10話 少年、勇者について聞かされる
(´・ω・`)今、明かされる裏話!
実はこの『勇者は101人いる』は主人公と100人の勇者を、同時進行くらいで進める予定でした。
今はもう諦めてます。
『まあ、隠していてもしょうがないので言ってしまうが、儂の予想では恐らく城にいた勇者は3か月後に魔王が目覚めれば半分くらいに減っておる筈じゃ』
「……は?」
随分とあっさりとした口調で言われ、一瞬勇樹は何を言われたか理解できなかった。
――3カ月後ニ魔王ガ目覚メレバ半分クライニ減ル?
「ど、どういう事!?」
『それについては、まずは『勇者』という称号の説明からしよう。アレはその称号を持つ者に勇気を与え、ステータスを強化し、常人の何倍もの速度でレベルが上がり、固有能力を1つ持たせるという物なんじゃが、一つ欠点がある』
「欠点?」
メリットの部分だけを切り抜けば、完全にゲーム世界の勇者である。
そんなチート能力がある彼らが、何故3ヶ月で半分にまで減ってしまうのか。
『それはな、勇者同士は共闘が出来ないんじゃ。詳しく言えば、勇者同士が近くにいると称号の効果が反発し合ってレベルが上がらなく無くなるのじゃ』
「レベルが?」
『ある程度レベルが上がった者同士ならば、それでも問題ないじゃろう。しかし、彼らは召喚されてきたばかりで恐らく皆レベルは一桁なのであろう?』
ここで勇樹も漸く意味が理解できた。
彼らは全員が学生であり、恐らく戦う経験のある者など片手で数えられる程度しかいない筈である。
そんな人物でもこの世界では精々が5レベル程度で、冒険者で言えばEランクがやっとというところである。
そして、彼らの現状はゲームで言えば次の街へ向かう前にスタート地の城周辺でレベリングしている状態であり、寧ろ期限とリソースが限られていて人数制限まである。
勿論、クリア前提のRPGとは違い、エルクレア周辺に生息するモンスターはレベルにバラつきがある上に生息数も限られているので、人によって狩るペースにも差が出るのは必至。
そんな条件で魔王が復活するまでの3ヶ月以内に勇者として戦えるようになるなど、どう考えても不可能だった。
「それは確かなんですか?」
『残念ながら確かじゃよ。何せこれは勇者本人からの情報じゃ』
つまり、その前の勇者は現状の勇者たち程ではないにしろ、似たような状況でそれだけの検証を積み重ねたという事を意味していた。
愕然とする勇樹を気にせず、ドラグニールは話を続けた。
『そこで奴は考えた。権力者の目が届かず、もっと安全にレベルを上げると同時に戦いの厳しさを知る方法はないかと』
「それが……ここ?」
正直、何処が安全なのか勇樹には理解できなかった。
『ここは魔力が満ちておるから、魔力を上げるのにはうってつけじゃ。そこへ弱いモンスターを放って戦わせれば良い……と、その時は思ったんじゃがのう~』
ドラグニールの言い回しに最初は首を傾げたが、この場所の条件と存在理由、そして今の話を総合するとある結論に至った。
「まさか、放ったモンスター同士が戦いあってレベルを上げた結果。ここに居るのが上級種ばっかりになったとか言いませんよね?」
勇樹が思い当たったのは蠱毒という呪術。
壺の中に蛇やカエルや百足などの様々な虫を入れて食い合わせ、最後に残った生命力の強い虫で呪いを掛けるという呪い方である。
つまり、この竜の砦でも同じような現象が発生して、最後の一匹になるまではいかなかったが魔物たちが必死に生き残った結果、レベルが上がり固有種になるまで進化した可能性に思い至る。
勇樹は気付いていなかったが、この場所は龍脈の上にある為に空気中の魔力含有量が通常の数倍も濃い。
弱いモンスターは居るだけで魔力が活性化して、通常よりも早くレベルが上がって行くのも原因の一つであった。
『ふぉっふぉっふぉっ、ホント参ったの~』
「ホント何やってんの!?」
勇者を育てる為の場所が、固有種だらけの隠しダンジョンになってしまっては本末転倒だった。
さらに言えば、ここにいる固有種の殆どが冒険者協会だと討伐ランクB~Aの強者ばかりなのである。
追記すると、討伐ランクBを倒そうとするならば国の軍が出撃するレベルに相当する。
『いやの~、そうなっているのに気が付いたのはつい二百年ほどだったんで、見逃してしもうたんじゃ。スマン、スマン』
ついうっかりといった様子でドラグニールは軽く謝る。
そもそも長寿の所為で色々と気の長いドラゴンに管理を任せた事が、前の勇者の最大のミスだった。
「スマンじゃないですよ。スマンじゃあ……」
『まあ、そこにいるだけでも魔力が活性化してレベルは上がるじゃろうて、暫くしたら別メニューも考えておるから安心せい』
つまり、それまではどう足掻いても、ここでサバイバル生活を送らなければならないという宣言だった。
