はじめましての顔合わせ
「皆さんどうもこんにちは。はじめましての方ははじめまして。この偽物劇場の館長兼ナレーターを務めております、代筆者でございます。
え?今回は台詞にカギかっこが付いているって?えぇそうですとも。ここではナレーターではなく『今』を生きる偽物として話していますからね。
ここでは、この偽物劇場の日常を、ちょくちょく語っていこうと思います。もしかしたら、従業員のトンデモナイ秘密も引っ張り出してくるかもしれませんねぇ。ま、そのあたりは『彼女』の気まぐれですね。
さあ、それでは早速偽物劇場の従業員をご紹介いたしましょう」
そう言うと私は、舞台を降りてホールの入り口に行き、階段を降りて一階へ向かう。
「ここがフロント。入り口から入って真っ先に来る場所です。
入り口を入って真正面に、ほらあそこに受付があるでしょう。あそこで『偽物劇場』の口上を聞く為のチケットを購入してもらうのですよ。今のところ受付は一つだけなのはご愛嬌。なにせレジ打ちをできるのが一人しかいないのですよ、ハイ」
「うーそつくなー」
私がそう言うと、受付に座っている赤髪赤目の男がヤジを飛ばす。
「あ、あいつですか?彼はアレン。偽物劇場での明確な立場はなく、主に私が頼む雑用をしてもらってます。彼は実にいい雑用係ですよ、えぇ」
「ほんとヒデエよご主人、まじで従業員増やしてくれって。ここのレジ打ち全部俺がやるの限界ッスよ」
「やだ♥」
「うわすっげえいい笑顔で断られた。心なしか闇が垣間見えた気が」
「ハッハァアレンく〜ん?私の他人嫌い知ってるでしょぉ。私含めて四人いるだけでも奇跡だよぉ。
……え?あぁ、そうなんです。ここ、偽物劇場は今のところ四人で経営しているんですよ。館長と、掃除婦と、コックと、雑用係。意外と大丈夫ですよ?『彼女』に、『愚者の幻影』みたいな能力もらってますからね。ただ、少し条件はありますが…それはまた今度。
じゃ、アレン君頑張ってね〜♪」
「ほーい」
次に私が向かったのは、“staff only”の看板が掲げられた扉。受付の右隣、入り口から見て右斜め前。
「ここは従業員の控え室。普段、我々はここで寝泊まりしているんですよ。そう、偽物劇場の従業員は、ここに住んでいるんです。他に行く宛もありませんしねえ。
上の階にあるホールが大きいので、十分すぎるほどの広さの部屋と、大きなキッチンやバスルーム、カラオケルームなんてのもあるんですよ。
凄いですよねー、凄まじいですよね。こんなに広くてどうすんだって感じですよね。え?なら従業員増やせばいいじゃないかって?絶対嫌です♪」
「わーまた館長知らないナニカと話してる〜」
そう言いながらキッチンから出てきたのは、見た目十代前半の金髪の男の子。
「彼がコック、偽物劇場の料理長です。名前をルリ」
「ボクのこと無視しないでくださいよ。あとそこ邪魔です」
「あ、ごめんね〜」
「謝る気あります⁇」
「ない☆」
「うん清々しいほど素直ですねとりあえず五万回ほど地獄に落ちてこい(ニッコリ)」
「わー辛辣ー、そしていい笑顔ー」
「どけクソガキ」
「ねえルリ私お客さん案内してんだけど⁇そういう言葉遣いいい加減やめたほうがいいよ」
「ここスタッフオンリーでしょ何連れてきてんですか」
「わあド正論だー」
「反省する気ないでしょとりあえず五億回ほど地獄に落ちてこい」
「増えてない???」
まあそんなルリの相手しつつ次に行きましょー。
この建物は六階建て。一階がフロント、二階から四階がホール。五階に食堂(という名のレストラン)があって、六階がグッズ売り場。
「さて、五階にやってきました。こちらをご覧ください。レジにまたアレン君がいらっしゃるではありませんか」
「どーも、さっきぶりですねご主人。現状理解してるならマジで従業員増やしてください」
「だから却下だっつーの。……おや?不思議そうな顔をしてますね。先程言ったでしょう、我々には能力があるのだと。この程度ならまだ驚くのは早いですよ」
「ゴラアアアアアアア、アレン‼︎‼︎まーたお前皿割っただろ‼︎いい加減慣れろ‼︎‼︎」
どたどたと足音を鳴らして階段を駆け上がってきたのは、ルリと同年代くらいの同じく金髪の少女。
「…リリ、見えてないだろうけど今お客さんいるから。やるならあっちでやれ」
「…チッこのクソガキが(ボソッ)」
「さすがにこの距離は聞こえるからね?」
「あーすまん」
「慣・れ・ろ‼︎いくつ割るつもりなの⁉︎どんだけアタシの仕事増やせば気が済むの⁉︎」
「………えーっと、失礼いたしました。こちらが偽物劇場の掃除婦、リリでございます。ルリもリリも見た目だけは幼いですが、実際には成人済みですのでそのあたりご了承下さい。
これで四人全員、紹介は終わりましたかね。それでは、ホールへ戻りましょう」
ちなみに偽物劇場にはエレベーターもあるんですよ。しかも三つ。凄いですよねー、皆基本階段しか使わないけど。
裏を通り、舞台へ戻る。
「さて、ここが偽物劇場、あれが偽物劇場の従業員達。どうでしたか?楽しんでいただけましたでしょうか。
これから、『彼女』の物語の歯車が止まるその日まで、皆でゆっくりやっていきたいと思っております。どうか温かい目で見ていただけたら嬉しゅうございます。改めまして、これからよろしくお願い致します。
偽物劇場館長、代筆者でございました!」