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勇者は101人いる(リメイク版)  作者: 酔生夢死
一章 少年、召喚される

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14/43

14話 少年、ゴブリンリッターリベンジ

(´・ω・`)“魔法”の設定には悩みます。

 呪文が必要だったり、イメージだったり、他の要因だったりと作品によって扱いが様々なので、気を付けないと設定がぶれそうです。

 魔法を練習しながら角ウサギでレベルを上げた事で、勇樹のサバイバル生活は劇的な変化を遂げた。


 まずは『土属性魔法』、色々な工程を飛ばして粘土を炻器(せっき)のように固める事が出来るようになり、容器や道具の幅が一気に広がった。

 特に(かめ)などの容器や簡単な調理器具、しっかりした(かまど)が作れるようになったのは勇樹のサバイバル生活に劇的な変化をもたらす。


 次が『水属性魔法』、魔力(MP)さえあれば何時でも好きな量が出せるようになり、飲み水や生活用水に不自由しなくなった。

 加えて土魔法で作った水瓶に貯水も出来るので、魔法の練習と併せて水を溜めれば魔力の消費も抑えられる。


 そして『火属性魔法』と『風属性魔法』は戦闘や調理するのに重宝した。

 調味料は香草か木の実しか無いものの火を通した物を食べられる事は、荒み始めていた勇樹の心を大きく感動させる。

 その中で火を起こす場合には火魔法で火力を上げるよりも風魔法で風を送った方が魔力消費も少なくて済む事が判明し、併用する事で順調にスキルを伸ばしていく。


 戦闘では飛び掛かって来る角ウサギの顔面に下級攻撃魔法をぶつける事で、ダメージは与えられないが一瞬だけ怯ませてトドメを剣で刺すというスタイルが出来るようになる。

 さらにイメージ次第で閃光のような爆発を起こしたり、【風槌(エアハンマー)】のように風塊を叩きつける事も可能となった。


 そうして味覚を生贄に捧げて日常的に魔法を使う事で経験値がガンガン溜まり、気が付けば魔法スキル関連が軒並み熟練()レベルまで上がっていた。


 ただし、薬草で魔力が回復できても出力自体は変わらないので、上位モンスターを倒せるような強力な魔法は使えず、小手先の技を覚えるのに留まっている。




 勇樹が魔法をドラグニールから習う中で、この世界の魔法が「覚えやすい」事に気が付く。

 初めに《魔力感知》を覚えていた事もあるが、決められた呪文を覚える必要はなく、魔法陣や術式を魔法媒体に刻む必要もない。


 必要なのは『魔法を使うイメージ』とそれを補強する為の『言葉』、そして魔力をソレらに落とし込む為のスイッチとなる『術式名(キーワード)』であり、ゲームやマンガなど映像で魔法に慣れ親しんでいる勇樹にとっては音声入力並みの手軽さであった。


 魔法の扱いにも慣れてきて、レベルもそこそこ上がって来た頃、勇樹は更なる壁にぶち当たっていた。

 それは近接格闘戦に関するスキルが一向に上がらないという事だった。


 何故かといえば、ゴブリンリッターから剣を奪った勇樹であったが、真面に真剣など触った事のない勇樹では精々金属棒のように叩きつける事しかできず、“剣”としての扱いが出来ていなかった為である。


