13話 少年、剣と魔法と特訓と
(´・ω・`)旧版では主人公が魔法を習得したり、戦う描写が少なかったので増やしてみました。
勇樹がゴブリンリッターから剣を奪い取った翌日。
早速、その成果を確かめるべく角ウサギと対峙していた。
『シャァァッ!』
「フンッ!」
未だに1レベルである勇樹を舐めきって襲い掛かってきた角ウサギに対し、叩き落とすように剣を降り下ろす
技術もへったくれもない、ただ剣の重みに任せただけの粗末な大振りではあったが、体当たりしてきた角ウサギの方から、まるで吸い込まれるように剣に当る。
僅かに竹を折った様な嫌な感触が剣を通して伝わり、降り下ろした剣の勢いは止まらず角ウサギを地面に叩きつける。
しかし、それだけでは絶命には至れず、瀕死の状態の角ウサギへ躊躇なく剣を突き立てた。
「た、倒せてしまった……」
血の臭いが充満する中で、初めてのモンスター討伐の感動と命のやり取りをした緊張で心臓が激しく高鳴る。
すると、頭の中で『ピロロロン♪』というゲームで散々聞いたような音がした。
何事かと慌てて角ウサギの血抜きを済ませ、拠点に戻ってドラグニールに聞いてみるとあっさりと回答が出た。
『いや、それはレベルが上がった音じゃろう』
「レベルって……そんなゲームじゃあるまいし」
『寝惚けた事を言っていないで、さっさとステータスで確認せんか』
そこで漸く能力表示魔法の事を思い出して、勇樹は「ステータス」と呟いた。
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ユーキ・キサラギ
AGE:16 SEX:M
Lv20 HP:1070/1070
MP:670/670 SP:590/670
筋力:120
耐久:119
敏捷:123
知力:117
精神:122
運 :5
属性:なし
称号:『巻き込まれた一般人』『毛玉に負けた男』『野生児』『愚か者』
『ストーカー』『ゾンビ』『覚醒者』
スキル:《異世界言語》Lv3 《■■■■(未覚醒)》
《気配遮断》Lv5 《直感》Lv2 《剣術》Lv1
《魔力操作》Lv2 《採取》Lv2 《道具作成》Lv1
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「おお、レベルが凄い上がってる!」
普通に生活するだけでも過酷な中で、角ウサギを倒した事を切っ掛けに一気に勇樹のレベルを爆発的に押し上げられていた。
副次効果としてスキルも幾つか増えていて、既に覚えていた物もレベルが上がっている。
お陰でたった1レベルだった勇樹が、たった一匹倒しただけで一般的な冒険者のレベルに達していた。
だが、ここで自由に生きて行けるレベルかといえば、答えは否である。
今まで勇樹がここで遭遇したモンスターは、今の勇樹よりも遥かにレベルが高い。
この場所で生き残る為、そしてこの世界で生きて行く為に手段は選んでいられない。
強くなる為ならば使える物は全部使って行かなければ生きて行けないと、勇樹は角ウサギから学んでいた。
「というワケで、魔法を使ってみたいので教えてください!」
勇樹は早速、ドラグニールに自分の欲望も混じったお願いを言い出した。
ドラグニールの方も日がな一日、勇樹を監督するだけの簡単な仕事で暇を持て余していたので、戸惑いながらもそれに応じる。
『それくらいなら構わんが……儂は人族の扱う魔法など基礎程度にしか知らんのじゃが、それでも良いか?』
「良いも何も、基礎のキの字も分からない人間にしてみれば、それだけでも十分ありがたいです。火を起こすのは何とかできるけど、テントに火は持ち込めないから灯りとか何とかできると嬉しいです!」
『ではまず、試しに生活魔法の【点火】を使ってみるんじゃ。前の勇者曰く、“らいたぁ”とかいう物を指先に点すイメージでやると上手く行くらしいぞ』
勇樹は目を閉じてドラグニールの助言通りに、ピンッと伸ばした人差し指の先にライターのように火を点けるイメージを行う。
指先から可燃性のガスが細く出て、それに向かって火打ち石で火花を飛ばすイメージをしながらゆっくりと口を開く。
「……【点火】」
バチッと小さな火花が指先で散った瞬間……指先から火柱が吹き出した。
「ばぁなぁ!?」
『おお、一発で成功させおったか。まあ、ちと勢いは強すぎるが十二分に成功と言えるじゃろうて』
「そんなことより! これの止め方教えてくれませんか!? 勢いが強すぎて引火が怖いんですけど!?」
『まずは落ち着け。意識をゆっくりと集中させて、今度は“らいたぁ”の火を弱めるイメージをするんじゃ。炎へ供給されておる魔力を減らしていけば、自ずと炎は消える。まずは集中じゃ』
「しゅ、集中……」
ゴーッとガスバーナーのように指から音を立てて吹き出る炎を前に、勇樹は興奮した息を落ち着けながら再び目を閉じて、先ほどと同じようにライターとそこに着いた火をイメージする。
そこから徐々に火を弱めるイメージで、指から噴き出る火を押し留めて行く。
完全に鎮火したところで勇樹は呆然としながら、自分の指先を見つめていた。
あまりの反応の無さに、幾多の異世界よりの来訪者を見て来たドラグニールには、次にくる反応が容易に予想できる為、勇樹が話し出すまで口を噤んだ。
