あなたはどこへ向かうの?
初投稿ですので、お手柔らかにお願いします…。
あるところに、ありきたりな物語の、ありきたりな舞台がありました。
高貴で美しいご令嬢に、麗しい王位継承者の婚約者。そして身分の低い貴族である可愛らしいご令嬢。
高貴なご令嬢は婚約者の心を得ることができず、他のご令嬢が彼の心を射止めたのです。
そしてある時、開かれたパーティーでご令嬢の肩を抱いたまま彼は彼女に言いました。
「貴女との婚約を破棄する!」
やれ、ご令嬢を嫉妬心から虐めただの暗殺者を差し向けただの。これまた娯楽小説ではありきたりな言葉で彼は彼女を糾弾し始め、ついには彼女は国外追放という処分を言い渡されました。
そんな彼の様子を彼女はどこか遠くの世界のように眺めていました。
「つまんないの。」
彼女は誰に聞かせるでもなくそう呟き、
「分かりましたわ。明日にでもこの国を発つとしましょう。それではみなさん、私はここで失礼させていただきますわ。」
ごきげんよう、とその美しい顔で笑みを作ると、ヒールの踵を鳴らしながら優雅にパーティー会場を去って行きました。
彼女のそんな様子に会場の人々は驚きざわめいておりました。
彼女が彼をとてつもなく執着していたとみんなが思っていたからです。
王子もご令嬢も同様に驚き目を見開いたまま何を発するでなく固まっていました。
しかし今見た彼女の様子は心底つまらなそうに彼らの糾弾をひとしきり聞いていました。それはなぜでしょうか。
だって興味がなかったから。
彼女はそう答えるでしょう。彼女は彼の心を射止めようともしていませんでしたし、むしろそうなることを厭うていたようでした。
こうしてこの「つまんない」お話はそのままそこで幕を閉じたのです。
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そこから数年が経ちました。
その数年の間におかしなことが各地で起こっていました。
天候に恵まれた豊かな国の一つがある時から荒れ果て、作物を植えても植えても育たない、そんな土地に変わり果ててしまったのです。
それとは逆にその他の国では1〜2週間だけ急に天候に恵まれたり、作物がおかしなスピードで育つようになったり。ある場所では竜が飛ぶ姿を目撃され、またある場所では立派な庭園に変な模様が突然現れたり……。
それら不思議な現象は一箇所にとどまることなく、まるで移動するかのように隣り合った国へと移って行きました。
ある国で不思議な現象が起こると1〜2週間後にそのお隣の国が。そしてまた1〜2週間後にはそのまたお隣の国に。
まるで移動しているかのように、そんなおかしなことが次々に起こるそれらの現象は同じ場所には二度と起こりませんでした。
それらの現象は世界中に大きな動揺がもたらされましたが、その原因は彼らには突き止められるはずもなく。
そのうち天の使いが渡り歩いているのでは、というお花畑な推測が彼らの中で出始めるまでになりました。
ある国で1人、可愛らしい赤子を連れたそれはそれは美しい女性が横を見ながら話します。
「ふふ、私が天の使いですって。可笑しかた仕方ないわね。」
通りすがりで声が聞こえた村人が彼女を見上げますが、その隣には誰もいません。
しかし確かに誰かが存在していたのでしょう。
風がサワサワと楽しそうに吹いていきました。
「さあ、次はどこに行きましょうか。」
つまらないと呟いていた彼女は今日も楽しそうに旅を続けるのでした。
「ティア、竜に乗って移動するだなんて…。君は目立ちたくないんじゃないのかい?」
「あら精霊王さま、私は目立つことよりもやってみたいことをやれない方が嫌ですの。人生楽しんだ方が勝ちだって言うじゃない。それに私達の愛しいお姫様も喜んでるわ。」
「………はぁ。」




