か?そんな人たちも含めて、一人残らず現代人のファッションではない服を着ている。 


(妙に扉とかデカくね?きっとヨーロッパだからね。日本よりも大きいよね、うん…俺180越えの大男なんやけど。並みの外人さんにも負けてないんやけど?)


 多少は落ち着きを取り戻したのかヤンヤン言わなくなった。だから色々な違和感に気づく。さっきから目線が低くなったような気がしてたのは気のせいではなかったようだ。


(だいぶ背が低くなってる?それにさっきから足がやたらとスースーする)


 ポンポン触って確認すると、日本の平均的男性なら(よっぽどフザけたパーティーでもない限り)一生はかないであろうモノ…ミニスカートをはいていた。


(なんて言うんだこれ?ヒラヒラ・フワフワのレースでスカートの奥は覗けないようになってる。さらにその奥には……………ある!?いつものモノがある!?つまり俺って男の娘!)


 嫌な予感がして何かの店のショーウィンドウで自分の顔を確認しにいく。頭の片隅で「中世の技術力で、こんなに大きくて歪みも凸凹もないガラスはないよな」…と考えながら。


「ギャーーー!!」


 同じようにショーウィンドウに顔を映した隣のお兄さんが叫ぶ。赤の他人にパニックの先を越されると妙に冷めるもので、完全に落ち着きを取り戻していた。


「お嬢さん、僕なにに見えますか?」


 お嬢さんではないのだが、面倒くさい説明をする義理もないのでスルーして答える。

 いくらヨーロッパがアーチェリーの本場だからって、むき身で持ってる人はそういない。耳尖ってるし。


「エルフですか?」

「やっぱり?ギャーーー」


 地平線の彼方まで四歩で届きそうな勢いで、明後日の方向に走っていく。もう会うこともないであろが一応無事を祈っておこう。


 改めてガラスに映してみる。


「…可愛い、それにキレイ…やっぱりか」


 毎朝洗面所でみる自称中の中、スタイルの良さで誤魔化せれば上の下にギリ入る(あくまで自称)微妙な出来の顔ではなく、正真正銘の美女の顔だ。

 当然だ。コラボキャンペーンで手に入れた、応募者数千人の中から当たった、去年の朝ドラで大ブレークを果たし国民的ヒロインとなった若手女優のデビュー間もない頃の顔のアバターなのだから。それにしても、可愛らしさを強調する魔法少女風のファッションは、ダンジョンに潜ったり荒野を旅したりには全く向かないように思える。

 ちなみに、男の娘キャラにしたのは初期ガチャで男の娘キャラ有利なSSRなアイテムとスキルが連発で出たのと、周りの人たちとの悪ノリと、件の若手女優の事務所からの制約、との誓約、その上で成約した『彼女のイメージをそこなうような言動は厳に慎んでください。特に性的な』『なら男の娘ならええかいな?たいていの作品で性的なイメージからかけ離れた愛されキャラやで?』『よく分りませんが、それが本当ならOK』と微妙に騙したような事になっているからだ。


(やっぱり『ファイティング & ファインディング ~ファンタジー フィールド~(通称 FFFF F、又はF×4)』の俺のキャラ『シンディー・マーチン』や…異世界転生…改めて言うと恥ずかしいな…いやゲーム世界に転移か。しかも俺だけじゃなさそうだ。女神様に面接してもらった覚えもないし、こりゃチートは期待できないかな。とりあえず、ステータスオープン…とか言ってみたり…ありゃ?本当に出てきたよ…どれどれ…職業:魔法使い、の中でも範囲魔法の専門家、ソーサラー。Lvはカンスト、技能(呪文)全部埋まってる(コンプリート)。サブ技能は忍者の隠形と格闘術。(パーティー)のみんなに守られながら大量破壊(MAP)兵器。俺を狙ってきた奴は、いざ突破されたらサブ技能(かくし芸)で一発食らわして逃げる。ふむ、実に侍らしくない発想の戦いだよな。現代の侍たる元剣道部員としはもっと正々堂々と…って、いつもといつもと違う事するからゲームは面白いんだろ>>俺)

(…にしてもこの格好はなぁ…ゲーム(キャラ)ならともかく、現実(自分自身)となると、なんとかしたいなぁ。衣装替えは課金だったっけ…誰に?…誰に払うんや?!)


 益体もない事を延々と考え続けている。


「…………ンディー!」


 ので、自分の名前が呼ばれているのにも気づかない。


「……シンディー!シンディー!! 新堂く~~~んんん!!!」


(誰だよ!こんな所で本名呼ぶなよ!!」


 やっと気が付いてそちらを向くと、ヒゲ面ガチムチム2メートル越えの大男が、涙と鼻水で顔をグチョグチョにしながら、凄い勢いで突進してきていた。





続けて第二話をお楽しみ下さい。


ブクマ、高評価、を戴けると喜ぶ奴がいます


「おぉ!そらワシや!!」



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