やがて飛んでいた意識が戻ってきた勇樹は、うわ言のように何かを呟き出した。
「ま……ま……ま…………まっ、魔法だぁ! 古くは神ならざる者たちと契約する事で成される神秘に彩られた秘術にして奥義! 古今東西の物語に登場し、現実にも様々な研究がなされながらも、決して現実には触れる事の出来なかった秘法が今ここで! この僕の手の中で! 僕自身が使う事が出来たよ! 感動、感激、大喝采!!」
『あー、うむ、ここまで大袈裟な者は居らんかったが、異世界人は大概同じ反応をするもんじゃのう』
「当たり前じゃないですか! 僕ぐらいの世代はみんな娯楽作品で魔法という単語を、見ない時はないと言っても過言ではないんですよ! 科学とは違う、自分の身一つで現象を起こせる奇跡に憧れを持っていた身として、これに感動せずには居られるワケがない! こっちに来て何時かはと思っていた魔法を……僕は使ったぞー!」
ドラグニールは勇樹が落ち着くのを暫く待っていると、興奮冷めやらぬ勇樹から次なる疑問が飛んできた。
「それで、この魔法はどんな原理で発動するんです!? 今、僕は火を点けるイメージと魔法名らしき【点火】という言葉しか呟いていませんでしたけど、この世界の魔法は皆このような感じで使えるんですか!? 詠唱は? 形式的な呪文とかはあるんですか? 属性とかの分類はどんな風になっていて、僕が使った魔法はどのようなジャンルに分けられるんでしょうか!?」
『う、うむ、一つずつ答えてやるから、少し落ち着け……』
矢の雨のように降り注ぐ勇樹の質問にタジタジになりながら、ドラグニールは質問に一つずつ答えていく。
ドラグニールを質問攻めした甲斐もあって、終わった頃には《魔力感知》と《火属性魔法》スキルが勇樹のステータスに加わっていた。
魔法スキルを手に入れた勇樹はドラグニールの助言を受けながら、思い付いた魔法を魔力の限りに使い続けた。
しかし、魔力量がそんなに多くない勇樹は、魔法を数回使っただけで魔力切れを起こしてしまう。
そこで竜の砦内に生えている、齧るだけでも魔力が回復する最上級の薬草を口一杯に詰めながら魔法スキルを磨いた。
この世の物とは思えない途轍もない味の薬草で味覚を殺しながら、拒絶する体を捻じ伏せて何度も咀嚼して飲み込み、常人ではありえない量の試行を繰り返す。
その甲斐もあって《水属性魔法》《風属性魔法》《土属性魔法》《生活魔法》《補助魔法》等々……様々な魔法スキルを覚える事に成功する。
複数のスキルを覚えた所為か、途中から各属性魔法スキルが《属性魔法》に統合されて一人前レベルまで上がっていた。
レベルが上がり、魔法を覚えて順調に強くなった……と思いきや、一つ問題が発生した。
角ウサギが問題なく倒せるようになると、肝心な角ウサギが全く姿を見せなくなったのである。
漸く見つけた角ウサギも、攻撃に入ろうと剣を握ると、すぐに気配を察知して姿を隠して逃げられてしまう。
それを何度か繰り返したのち、勇樹はある結論に至る。
――『攻撃の気配でばれるなら、それすらも消してしまえばいいじゃない』と。
《気配遮断》を維持しながら攻撃するというのは、水たまりの上を波紋も立てずに動こうとしているようなもので、攻撃に入ろうとすれば簡単に解けてしまう。
普通に歩くだけでは解除されないので、勇樹はそこの差異を必死に探った。
そうして何度も繰り返している内に、『何かへ意識を向ける』という行為が《気配遮断》スキルを解除させる事が判明した。
しかし、呼吸をするように剣を振るなどという、達人のような芸当など出来る筈もなく、勇樹は考え方を変えた。
何か方法がないかと考えていると……薬草採取している時には、《気配遮断》スキルが解除されない事に気付く。
どちらも『何かに意識を向けて行動する』という点では変わらない筈と、そこからの勇樹はガラリと変わった。
蟻一匹を潰すのに、殺気を込める者はいない。
路傍の石を蹴るのに、全身全霊を賭ける者などいない。
歩くような自然さは無理でも、顔の前の木の葉を払うような気軽さで、無警戒に草を食んでいた角ウサギを両断する事に成功する。
この手法に成功すると、《剣術》スキルと何故か《直感》スキルが上がっていた。
一度、コツを掴んだように苦労しなくなり、スキルアップとレベルアップを行う為に、魔法スキルや《気配遮断》を駆使して角ウサギを狩って回る。
お陰で勇樹の手元に新たに『角ウサギの肉』と『角ウサギの皮』、それに『角ウサギの骨』を『角ウサギの腱』が手に入った。
勇樹は慣れた手つきで角ウサギを解体すると……皮をひたすら棍棒で叩き始めた。
祖父の家にいた頃、祖父たちが山で捕ってきた鹿などの解体を手伝わされて覚えた知識とネットで見た情報をフル活用して、現状でもできる鞣し方で皮を加工する。
皮が解れて来たところで今度は川の水で軽く洗ってひたすら噛んだ。
勇樹も原理は知らないが、口一杯に唾液を貯めながら無心で角ウサギの皮をもしゃもしゃと噛む事で皮がしなり、乾燥しても割れるのを防げるという事を聞きかじっていた。
無心で皮を噛み続け、全てが終わる頃には《素材加工》と《道具作成》スキルが新たに加わっていた。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。




