夏の終わりは秋の前
「あっっっつい!!!」
クーラーが壊れるとはなんとまあベタな展開!
皆様こんにちは、偽物劇場の館長でございます。9月に入って、秋が来たと思ったら残暑激しい今日このごろですねくそが。「暑さが残る」と書いて残暑ですが残りすぎじゃないですかね。現実世界じゃそうなのかしら。
「ルリ〜、氷出して氷…って何これ!?」
偽物劇場の料理人の名前を呼びながら食堂に入った私の目の前には大量の氷柱。いや待て多すぎやしないか、おい。電脳世界を数学とゲームで救う大家族か、おい。
「見ての通り納涼ですよ、クーラー壊れたでしょ」
「出しすぎなんだよなあ!!」
よくよく見れば、死んだ目で氷を突っ込んだ麦茶をグビグビ飲んでいる掃除婦のリリも傍らにいる。そっか、ルリもリリも普段使いしてる衣装が長袖長ズボンだから余計暑いのね。アレンくんも同様の理由で暑いだろうけど、二人だけの空間を邪魔されたくなかったんだろう、呼んでいないらしい。
温度計を見ればその数値は20℃。ムシムシの湿度がなければ長袖を引っ張り出す気温だ。逆に言えばそれほどの湿度がこの空間に漂っていることに他ならないのだけれど。この湿度だと汗かいても乾くか危ういな、湿度計の数値見たくないわ。
「せっかく氷出すなら甘味にしようよ。かき氷つくろかき氷」
「かき氷?」
「そうそう、ガーッと削って、シロップかけるの」
「甘いやつですか!?」
わかりやすくリリの顔がほころぶ。最近水まんじゅうをモッチモッチ食ってた彼女からしたら救いの言葉に聞こえたのかもしれない。この二人が生まれた時代って戦時中だっけ?かき氷あったのかな、氷あってもシロップなさそうだけど。
***
「お、あったあった」
私用スペースの中から、ペンギンの姿を模したかき氷機を引っ張り出す。
口の中で溶けるふわふわのかき氷も悪くないけど、「氷食ってる!」みたいなガリガリのやつも普通に好き。地元のお祭りとかガリガリだよね、祭りの熱気と合わさって最高に美味しい。
シロップはどうしようかしら、冷蔵庫を開けさせてもらった感じ、普通になさそう。はちみつかけて食べるかき氷もあるそうだけど、正直そっち食べるなら普通の食べたい。でも砂糖水だと味気ないんだよなあ…。
「あ」
フルーツ缶みっけ。お汁の部分の甘さが濃いから、十分シロップ代わりになりそう。
そして、実に運の良いことに、つーかタイミングのいいことにアレンくんが入ってきた。これは作者が作れと言っている。後で怒られても知らん、後悔などしない。
「ごしゅじーん…なにしてるんですか」
「アレンくん!ちょうどよかった、小休憩にしようよ。かき氷食べたいねって話をしてたの」
「つまり?」
「作って♪」
「顎で使う気満々じゃないですか。で?どうすればいいんです?」
「なんだかんだノリノリ」
別にアレンくんはノリのいいやつってわけじゃないけれど、私への要件とこの涼しい食堂での小休憩を天秤にかけて見事に所用がすっ飛んだらしい。氷を渡して使い方を教えれば、みるみるうちに氷の切れ端が積み重なっていく。
アレンくんが氷を削っている間に、フルーツ缶をドバーッとザルにあける。フルーツとシロップを分けて、アレンくんが削った氷にフルーツをたっぷりのっけて、シロップどちゃっとかけて出来上がり。まんま缶からかけても良かったんだけど、缶切り使って開けたから切れ端とか怖いしね。
と、まあそんなわけで!
「「「「いただきまーす!」」」」
既に冷えた室内に長時間いたルリとリリのは氷少なめで代わりにフルーツ多め。私とアレンくんはフルーツ少なめな分氷多め。美味しい。
「ソフトクリームもいいけどやっぱ夏はかき氷だよねぇ。アイスはこたつとかでも食べる印象あるけど、かき氷は食べないもん」
「こたつでアイスですか?」
「冬なのに」
「わかってないなあ、冬だからこそ美味しい点もあるのよ」
「冬なら暖炉の前でブランケットかけて本を読んでたいですね」
「一人だけ国違うなあ」
まあアレンくんは元になった(つまり前世の)人が外国だしなあ。バチバチ日本人の私が転生させたのと作者が日本人だからもう中身めちゃくちゃになってる感はあるけど。
「そもそも暖炉ないよ偽物劇場には」
「ちなみにこたつって?」
「腰を下ろして座るタイプの、足の短い机から毛布が垂れてて、内側に熱源があるからあったかいの」
「…?????」
「リリ、アレンが混乱してるから」
私が考え事しながら黙々と食べてる間になんかアレンくん宇宙猫状態になってら、草。
「ちなみにエアコンっていつ直るんですか?」
「私の友人に連絡入れたからすぐ直してくれるハズ」
「それ『また私を業者代わりに扱って…』ってグチグチ言われません??」
※全員かき氷食べ終わって解散後
「なあアレン」
「なんだよルリ」
「そういえばさ」
「うん」
「お前の館長への用件ってなんだったんだよ」
「あっ」