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勇者は101人いる(リメイク版)  作者: 酔生夢死
一章 少年、召喚される

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16話 少年、改造される

(´・ω・`)実は完成した1章を、一気に予約投稿しています。

 前書きを考えるのが辛くなってきました……

 ブラックモスに倒された勇樹は、拠点となるテントの中ではなく、ドラグニールの前に転送されていた。


 ゆっくりと目が開き、顔を覗き込むドラグニールの姿を認めた瞬間……勇樹は目を見開いて飛び起きた。


「こんのクソ爺っ!!」


 ――人間、理不尽な事をされれば温和な人間でもキレるのは当然である。

 況してや殆ど説明もなく危険地域に放り込まれ、死んでも生き返るとはいえ何度も辛い思いをした。


 サバイバル生活も楽しくなってきていたとはいえ、最初の怒りをキッチリ清算する為、万感の思いを拳に込めて巨竜姿のドラグニールを殴りつけた。

 勿論、傷ついたのは勇樹の拳の方であった。


 しかし、男には無駄と分かっていてもやらなければいけない事があると、鱗を殴りつけた所為で血だらけになった手を、ドラグニールに治療して貰いながら語ったのだった。




「で、突然テントじゃない所に呼び出されてるけど、これはどういう事なんでしょう?」


『どうもこうも、お主が試練をクリアしたから呼び寄せただけじゃよ』


 ドラグニールの言葉を頭の中で反芻して、意味が分からず眉を寄せて首を傾げた。


『思い出してみるがよい。儂は『七日以内に戦って見せよ』とは言ったが、『勝て』などとは一言も言っておらん。寧ろ、ブラックモスを傷つけるなど大金星じゃな』


「はあぁぁぁ!?」


『最初は挑んだ時点で終わらせるつもりだったんじゃが、何やら本気で倒すつもりでいるようだったんで、そのまま見ていたんじゃよ』


 陽気に笑いながらのたまうドラグニールに、勇樹は最早何かを言う気力すらなかった。

 そこでふと、自分は一度心臓に修復不可能なダメージを受けていて、ドラグニールが修行を終えるまでに代用を見つけておくと言っていた事を思い出した。


「そういえば、代わりの心臓ってどうやって手に入れたんですか? まさか新しい心臓を手に入れる為に、誰かを殺してぶっこ抜くとか嫌ですよ?」


『それは無いから安心せい。丁度良い物を儂の宝物庫の中で見つけてのう』


 そう言って取り出したのは、拳大の黒い水晶のような――宝石だった。


「えーっと、僕の見間違いじゃなかったら、それって鉱物じゃないですか?」


『まあまあ、聞きなさい。これは勇者が退治したドラゴンの“竜の心臓”の欠片じゃ』


 それを聞いた勇樹が「ドラゴンの竜の心臓って意味が被っているなぁ」と内心でくだらない事を考えていると、ソレを持ったドラグニールが説明を続ける。


『竜の心臓というのは、竜種が持つ器官の名称じゃ。人間や魔物が外から魔力を取り込んで使うが、ドラゴンは自らの体に魔力を生成する器官を持っておるんじゃよ。それが第2の心臓と言われとるコレじゃ』


 ドラグニールは竜の心臓を勇樹の前に突き出し、勇樹は思わず手に取ると予想外の感触に驚く。

 手の中の竜の心臓はほんのり温かく、見た目は鉱石なのに僅かに脈動していたのだ。


『今からこれをお主の心臓に移植する。そうすれば、ドラゴンも持つ並はずれた生命力を得て、傷なんぞたちどころに治るじゃろう……多分』


「たぶん!?」


『だが、これを選んだ理由はそれだけじゃないんじゃよ』


 ドラグニールは竜の心臓を勇樹から受け取ると、呪文を呟き魔法陣を展開した。


『正直、勇者ではないお主が一月程度でここまでやるとは思ってもいなかったが、その成長が体にどのような影響を及ぼすかは儂にも分からん……お主がこれからも強くなる為にも、この程度の荒療治が必要だと判断したのじゃ』


 そもそも勇者でない者が一年を修行に費やしても、ここまでレベルが上がる事はない。

 加えてこの世界では、20レベルも行けば一流扱いで、30も上がればベテラン扱いである。


 歴代の勇者ですら、低レベルからモンスターの巣に放り込まれ、死に戻りに任せて修行した者など皆無であった。

 レベル上限や身体の事を持ち出されては、勇樹に反論する余地はなかった。


「うーん……そういう事なら、お願いします……」


 物凄く渋々と言った様子で勇樹は横たわり、ドラグニールの魔法によって深く眠らされた。




「うむ……」


 横たわる勇樹を前にしての老人姿のドラグニールは自分のアゴ髭を撫でていた。

 結果的に施術自体は成功した……ドラグニールの予想を遥かに上回る速さで。


 想定以上に勇樹の身体が竜の心臓に馴染んだのだと予想したが、元々の持ち主を考えると極めて微妙な気分になった。


 勇樹に移植した竜の心臓は、かつて万の下級竜を従えて幾つもの国を滅ぼし、千年前の勇者が他の上級竜の協力も得て、それでも一年も掛かって漸く討伐に成功した上級竜――黒鱗龍ガヴォールの物であった。


