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ロスト=ストーリーは斯く綴れり  作者: 馬面
ウェンブリー編
107/383

第6章:少年は斯く綴れり(1)

【ウェンブリー魔術学院大学】の閉鎖騒動から、一ヶ月が経過した。

 調査隊の出した結論は『食中毒』。

 体調を崩した人間の八割が学食を利用していた事を重く見た結果だ。

 しかしながら、断定するには不十分な数字であり、やや強引な感は否めない。

 まるで、何らかの力が働き、無理矢理収束にこぎつけたかのように。

 ともあれ。

 それから更に三日後、大学は平常通りの運営を再開した。

 空白の一ヶ月は、講義や研究の日程を大幅に狂わせ、その調整で各方面が混沌に包まれる中――――ミストは教会に赴いていた。

 通されたのは、通常使用されている接客室ではなく、三階――――最上階にある会議室。

 大学のそれと比較すると、その違いは明らかだ。

 肉食動物の剥製や聖書の一部を描写した巨大な絵画など、市場に流通していない芸術品が数多く展示されており、煌びやかな印象が強い。

 教会の中でも上位者だけが入る事を許される、雅の限りを尽くした空間だ。

 そんな場所に、ミストは招待されていた。

 当然、それには理由がある。

 そして教会の意図がある。

 表向きには、話題の新米教授と挨拶がてら会食を、と言う――――如何にもな理由。

 実際、彼に興味を持つ教会関係者は少なくない。

 それ程に、二十代の教授と言うブランド力は大きい。

 だが、本命は無論、先日のドラゴンゾンビ取引の件。

 ミストにとっても、それは織り込み済みだ。

「……成程。そちらの言い分は良くわかりました」

 ウェンブリー教会における最高職【首座大司教】を勤めるルンストロム=ハリステウスは、その重厚な唇をゆっくりと動かし、ミストの証言に何度も頷いてみせた。

 会議室に集った人間は、全員で四名。

 外部の人間はミストのみで、残りは何れも教会に籍を置く魔術士界の重鎮ばかりだ。

 三十年間で二十二の魔術を世に出し、魔術士の発展に多大な貢献をした事で有名な、ミハリク=マッカ司教。

 魔術史を細部までまとめた【総史総合】をはじめ、数多の著書を生み出した文豪、テール=ライセン司教。

 そして、第二聖地ウェンブリー最大の規模を誇るウェンブリー教会をまとめる、ルンストロム首座大司教。

 学長を前にしても、顔色一つ変えず自論を唱える事が出来るミストと言えども、平常心で対峙出来る面々ではない。

 全員が齢六十を越えて尚、その欲望をまるで枯らさない、老獪の粋を極めた魔術士の頂点だ。

「つまり、ウェンデル司祭とその部下は、貴方がたの大学に無断で侵入し、施設を破壊して、貴方の部下を負傷させた……と。そう言う訳ですね」

「はい」

 ミストの首肯に対し、ミハリク、テールの両司教が同時に苦笑を浮かべる。

 その表情には、若造を小馬鹿にする――――と言うよりは、そのような扱いを受けた事に対しての反応を観察したいと言う意図が見え隠れしていた。

「しかし、我々が調査した結果、彼は賊に襲われたと証言している。大学に与えた被害も全て賊の仕業だと」

「言ってましたねえ。子羊のように哀れな目をして……ヒヒヒ」

 ミストはこの場における自分の表情、発言、そして感情の波、それら全てを既に決めていた。

 つまり、ここは演舞場。

 用意された脚本を忠実に再現する――――そんな場所だと強く言い聞かせていた。

「僭越ながら意見を述べますと、その証言には疑問の余地があります。そもそも、何故ウェンデル司祭は我々の大学に赴いたのでしょう? それも深夜に。加えて、当時大学は閉鎖中でした」

