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27.お姫様との遭遇

 結局、その日の魔法学舎見学はそこでお開きとなった。


 あの錬成魔法の一件の後、リーシェン先生に急な用事が入ってしまったのだ。混乱したリーシェン先生はそのままの状態で学園長の使いだという男性教諭に連れていかれてしまった。ステラは案内の続きを申し出てくれたのだけれど、リーシェン先生がいないのに勝手に行くのもどうかと思って遠慮しておいた。


 そしてお屋敷に返ってきたのだけど。


 「あら、カナタ。久しぶりね」


 帰って早々、玄関ホールでクリスティーナ=フォン=ルーニック王女殿下に出会った。傍らにはグラーフさんと、護衛であろう2人の若い騎士を連れている。


 「ご尊顔を賜り恐悦至極にございます。クリスティーナ王女殿下」


 もちろん、即座に膝をつく。偉い人には怒られたくないし、そうしないとお姫様はともかく隣の人たちが怖そうなんだよね。


 「他人行儀ね。もっと気を楽にしていいのよ。ここは私の屋敷なのだから、多少の無礼は気にしなくていいもの。なんならティナと呼んでもいいのよ?」

 「とんでもございません」

 「頑なね。…ああ、リッタとジークが怖いのかしら。大丈夫よ、この子たちも公の場ならともかくここでのことはとやかく言わないように言ってあるから」


 リッタとジーク…たぶん傍に控えてる騎士の2人ことだと思う。

 片方は厳しい顔つきの若い女性騎士だ。20歳くらいにみえるからクリスティーナ王女殿下より6つほど年上という感じだろうか?金髪をポニーテールで動きやすそうにまとめている。鋭い視線を送ってくる瞳は暗い緑色。髪や瞳の色が近いからもしかしたら王家の血が流れているのかもしれない。鎧はくすみ一つないほどに磨き抜かれており、腰に差す剣もいかにもといった感じのきれいなものだ。

 もう一方はこれまたお堅そうな顔をした男性騎士。年は女性騎士より一回りは上だろうから30ほどだろうか。くすんだ茶髪と同色の静かな目をしている。落ち着いて見えるがその視線はわかりやすく厳しい女性騎士より怖い。「調子に乗って軽挙妄動はおこさぬように」と静かに視線だけで語りかけてくるのだ。


 「そうは言われましても…」

 「そう…なら、仕方ないわね。寂しいからこの前みたいにお膝の上にのっけてお話ししましょうか。ちょうど私もカナタの髪とか触りたかったところだし」

 「さあ、参りましょうかクリスティーナ様!僕に話があるんですよね⁉」


 クリスティーナ王女殿下の発言を遮って立ち上がり、その手を引く。テラスのほうに人の気配があったから多分そこにお茶の準備ができているはずだ。王女殿下が理由もなく僕に話しかけることなんてないだろうからきっと用事があるに違いない。

 なお、手を握ったことで後ろの二人の視線と気配が一気に怖くなったけど気にしない。あの二人を怒らせるよりこの王女殿下に好きに振舞われたほうが僕のダメージは大きいのだから。しれっと爆弾を放り込まれているのだから、これ以上はいけない。


 「うーん、そうね。もう少し親しく呼んでくれたら話す気になるかもしれないわ。あ、なんならお風呂に一緒に入る?その髪と肌、一度でいいから洗ってみたかったの」


 ところがあろうことかこの王女殿下、さらに爆弾を追加投入してこられた!

 え、まって。一緒にお風呂とか何かの冗談ですよね?そうですよね⁉

 そう思ってクリスティーナ王女殿下の目を見るけどその目は恐ろしいことに本気だった。碧の瞳は生き生きとしていて、嗜虐心をブレンドした愉し気な光を宿している。これはあれだ。慌てふためく僕をからかって楽しんでる目だ。そしてたちが悪いことに、実際にそうなったらそうなったで愉しむ気満々だ!


 「~!行きましょう、ティナ様!」

 「ふふふ、そうね。今日のところはこのくらいにしておいてあげようかしら」


 満足げにほほ笑むクリスティーナ王女殿下、いやティナ様。

 でも僕は気が気じゃないです。もう後ろの二人と目を合わせることができない…。

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