風鈴
チリン
「あれ?いつの間に風鈴つけたの?」
「あ、ご主人も知ってるんですか、あれ。先日ルリが生成ってリリが絵付けして吊るしてましたよ」
「あの二人勝手なことを…まあいいけどさ別に」
チリン、チリン
皆様こんにちは、偽物劇場の館長、代筆者です。最近、偽物劇場も現実世界のように温暖化が進んだのか、それとも単純に夏という季節のせいか、うだるような暑さが続いています。クーラー効いてるしそもそも空想上の冷房なんて温暖化に関係ないからガンガン効かせられるんですが。
チリン、チリン
「風流だね〜、涼しい気分になってくるよ」
「そういうもんですか?」
「そういうもんなの」
チリン、チリン
鐘の部分に描かれた、拙い金魚が空を泳ぐ。空色の短冊が、しかし中空に溶けずに揺蕩っていた。
「綺麗な音色ですね、魔除けか何かですか?」
「え、知らん」
「え」
「夏に涼しくなる風物詩ってことくらいしか知らないよ」
チリン、
アレンくんは風鈴初めてか〜。そっか〜。
チリン、
…言われてみればなんで風鈴ってこんな形なんだろ。夏に軒先に飾る風物詩、夏の季語。でも現実にはぶら下げてる人いないよね。うるさいからかしら。うるさいからだろうな。
チリン
「…涼しくなる、か…俺はどっちかというと物寂しくなりますね」
「あー、そんな感想もありだね」
「なんか、小さい子どもが声を殺して泣いているみたいで」
「そうきたか〜予想の斜め上だな〜〜」
チリン、チリン
「あとはまあ、お金稼ぎに縁がありそうですね、っていう感想くらいしか」
「ああ、音?」
「はい、コインの音に似てるので」
「それだと、本がバサバサいってるだけでも同じじゃない?」
チリン
「え、なんでですか」
「ほら、お札」
「ああ、金額的にはそっちのが上ですね」
「そうそう」
チリン、チリン、チリン
にしてもよく鳴るな〜、この風鈴。偽物劇場の外のマッピングって設定されてなかったはずだけど、風って吹いてるんだっ――
ブオーーーーーーーーーン
チリンッ
「…ルリぃ、リリぃ!!!いくら風鈴鳴らしたいからって、扇風機回すのはまた違うでしょうがああっ!!!!」