「ふむ……どうなのかね? ミハリク司教」

 ミストのやや緊張した面持ちを観察しながら、首座大司教は静かに問う。

「本人の証言によりますと、その閉鎖した原因を知る為の視察だったと。夜になったのは、到着が遅れた為だそうです」

「視察、ですか」

 ポツリと、ミストが呟く。

 その表情に、あからさまな猜疑を表現している箇所はない。

 しかし、眉だけは微小ながら動いた。

 それを見たミハリクが目だけで笑みを浮かべ、口を開く。

「大学と教会の関係は、年々改善の方向へ進んでいます。その橋渡し役として、彼はこれまで幾度となく各方面の大学を訪問して来ました」

「彼の末弟は大学の教授でしたね。非公式ですが。そう言う縁もあっての事でしょう」

 テールの補足に、ミハリクの好好爺面が深々と頷く。

「【ウェンブリー魔術学院大学】は、聖地ウェンブリーの中でも特に注目されている大学と聞きます。貴方の存在も、それに多大な影響を及ぼしている」

「恐れ入ります」

 全く感情の篭らないやり取りが、臆面もなく続く。

「そんな大学に無視出来ない問題が発生したのだから、彼にしてみれば一刻も早く視察に訪れたかった」

「着いた途端、賊に襲われ負傷した」

「賊は彼の部下に毒矢を放ち、それを頭部に受けた彼の弟は脳を患った」

「施療院を探しにウェンデル司祭は単独で移動。その間、賊は逃走し、残された部下が濡れ衣を着せられ、身柄を拘留された」

「辻褄は合っていますな」

「どう思います? ミスト教授」

 間隙のない、連結した進行。

 ミストは、両司教の溶けそうな笑みに、一つの確信を得た。

 教会はウェンデルを無理して保護する気はない――――それがミストの下した判断だ。

 教会側が用意した脚本は、決して完璧ではない。

 夜の大学に行ったところで、人がいないのは明らかなのだから、一泊して翌日訪問し、原因を聴くなり探るなりするのが自然な行動だ。

 それに、閉鎖中の大学の周りに賊などまずいない。

 元々治安の安定している大学周辺にそう言った連中は少なく、まして閉鎖中で人がいない状況。

 普通の施設なら盗みに入るには絶好の機会だが、封術が施される魔術大学においては、閉鎖中と言う状況は侵入には向いていない。

 そもそも、戦闘能力に特化した部下を帯同させておきながら、空き巣レベルの賊に襲われたと言うのが、余りに不自然。

 聖輦軍最高峰の魔術士が、単なる賊に後れを取った――――などと言う事実を、教会が認める筈がない。

 少なくとも聖輦軍の長が発する言葉ではない。

 穴は決して小さくなかった。

「私見ですが……」

 しかし、ミストはそれを一切指摘しない。

 何故なら、そのような事は一切、自分の脚本には記されていないからだ。

 彼にとって、理論の穴は美味しい御馳走のようなもの。

 だが、それを目の前にしながら平然と見送る事が出来る。

 ミスト=シュロスベルが今ここにいられるのは、その術を身に付けたからに他ならない。

「どうも彼は、私の研究に興味を抱いていたのではないかと思われます」

 その指摘の代わりに彼が提示したのは、尊大な内容の見解だった。

「ほう?」

 興味を示したミハリクが、その視線を狭める。

「私の研究データを欲しがっていたウェンデル司祭は、データを盗む為に閉鎖中の大学を訪れた。だが、その途中で私の部下に見つかり、口止めを試みたが失敗に終わった。愚考するに、そう言う事かと思われます」

「それは不自然ですな。何故わざわざ自ら盗みに?」

 その指摘は、ミストの予定通りだった。

 が、満足感など微塵も感じず、『狼狽を覚えたにも拘らず、それをどうにか隠す様子』を淡々と演じる。

 ミハリクの目が更に笑った。

「私が教授になる少し前に、似たような事件が起きていたのです。元教授のライコネン=ヒーピャと言う人物に、私の研究室のデータを盗まれたのですが……どうも、彼はウェンデル司祭と繋がりがあったようですね。これについては既に調査済みです」

「なんと……」

 ルンストロムの驚嘆の声に、ミストは安堵を『表現』する。

 次に語る部位は、僅かに読み上げる速度を早めなければならない。

 ミストの顔に、意図的な紅潮が浮かぶ。

「一度失敗した事で、大学の人間を使うのは難しくなった。人を使う事自体に信用がおけなくなった。そこで、閉鎖中と言う好機を狙って、自分で直接手を……そう言う事ではないでしょうか」

