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#7 こぶしネゴシエーション 1
「こいつらは僕がひとりで片付けるから、おまえは帰ってテレビでもなんでも好きなのを観ていろ。そして観終わったらすみやかに死ね」
落涙しながら地面にキッスする経文を見下ろして、凶が吐き捨てる。
悪役だったらここで顔面を踏みつけて、ツバでも吐いてるところだ。
「いやーん、冗談ですってばー。小粋なパーティージョークで場を和ませたかったんですよー」
かなりの勢いでぶん殴られたにもかかわらず、たいしてダメージを受けた様子もなくプカリと浮き上がる経文。
殴った凶も最初から想定してたのか、驚くそぶりすら見せない。
つまり普段から、遠慮なくぶん殴ってるってことだ。
「あんなことを言われて、和むはずがないだろ。少しは考えろ馬鹿」
「もー、そんなに怒んないでくださいよー。後でオッパイ見せてあげますからー」
「見ないよ!」
即答しつつも、凶の顔は夜目でもわかるくらい真っ赤に染まる。
その様子をニヤニヤと生温かく見守りながら、経文はさらに続ける。
「じゃあいつものでいいです。それで手を打ちましょう」