 そこで勇樹が見本としたのは……ゴブリンリッターだった。


 大体の動きは既にストーキングしていた時に脳裏に焼き付いている。

 細かな所は観察で修正しながら、脳内でイメージトレーニングを積み重ねて行く。


 剣の握り方から構え方、剣の振り方や足の運びまであらゆる動作を何十匹も観察を重ね、個々の癖などは取り除いて模倣し続けた。


 たったそれだけで勇樹はスキルの補助も得て、通常ではありえない速度で成長し続けた。

 そして、サバイバル生活は18日目に突入する。




 サバイバル生活18日目……

 勇樹が異世界に来てから2週間と少しが経過した。

 ここまで特訓を重ね、砦内で底辺のモンスターを相手にしている内に、勇樹のステータスは以前とは比べ物にならないほど大幅に成長を遂げた。


― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―

 ユーキ・キサラギ

  AGE:16 SEX:M

  Lv83 HP:7370/7370

  MP:4450/4450 SP:4450/4450

  筋力:876

  耐久:875

  敏捷:879

  知力:873

  精神:878

  運 :5

  属性:なし

 称号:『巻き込まれた一般人』『毛玉に負けた男』『野生児』『愚か者』

    『ストーカー』『ゾンビ』『覚醒者』『魔術士』『味覚死亡』

    『明鏡止水』『皮を食む者』『角ウサギキラー』『覗き魔』

『模倣する者』

 スキル:《異世界言語》Lv3 《■■■■(未覚醒)》

     《気配遮断》Lv7 《直感》Lv7 《剣術》Lv5 《格闘術》Lv2

     《投擲術》Lv2 《棒術》Lv2 《ナイフ術》Lv1

     《魔力感知》Lv4 《魔力操作》Lv5 《詠唱破棄》Lv3

     《基礎属性魔法》Lv6 《生活魔法》Lv3 《補助魔法》Lv3

     《採取》Lv2 《素材加工》Lv2 《道具作成》Lv2 《解剖術》Lv3

     《猛毒耐性》Lv10☆ 《苦痛耐性》Lv7 《幻惑耐性》Lv4

     《恐慌耐性》Lv3

― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ― ―


 RPG的な『スキル』というシステムに、空気中の魔力が豊富な竜の砦という環境が後押しとなって、勇樹のステータスは現状で召喚された誰よりも高くなっていた。

 そして、この頃になると死に戻る事も無くなってきた勇樹は、漸く次のステップへと進む事を決めていた。




 まだ夜も明けきらない早朝、岸壁から流れる湧水の音とさざめく木々の擦れる音のみが全ての水辺の傍、勇樹は待つようにただ目を閉じて佇んでブツブツと何かを呟いていた。


「【先鋭斬撃強化(シャープエッジ)】、【打撃強化・重ヘビィストロングポイント】、【防御強化・堅(ハードプロテクション)】、モシャ、【五重・上位強化付与クインティプル・ハイエンチャント】、【炎属性攻撃付与(ファイアエンチャント)】、【雷属性攻撃付与(サンダーエンチャント)】、モシャ、【自動回復(オートリカバリー)】……」


 勇樹が呟いていたのは『強化魔法』、自身に様々な魔法効果を付与する魔法だった。

 3つほど唱えて魔力(MP)が切れる度に魔力回復の薬草を口に詰め込み、次を唱えて行く。


 暫くするとガサガサと茂みを掻き分ける音が聞こえ始め、近づいてきたソレは勇樹の姿を見た瞬間に声を上げた。


「ギャギャギャ!」


「来たか」


 待ち合わせ相手が着たかのような気軽さで、薄らと魔力光を放っている刃毀れの酷い剣を構えながら、樹は近づいてきた――ゴブリンリッター3匹に向かって小さく笑みを浮かべる。

 ゴブリン達もまた何度も死に戻ってくる勇樹の顔を覚えており、その姿を認めた瞬間にて笑い出す。


「待っていたよ……さぁ、始めようか!」


「グギャギャ、グギャ!」


 勇樹が剣を構えた事で、何かを感じたゴブリンリッターは自然と武器を構えて警戒して囲い込む様に横に広がった。




 現在、勇樹はゴブリンリッターの剣と角ウサギの皮を重ねて作った胸当て、手足にゴブリンリッターの手甲と脛当てを身に着けていた。

 これは先日、偶然一匹だけで居たゴブリンリッターを倒して得た戦備品である。


 まず大収穫だったのは新しい剣だった。

 真面な刃物が無い勇樹は剣を便利に色々な事に使用していたので、真面な手入れも出来ない環境ではすぐにボロボロになり、とうとう戦っている最中にポキリと折れてしまっていた。