 ほぼ一気に捲くし立て、小さく一息吐く。

 ルンストロムは鋭い目付きに穏やかな光を携えつつ、柔らかに頷きながらそれを聞いていた。

「成程……君の研究データが間接的に狙われたと言うのは、間違いないのですね?」

「はい。尤も、ライコネンの息子であるガルシアと言う男が、そのデータを自身の論文に流用すると言う愚行に出たお陰で、早急に判明しましたが」

「息子が流用? それはまた随分間の抜けた話だ」

「世の中、出来の悪くない人間と言うのは意外に少ないものですからね」

 徐々に流れが出来上がってくる。

 そこに一つ区切りを設けるかのように、ルンストロムは息を軽く落とした。

「さて……どうも貴方がた大学側と、ウェンデル司祭の言い分には食い違いが多く見られるようですね。我々はどう判断したらいいのでしょう?」

「我々としては、同胞たるウェンデル司祭が虚偽の主張をしているとは、考えたくもありませんが」

「仮にそうであった場合、教会から犯罪者が生まれてしまいますからね。これは由々しき事態です」

 それは、清らかで穏やかな川を連想するような、静かな流れ。

「しかしながら、判定はあくまで公平に見て行わなければなりません。真実を語っているのは、果たしてどちらか」

「我々が支持すべきは」

「どちらでしょうか?」

 しかし、下流に突然現れたのは、濁流に支配された分岐点。

 どちらに行きたいかは明白でも、そこへ辿り着く事は決して容易ではない。

 ミストは――――その濁流に飲まれる事を拒んだ。

 あくまでも、自身の脚本に忠実に。

 眼前の三人が用意した川に何時までも浸る気はなかった。

「一つだけ、隠された真実があります」

 その為に一枚、カードを切る。

 それはミストにとって思い入れの強いカードだった。

 幾つかの保険がありつつも、賭けに近い心境で引いたカード。

 それが予想よりも遥かに早く育って行く様を一年以上見続けていた事で、それなりの感情移入が生まれていた。

 今は、自身の運の象徴とも言える存在とまで思っている。

「ほう……聞こうか」 

「ウェンデル司祭が欲しているのは、生物兵器を用いた研究です」

「!」

 そのカードを、最高級のシルクで作られた広大なテーブルクロスの上に置き、捲って見せた。

「私は現在、その研究に力を注いでいます。そう遠くない将来、それは日の目を見るでしょう。圧倒的な支持と、一部の猛烈な批判の中で」

「生物兵器ですか……それはまた物騒なものを」

 冷や汗交じりの声――――と言う様相は全くない。

 流石に老獪。

 ただ、ミストの言動が得た求心力は、決して小さくない。

「ですが、ウェンデル司祭がその技術をコソコソ研究していたと言う事実は、私の耳にも入っていますね」

「それは本当か」

「はい。間違いありません」

 司教達の顔に刻まれた幾つもの皺が、徐々に深みを増す。

 彼らにとって、現状が予想外の展開である事は明らかだ。

 特にルンストロムの眉間には、深手の傷のような刻印が浮かび上がっていた。

「我々魔術士にとって、生物兵器は常に忌むべき存在。それを研究するなど、真もって道徳・倫理に欠ける行為」

「それ故に禁忌とされています」

「が……同時にその対抗策が何時まで経っても確立出来ていないのもまた、事実。我々とて、危機感を抱いていない訳ではない」

 ミストを、これまでに経験した事のない圧が襲う。

 妖怪に近い三人の眼光を受け身体が軋む中、用意した残り数行の科白を頭の中で再構築し、口を開いた。

「私は、現在の魔術士の地位に疑問を感じています。私達が騎士の小間使いなど、とても認められる事ではない。そう呼ばれる要因は、弱みから目を逸らす忌まわしき体質にあるのではないかと、常日頃考えております」

 抑揚は控えめに、しかし力強く。

 顔に冷や汗を掻かない為、出来るだけ筋肉を弛緩させながら。

「研究家は常に先を見なくてはなりません。先鋭的であり続ける必要があります。でなければ、新しいもの、より良いものは創れません」

 そして、口の中の渇きを自覚し始めたところで――――

「だが、そう言う世界にいるからこそ、より一層、しきたりや伝統に重きを置かなくてはなりません。保守すべきは保守し、それらを汚す存在は即刻排除する。魔術の象徴たる先人の努力とその地位には、常に敬意を持ち、尊重したい所存です」

