5肩凝りー寝姿:エクソシストー
1時間目の始業のチャイムが鳴る。
今日も肩は重いけど、それが守護霊様とかいうものであり、すぐには治らないものだと知ると、改めて一層肩が凝る。
日本史の教科書は、奇しくも戦国時代の合戦を後世に残す絵を見せつけていた。
だが授業のことなぞ全く頭に入らない。
健やかなる人。これに該当する人は誰だろう。
体力測定の結果がいい人?
いつもポジティブな人?
お弁当の栄養バランスがいい人とかも?
私の知る人でそれっぽいのはー。
色々考えながら、教室の窓側、1番後ろの席からクラスメイトと先生を見渡す。
織田信長を宿してそうな人。。。
「おーい、聞こえてるかぁ?」
はっ、と我に帰る。
「前回の授業の復習問題、次お前だぞ。
1560年、桶狭間の戦いで織田信長に敗れたのは誰でしょうか?」
突然問いただされても困る。
頭になかった状況におろおろしていると、
『今川義元殿です』
そういえばそんな名前を前回の授業で聞いたかもしれない!
守護霊様に言われたように、今川義元です。と答えると
一難去った。
「じゃあ今日最後の復習問題はー」
先生が次の生徒を指さし、名前を呼んだ。
教卓真正面の男子。
しかし、その生徒は無反応だった。
わたしのように考え事をしていたわけではない。
寝ているのだった。
あーあ。
今日も授業が終わるまで持ちこたえられなかった。
帰宅部だから授業後の部活動も、朝早くの練習も無くたくさん眠れるはずなのに。
いつも遅刻ギリギリに来て、授業中はほとんど寝ている。
女の子みたいに内股になって、両手をだらんと下ろしたまま、コテンッとエクソシストみたいに首が後ろに倒れるという、変わった姿勢で眠りに入る。
タチが悪いのは、指摘されると決まって、
僕は寝たくないのに体が勝手に寝てしまうんです、と笑いたくても笑えない言い訳をするところだ。
先生との一連のやりとりをみんながクスクス笑って見ている中、わたし1人が笑っていなかった。
彼を視界の中心に捉えてから、肩が重くて仕方ない。
授業中の悪行に守護霊様もお怒りなのだろうか?
全く穏やかじゃない。
『彼も取り憑かれているやもしれませぬ。
。。某に心当たりがあります。あの寝姿。』
はっ、とした。
考えてみればわたしも同じじゃないか。
肩凝りしたい訳じゃない。けど肩が凝る。
・・・まさか。
終業のベルが鳴る。
確かめるべく、席を立った。
次筆に続く。