 しかも、その黒王竜は死ぬ間際に、最後の悪あがきとして勇者諸共葬ろうと根城であった大火山を噴火させ、その後の勇者を後処理の為に半年も奔走させた。


 結局、燃え尽きた勇者は1ヶ月も自室に篭って休まざるを得なくなり、生きている間に一年も嫌がらせのような被害を巻き散らし、死んだ後も勇者を半年も行動不能にしたという事で、色々な意味で勇者から恐れられた竜族の問題児だった。


 無論、竜の心臓はただの臓器である為、本人の意思が残っていて宿主を支配するなどという事はあり得ないが、人間に竜の心臓が適合するというのが不安要素でしかなかった。




 施術から1日経ち、朝の陽射しが窓から入り込んで勇樹が目を覚ました。

 勇樹が目を開けると、見慣れた竿淵天井が見えた。


 そのまま二度寝したい誘惑を振り切り、勇樹は温い布団から出ると畳んで部屋の隅に置き、枕元に綺麗に畳まれ衣装盆に入っていた自分の服に着替える。

 ふすまの向こうから漂う良い匂いに釣られて開けると、ドラグニールが卓袱台に料理を並べていた。


「ふぁ~……おはようございます」


「うむ、おはよう。ほれ、朝食が出来ているから座りなさい」


「は~い」


 促されるままに座布団の上に座って、箸に手を伸ばした瞬間、色々おかしい事に気が付いた。


「お爺さん……」


「ん? なんじゃ、食べんのか? いかんぞ、好き嫌いは」


「いやいやいや、そうじゃなくて! どこ此処!? 何で和室!? あまりに普通過ぎて一瞬分からなかったよ!」


 思わず畳を叩いて、その畳の感触にさらに驚く。

 ドラグニールが居なければ、元の世界に帰ってきたかもと勘違いするほどに、そこは異世界にはない日本特有の、完璧な和室であった。


「この家は前の勇者が、彼奴(あやつ)が隠れ家として作った庵じゃよ。特に晩年はよくここで過ごして居ったよ」


 ドラグニールは懐かしむように目を細め、勇者が座っていたであろう場所に目をやった。

 その雰囲気に飲まれ、勇樹も座った場所から窓の外に目を向けると、見慣れぬ山脈しか見えなかったが、それがまたどこか日本の風景を彷彿とさせた。


 勇樹にはその勇者が晩年に何を思い、死んで行ったかなど想像もできなかったが、少なくとも、この家をどのような想いで作ったのかは分かるような気がした……


「何せ彼奴(あやつ)は、事あるごとに女性を引っ掛けて来おってのう。浮気がばれて、仲間だった5人の(つがい)から逃げるのに、よくここを逃げ込んでおったわ」


 あくまでわかる気がした、だった。

 ちなみのドラグニールの語ったのは有名な話で、1国につき5人は妾がいたという話が、子供向けではないアレな物語として色々と残されていたりする。


 そんな事を聞かされた勇樹の中で、召喚され異世界に連れて来られた勇者候補を保護する為に駆け回り、竜の砦を作る為に尽力した先代勇者がとんでもない俗物に変わり、何とも言えない気分になった。