 最後の科白を悠然と唱えた。

「素晴らしい。魔術士の鑑ですね、君は」

 ルンストロムの褒辞を、二人の司教が拍手で彩る。

 ミストは――――勝った。

「それはつまり、我々に恥をかかせる気はないと、そう言う事ですね?」

「仰せのままに」

 敢えて直接的な確認をして来たルンストロムの顔が、満足気に綻ぶ。

 ミストもそこで、ようやく表情を緩めた。

 教会がどのような結末の脚本を用意したのか、ミストには知る術はないし、その必要もない。

 ミストが提示したこの結末に、彼らが一定の満足を見せた――――それが全てだった。

「貴方の意見は良くわかりました。誰が真実を話したか……私にはもうわかっています。お忙しい中御足労頂き、有難う御座いました」

「滅相も御座いません。このような愚生で宜しければ、何時でも御呼立て下さい」

 会合はこれで終わった。

 ミストが先に席を立つ事はない。

 先ず年長者のルンストロムが立ち、それを全員が最敬礼で送り出す。

 次に両司教が退室する。

 彼らは二人して、去り際に言葉を残した。

「聡明な人間は大歓迎ですよ、私は」

「人材不足が顕著ですからね。新たな才能は保守されるべきです。期待していますよ」

 ミストは二人に向かって最敬礼し、扉の閉まる音がした十秒後に顔を上げた。

「失礼しました」

 そして、無人の部屋に挨拶をし、外で待っていた召使いにも一礼して、最上階の廊下を歩く。

 流石のミストも、その心を開放感で満たした事で、足取りは普段よりも軽い。

「今回の件はこの密室で全てを有耶無耶にするし、今後も協力は惜しまないので、どうか私に目を掛けて下さい」

 その足が――――隣の部屋の前で止まる。

 直ぐに扉が開き、そこから馴染みの顔が現れた。

「これだけの事を言う為に、随分長い事話し込んでましたね」

「お前は何処にでもいるな、リジル。今日は仮面は良いのか?」

「まあ、歳不相応の顔にもいい加減慣れましたから」

 ミストは口を閉じたまま息を落とし、再び歩を進めた。

 それに並行しながら、リジルはどこか憂いを帯びた微笑を浮かべる。

「それにしても、相変わらず貴方はやる事がエゲつないですね。これまで僕にドラゴンゾンビを保管させていたのも、二十代で教授になったのも、盗作騒動も、生物兵器を使ったあの大学閉鎖も、全てはこの日の為の布石とは……誰が想像出来るやら」

「全てではない。利用出来るものは利用したがな」

「それだけの事を完遂出来る人間が、この世にどれだけいるのやら」

 二階まで降りると、参拝者の集った礼拝堂が吹き抜けから見える。

 この世には一体、この何倍の数の人間が存在するのか。

 そして、どれだけの人間が理想を手に出来るのか。

 選民意識に囚われ、結局到達出来なかった者を何人も見て来たリジルは、半ば呆れ気味に苦笑を漏らした。

「斯くして、ミスト教授は教会に強力な売込みが出来ました、と。大したものです」

「唯の足懸かりに過ぎん。これで即どうこうと言う事はない。そんな世界ではない事くらい、お前の方が良く知っているんじゃないか?」

「何事も一手目ですよ、大事なのは。後は積み重ねるだけの単純作業ですから」

 それは、歩行と同じだった。

 一歩一歩、少しずつ前へ。

 今まさにそれをしている最中のミストは、嘆息を禁じえずにいた。

「老人の御機嫌を取り、メンツを守り、欲を満たす……ゾッとするような作業だ」

「昔の貴方からは想像も出来ませんね」

 礼拝堂を跨ぐようにして玄関前に降り、陽光にローブが照らされた所で、リジルがポツリと呟く。

「アウロスさんの人生を掛けた研究も、貴方にかかれば交渉材料の一つ、ですか」

 沈黙しつつも、ミストの足は若干その速度を緩めた。

「それにしても、驚きましたね。このタイミングで切るとは。下準備を全てやらせて、美味しい所だけを、ですか。貴方らしくないですね」

「……何が言いたい?」

「貴方は変わった、と言いたいんですよ。ミスト『教授』」

 幼い顔立ちのまま、芯の通った声で言い放つ。

 ミストはその言葉の最後のアクセントに、あからさまな嫌悪感を示した。

 上司、部下を問わず、他人に対してこのような表情をミストが見せる事は、大学内だったらまずあり得ない事だ。

「私が? 冗談を言うな。変わったのは私以外の全てだ」

 それでも、感情が波打ったり、口調が変わったりする事はない。

 廊下に響く声は、普段通り、淡々と、平坦に紡がれる。

「あの寡黙なジーンが接客業を営み、お前は闇にどっぷりと浸かっている。誰よりも陽気だったグレスですら、もう光の当たる場所にはいない。私だけが、あの頃のままの目標を持ち続けている。その私の何が変わったと言うのだ?」

「彼を見ればわかるんじゃないですか? 良く似ているじゃないですか、昔の貴方と」

「……」

 リジルの指摘に、ミストの声が消える。

 沈黙は鋭さを認める証拠。

 ミストの性質を知るリジルは、間髪入れずに続けた。

「或いは、それが嫌で手放したと思っていたのですが……どうやら少し違うようですね」

 そして、意図的に十分な間を取る。

 音のない世界は空気が水のように揺蕩い、そして重い。

 それを味わい尽くしたリジルが、僅かに眉間に皺を寄せ、心持ち喉に力を込めて、再び口を開いた。

「昔の自分と良く似た少年に凌駕される事を恐れましたか」

 歩みを止めたミストの目が、静かに閉じられる。

 これは、感情を読まれたくない時の彼の癖だった。

「……昔のよしみだ。ここまでなら聞かなかった事にしておいてやる」

「わかりましたよ。これ以上は何も言いません」

 そうなってしまっては、軽口も通用しない。

 リジルは嘆息交じりにそう告げ、一歩先に歩を進めた。

 その後ろで、ミストの視線が宙を彷徨う。

「グレスは……」

「はい?」

「いや。余りコソコソと動き回るなよ」

 答えは言わないまま、ミストは用意された専用の馬車が待つ一階の玄関へと続く階段を下り始めた。

 まだ続く戦いに、身を投じる為に。

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