勇樹は漏れ出しそうだった溜息を、水筒を煽って水と一緒に飲み込んだ。
まだ日も高い事もあって、勇樹はマギフォンを使って拠点周辺の植物を調べて、食べられる物を探し始めた。
開始して数分で勇樹は木に絡まっていた、ある蔦の葉っぱを見て立ち止まっていた。
「似てる……あの時に教わった食べられる野草と……でも異世界だし、全く同じとは限らない……一応、確かめてみよう」
鬱蒼と茂る草に紛れていて、葉っぱの形やビー玉ほどの実が付いているなど細かい所に違いはあったが、祖父の家の裏山で祖父の友人がスコップ片手に得意げに語っていた事を思い出した。
勇樹は朧気な記憶を頼りに尖った石や木の棒を使って、蔦の根元を掘り始める。
この植物の可食部は根っこであり、その根は長く真っ直ぐに地中に伸びているのが特徴で……簡単に言えば掘り出すのが物凄く面倒臭いのだ。
傷つけないように注意しながら無言のまま粘り強く、1時間近く掘り続けた結果、穴は勇樹の腰ほどまで深くなり漸く根っこがその全容を現した。
「よし、あともう少し!」
棒で根っこの周りを慎重に崩すと、間もなく真っ直ぐ綺麗な根っこを手に入れる事が出来た。
軽く土を払ってみると、想像通りの物が現れた。
「よっし! やっぱりそうだった!」
勇樹が一生懸命に掘っていたのは山芋に似た植物であった。
早速、根っこに付いた土を叩き落とすと持って来ていた水筒で軽く洗って、そのまま噛り付いた。
食感は勇樹が祖父の家で食べていた物よりも粘り気が強く、思った以上に固い上に泥臭かったが、それよりも空腹が勝りあっという間に一本を平らげてしまう。
そして、3日ぶりに満足感で一息ついた勇樹は、妙に熱り出し体に力が漲り出したので、その勢いのままに食糧となりそうな植物を片っ端から集めた。
次に水を確保する為に、竹モドキ水筒を量産して泉へと向かう。
ただし、調子に乗って作り過ぎた為に、肩から掛けた拍子に水筒がぶつかり合って鳴子のような音が出た。
「しまった……数が少ない時は音が鳴らないように抱えて持ってたけど、水が入ってると重たくで抱えられない……」
目算で1本が約三百ml、頻繁に来られないと考えて6本ほど用意していた物にほぼ満杯まで水を入れた。
つまり、三百ml×6本=千八百g=1.8kgとなり、加えて水筒の重さもあるので約2.5kg……素人が隠れながら持ち歩くには難しい量である。
その上、重たくなった所為で纏めて縛っておく事が困難になり、一本一本を腰から下げて鳴子の様にガラガラと音を鳴らして歩くぐらいしか思いつかない。
「袋とかがあれば、もう少し楽に持ち運べたかもしれないけど、動物の皮か……ウサギの皮でも捕れたらなぁ」
ない物ねだりをしていても仕方ないので、手近な木に絡んでいた蔦を数本切り取って、纏めて紐のように縒り合わせると、それで水筒を並べて縛ってから担いで行く事にした。
その帰り道、勇樹は草むらの中で文字通り息を殺して、目の前にいる相手の一挙手一投足に細心の注意を払っていた。
昨日の大物との遭遇、久々の満腹感、そして嵩張る水筒を持って移動していた所為か、勇樹は疲労で気が緩み注意力も散漫になっていた。
それを発見して気が付いた時には逃げられる状態ではなく、咄嗟に茂みに隠れる事しかできず、気付けば周囲をモンスターの群れに囲まれていた。
それは鼻を鷲の嘴のような形をしていて、耳は人間に近いが少し尖っていて、肌は深い緑色をしている。
背丈は150cm程度、全身を騎士甲冑で纏ったこの森固有の進化を遂げたゴブリンの騎士――ゴブリンリッターと呼ばれる種族であった。
その一番の特徴は身に纏った魔鉄の鎧と剣であり、その戦闘力は人間の上級騎士にも勝る実力を持つ。
息を潜め何とか逃げる機会を窺うが5体ほどが勇樹のいる所を囲うような位置にいる為、飛び出した瞬間に袋叩きに合うのが目に見えている。
「!?」
それを躱せたのは全くの偶然だった。
背後からの小さな音と共に背筋が寒くなり、咄嗟に茂みから飛び出した結果、後ろから狙っていたゴブリンリッターの攻撃を回避できた。
だが、そこまでだった。
なりふり構わず飛び出した為にバランスが崩れ、脇から蹴りを食らって吹き飛ばされ、地面に転がると今度は腹をボールの様に蹴り飛ばされた。
木に背中を打ち付けて地面に落ち、強く打ちつけた為に痛みで動けなくなる。
呻いている勇樹を見てゴブリンリッターはニヤリと笑いながら剣を抜く。
抜かれた剣の刃が鈍く光り、高く振り上げられた後、勇樹の首に向かって振り下ろされた。
丸い影が跳ね上がったと同時に、勇樹の身体が光となって消滅した。
突然の死体が消滅するという現象に、驚いたゴブリンリッターが騒ぎ出し、周囲を警戒したがそれ以上は何も起こらなかった。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。




