26.錬成のおはなし
「な、な…いったいどうやって…!?」
僕が差し出した鉄の短剣を見ながら驚愕するレーニットさん。後ろの方でへたり込んでいた他の人たちも、何事かとこちらに集まってきた。
「か、カナタ様…それって」
「か、カナタくん…それは」
レーニットさんと同じように僕の手元を覗き込むステラとリーシェン先生。みんなの様子に若干怖くなりながらも説明する。
「えっと、ほら。鉄の短剣です。今回は鉄を集めた範囲が狭かったのでこんな小さいのしかできなかったですけど、もっと広い範囲から集めれば大きく――」
「そうではなく!」
おう。レーニットさんがすごい形相で詰め寄ってきた。痩せている、というか運動していないのがまるわかりの不健康な白い顔で詰め寄られると怖い。
「ど、どうやってこれを錬成したんだい!?」
「どうやって…って言われましても。魔力を地面に浸透させて、その範囲内に存在した鉄をかき集めただけです。集めた鉄はきちんと決めて結合させれば形はどうとでもなりますし」
「ど、どういうことかな?」
あれ?うまく伝わってない感じだ。
「鉄は大地が生み出しているんじゃないのかい?」
「そうですけど、それを再現するのは人間には不可能だと思いますよ?時間もエネルギーも膨大な量が必要です」
「そ、そうなの?」
「はい。仮に魔力で実現しようとするなら…見当もつかないですね」
リーシェン先生の言葉に笑いながら返す。鉄はたしか核融合によって生成される元素だったはずだ。詳しくは前世の知識だからうろ覚えだけど、もし仮にそれを人の手で行うならとてつもない労力が必要なのは間違いない。
「だから、鉄は作るんじゃなくて集めました。ほら、鉄って地面には結構どこでも含まれてるものなので、それをこう、魔力で引っ張る感じで」
手で引っ張るジェスチャーをして見せる。
「あとは、それを上手く結合させてやるだけです。手作業なら熱で溶かしたりする必要がありますけど、魔力だと楽でいいですよね」
魔力は思い描けば割と簡単に色々なことが出来てしまう謎エネルギーだ。世界を書き換える、なんて書いてあったくらいだし、操作できる魔力が通ってさえいれば、形を変えたりするくらい造作もない。
「楽って…」
「い、意味が分からない」
けれどリーシェン先生もレーニットさんも頭を抱えてしまった。あれ?そんなに難しいことじゃないはずなんだけど。
「カナタ様、申し訳ないのですが私にも分かるようにもう一度説明していただけませんか?できれば実演も兼ねて頂けるとありがたいのですが…」
ちょっと離れていたステラが僕の手元をのぞき込みながらそう頼んでくる。うーん…そうだなぁ。
「地面から鉄って考えてるから難しいんじゃないのかな?例えば、ほら」
魔力を使って水を生み出し、そこに足元から拾った土を少し放り込む。ちょっとかき混ぜると水は濁って茶色の泥水になる。
「これは水の中に泥が混じってる状態でしょ?」
「そうですね」
「ここから泥だけを取り出すってなると少しは分かりやすくないかな」
言いながら、魔力を使って泥水の中から泥だけを分離して取り出していく。そうすると、やがて泥水は元の綺麗な水と土に分かれた。
「鉄も一緒で、地面っていう大きなものの中に少しの鉄が混じってる状態なんだと考えるんだよ。その地面に魔力を浸透させて、その範囲から鉄だけを抽出する。さっきの水から泥だけを出したみたいに」
「カナタ様はそれをどういったイメージで行っているのですか?」
「うーん…網、かな。鉄だけが引っかかる魔力の網を地面に放って、それを引き上げてくるイメージ。その網には鉄だけが引っかかるから、それを引き上げてくれば手元には鉄だけがある」
「では、鉄を剣の形にしたのはどうやったのですか?」
「それはもっと簡単。こうやって水と同じように形を変えただけだよ」
目の前で先ほど生み出した水を剣の形にしてみせる。
「自分の魔力が通っていれば操作するのは難しいことじゃないからね。細かいことをするのは大変だけど、形を大雑把に変えるくらいは簡単だよ」
さすがに僕も剣を実際に切れるくらい鋭くするのとか研いだような刃にするのは出来ない。けど大体の形にするだけなら簡単だ。
「魔力は物質に浸透させればそれを介していろいろできるから」