 話を切り上げて朝食を食べ終わった頃、ここへ来る直前の事を思い出して、ドラグニールに尋ねた。


「それでお爺さん、僕の身体ってどうなったんですか?」


「ふぉっふぉっふぉっ、そう畏まらんと儂の事は“赤爺”とでも呼んでおくれ。アレも儂の事をそう呼んでおったのでな」


 そう言ってドラグニールは、懐かしそうに目を細めて髭を撫でる。

 本人から了承を得たので、勇樹は座る姿勢を崩すと改めて聞き直す。


「じゃあ早速。赤爺、僕の身体ってどうなったの?」


 勇樹の質問にドラグニールはお茶を一口含み、静かに息を吐いた。


「最初に結果だけ言えば、ほぼ成功じゃよ。“竜の心臓”を何の反発もなく受け入れおったわい」


 お茶を啜りながら、「ただなぁ」と続ける。


「竜の心臓なんぞ人間に移植するのは初めての事じゃから、はっきり言ってこの先に何が起こるかは、儂にも分からん」


「分からんって……そんな無責任な」


「少なくとも、適合はしておるから死ぬ事はない。ちょっと体から鱗が生えてしまうかもしれんだけじゃ」


「随分な問題だよねそれ!?」


「まあ、大丈夫かどうかはステータスを確認してみればわかるじゃろう」


 笑って誤魔化そうとするドラグニールに疑惑の目を向けながら、勇樹は【能力表示(ステータス)】と唱えた。

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

 ユーキ・キサラギ

  AGE:16 SEX:M

  Lv1 HP:6000/6000

  MP:30000/30000 SP:30000/30000

  筋力:1080

  耐久:900

  敏捷:1620

  知力:540

  精神:1440

  運 :5

 属性:無(竜)

 称号:『巻き込まれた一般人』『毛玉に負けた男』『野生児』『愚か者』

    『ストーカー』『ゾンビ』『覚醒者』『魔術士』『味覚死亡』

    『明鏡止水』『皮を食む者』『角ウサギキラー』『覗き魔』

    『模倣する者』『天災に挑む者』『種族:半竜人』

 スキル:《異世界言語》Lv3 《■■■■(未覚醒)》 『竜の心臓』Lv1(0/6)

     《気配遮断》Lv7 《直感》Lv7 《剣術》Lv5 《格闘術》Lv2

     《投擲術》Lv2 《棒術》Lv2 《ナイフ術》Lv1

     《魔力感知》Lv4 《魔力操作》Lv6 《詠唱破棄》Lv3 《魔法全般》Lv‐

     《採取》Lv2 《素材加工》Lv2 《道具作成》Lv2 《解剖術》Lv3

     《猛毒耐性》Lv10☆ 《苦痛耐性》Lv9 《幻惑耐性》Lv4

     《恐慌耐性》Lv4

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 勇樹は一度ステータスを閉じ、自分の目が疲れているのかと目頭を揉み解してから、もう一度開き直す。


 しかし無情にも、そこに書かれていた内容は見直す前と一切変わっていなかった。


「うん……うん? あれ!? レベルが下がっていらっしゃる!?」


「まあ、力の源が大きくなれば、そうなるのう~」


「知ってたの!?」


 思わずドラグニールの方を振り返る。

 ドラグニールはゆっくりお茶を啜って、一息ついてから頷いた。


「そもそも、レベルとはなんだと思う?」


「え、そりゃ……強さの数値?」


 突然の質問に若干面食いながらも、自分の最もそれをイメージするゲームを思い浮かべて答えた。

 ドラグニールは勇樹の答えに軽く頷く。


「強さのう……それもあるじゃろう。じゃが、同じレベルでは人間とドラゴンの強さは同じか?」


「いやいや、それは違うでしょ。そりゃ経験とかで個体差は出るだろうけど、基本的に牙も爪も鱗も翼もない人間に勝ち目がある訳ないじゃん」


「じゃろう? ならば、一体レベルとはどういう基準で測られると思う」


「え、これに基準とかあるの?」


「そりゃあるわ。簡単に言えばレベルとは、体内の魔力効率による『肉体の進化』。この世界の生物には少なからず、体内に魔力を宿している。それは肉体が死ぬ事で抜け出し、倒した者の身体に入り込む。それによって体内の魔力が増加して、肉体を強化するんじゃよ。その強化度こそがレベルの正体、とするのが現在の一般的な説じゃな」


「あ~、一応理屈があったんだ」


「当然じゃ、そんな事を推考する暇人はどこにでもいるんじゃよ。そんなワケで、今のお主のレベルは、人間と竜の間くらいが基準になっておるんじゃよ」


 ドラグニールの言葉に、勇樹が納得したと同時に問題も発生する。

 そもそも竜の砦へ来たのは、勇樹に戦う(すべ)を身に付かせ、レベルを上げて強くするのが目的の筈だった。


 確かにステータス的に言えば、ただの一般人だった時よりも数値が180倍は上がっているが、レベルが1なのは変えようのない事実である。


 しかも、先ほどの話を考えれば、恐らく前と現在ではレベルを『1』上げるのに必要な経験値が倍以上、ステータスを鑑みると180倍になっている可能性がある。

 そうなると一度下がったレベルを、元のレベルまで上げるのは困難である。


 どうした物かと悩んでいる勇樹を尻目に、お茶を飲みきったドラグニールは湯呑を置いて立ち上がった。


「さて、茶もしばいた事じゃし、そろそろ次へ行こうかのう」


「ふえ? 行くってどこへ?」


 予想外のレベルダウンで気の抜けていた勇樹の質問に、ドラグニールはニヤリと笑う。


「修行の第二弾、“竜の里”へじゃよ」


 最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

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