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#37 暇人と客人 3
「たのもーう」
玄関に姿を見せた来客は黒髪を肩近くまで緩く伸ばして、カフェラテ色に日焼けした肌の少女。
着てるのは近所にある高校の制服で、凶も普段からよく見かけるもの。
それだけ見れば近所の女子高生(たぶん陸上部か何か)だけど、その手は両手鍋の取っ手をがっちりとホールドしてる。
まるで隣家の人が作りすぎたお惣菜をおすそ分けに来たみたいな風情だけど、隣は民家じゃなくて、昆虫を使った呪術の研究所。
そんな所からおすそ分けされても、ちっとも嬉しくない。
「たのもーう」
「何を頼むのですか」
この場にいる面子の中では比較的社会人レベルの高いリリアンが、代表して尋ねる。
「道場破りである」
「……」
「……」
「……」
会話が成立してない。
両手に鍋を持ってワケの分からないことを口走るっていうコミュニケーションの新形態に、凶たちは思わず顔を見合わせる。