 新たな替えが出来た事に喜びついでに、鎧の方も使おうと考えたが体のサイズが合わず、臭いも酷かったので辛うじて装着できそうな手甲と脛当てだけに留めた。


 そして、ドラグニールから基本的な物を幾つか学び、そこから勇樹が改造して作り上げた強化魔法が21種類。

 全て見ていたドラグニールからは「軍隊でも相手にするつもりか?」という評価を貰っている。




 勇樹は剣を肩に担ぐように構えると一瞬、ゴブリンリッターたちの視界から消え去った。

 一匹が反射的に足元に視線を移動させると、笑みを浮かべる勇樹と目が合う。


 そして次の瞬間、ガラスが割れるような音と共に中央にいたゴブリンは袈裟切りに斬り倒された。


「先ずは一匹」


 勇樹は冷静に斬り倒したゴブリンの息が切れている事を見届ける。


「グギャギャ!」


「グギャァ!」


 仲間が倒された事で他の2匹も警戒心を強め、勇樹を『獲物』から『敵』へと認識を改めた。

 が、今日まで鍛え上げた《気配遮断》スキルを全開にした勇樹が、その切り替える意識の隙間にスルリと入り込む。


 そのゴブリンが気付いた時には、勇樹は剣を振り上げながら高く跳び上がって躍り掛かっていた。

 力は劣るが体格で勝る勇樹が剣の重さを利用して、鎧でも叩き割れる一撃を斧のように振り下ろしてくるのを、ゴブリンリッターは寸でのところで受け止める。


 レベルが『83』まで上がった勇樹であったが、これでもまだ砦内では底辺の角ウサギの次くらいのレベルでしかなく、その上は『100』を超えている

 現に目の前のゴブリンリッターの平均レベルは『130』、勇樹のレベルを大幅に上回っていた。


 一度受け止められてしまうと、純粋な力比べではレベルでは劣る勇樹が不利になる。

 その事を悟ったゴブリンリッターはニヤリと笑みを浮かべて勇樹を押し切ろうと、握る手に力を込めた。


 背後からも仲間も迫って来て絶体絶命……と思われた次の瞬間、勇樹は不意に肘の力を抜くと、相手の剣を上へ滑らせるように剣を引き、潜る様にして相手の懐へ入り込む。


 突然の勇樹の行動に思わず前のめりになってしまったゴブリンへ、勇樹は秘密兵器である左手に隠し持っていた薬包の中身を、思いっきりゴブリンリッターの顔にぶちまけた。

 中から赤い粉が撒き散らされ、それがゴブリンリッターの粘膜に触れた途端に顔中に激痛が走り思わず悲鳴を上げて倒れ込む。


「グギャァ!?」


 勇樹がぶちまけた赤い粉の正体、それはカプサンの種を乾かして粉末にした物だった。

 うっかり食べてしまった後も、少量を香辛料として使っていた勇樹が他にも使い道があるのではないかと思い出したのが防犯用催涙スプレーである。


 辛味とは粘膜への刺激であり、地球でも唐辛子が防犯用スプレーなどに使われているように、特に粘膜に触れると強烈な激痛が走る。

 そんな物を顔面に受け、目と鼻と口に入り込んでしまったゴブリンリッターは勇樹を気にして居られるような余裕は皆無だった。


 倒れ込んだゴブリンなど気にも留めず、勇樹は前へと転がり込んだ。

 その直後にゴブリンリッターの剣が、勇樹の居た空間を白閃が横切る。


「グギギッ!」


「ちっ!」


 追撃で振られる剣を勇樹は紙一重で回避するも、ここに来て勇樹の動きが途端に悪くなる。

 《気配遮断》を使い、油断の隙を突いて不意打ちで倒した前の2匹と違い、完全に意識を向けられている状態では先ほどのような戦いは不可能である。

 なので勇樹は、剣を正眼に構えてゴブリンを見据えた。


 しかし、素人丸出しの構えはあっさりとブラフだと見抜かれ、喜々として剣を振り上げて勇樹に襲い掛かった瞬間、2つ目の隠し玉を披露する。


「【遅延魔法(ディレイトマジック)解放(リリース)】、【閃光(フラッシュ)】!」


「ギギャァ!?」


 勇樹が叫んだ瞬間、剣先から目を焼きそうなほどの光が弾けた。

 見逃さないように勇樹に集中(・・)していたゴブリンは、予想外の魔法に目が潰れて屈み込み、勇樹の前に無防備を晒す。

 差し出されるように晒される首に向かって、勇樹は剣を突き立てた。


「2体目!」


 完全に刺さったままの剣を回収しないまま、未だ粘膜の痛みから復帰できていない最後の1体に向かう。


「これでラスト!」


 目の前のゴブリンリッターが落とした剣を拾い上げ、悶えて倒れている所を音もなく近づき、首に剣を突き立てた。




 頭の中で『ピロロロン♪』という気の抜けたレベルアップ音が聞こえたのでステータスを確認しようとしたところに、ドラグニールの念話が入った。


『ふぉっふぉっふぉっ、どうやら順調に強くなっている様じゃの』


「ええ、お陰様で。もう数えきれないくらい死にましたけど」


『儂にそんな口が利ければ上等じゃわい。ふむ、では儂から一つお題を出そう』


「お題?」


『レベル『250』オーバーの砦内の獣王、先日にお主を串刺しにしたブラックモスと、七日以内に戦ってみせるのじゃ』


 無理難題どころではない無茶を言い渡された。


 最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

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