チート始めたいと思います!(希望
叫び声のした方に当たりをつけて、森の中、草をかき分け木の枝の下をくぐっていくと前方に人の姿を発見。
腰の下までサラリと長い金髪。
金髪といえば碧眼、美人と相場が決まっている。
美人(確定)に感謝感激されてその巨乳に顔うずめる俺。思わずニヤニヤしてしまう。
その美人(確定)は、剣を構えているが、剣先が恐怖で震えている。
美人(確定)の向こうにモンスターの影が見えた。
ここで俺がフラッと現れ、あのモンスターを滅多メタにしてやれば
美人(確定)も俺にコロッっといくだろ。
あれっ?でも俺、武器なんも無いんだった。
素手ってアリなの?このちっこいナリでもいける?一応、神サマ保証付だし?
それでもステゴロは怖かったんで、その辺りを見回して落ちてた棒切れを拾ってたら、金髪が動いた。
剣は真っ直ぐモンスターを叩き切り、パッと血を払うと美人(確定)は素早く剣を収めた。
「あーっ!!」
折角の活躍のチャンスが!
俺の声に驚いて美人(確定)が振り返った。
そして、一瞬の間に俺の鼻先に剣が突き付けられていた。
「なんだ、子供か」
美人・・・じゃなかった。これ、男だ。
声が低い。眉がキリリと上がっている。口はキッと結んでいる。
ナリは優男だが、かなりのイケメン。髪が長い男もアリなのかよ。異世界め・・・。
剣が鞘に収まった。
「大丈夫か?君は迷子かい?」
「男には用がないんだよなあ・・・」
俺はボソリと呟くと、回れ右をして歩き出した。
こんなことをしている場合ではないのだ。次を当たろう。
さっさとしないと異世界チートもハーレムもしないうちに、
何にも出来なくて、何もしない、現実に帰らなくてはいけなくなる。
「待ちなさい、君。こんな森の奥で子供が一人では危ない。私が町まで送って行こう」
イケメンが俺の前に膝を折って、手を差し出した。
いやもう、すっかりお子様扱いじゃん!この見た目が悪い!この身体を創った、あの馬鹿神が悪い!
「俺は一人でも大丈夫だ」
イケメンに向かって、啖呵を切った。
「あんたの方こそ、危ないんじゃねーの?モンスター怖いんだろ?」
イケメンは怯んだ。
「腕は確かなつもりなのだが、いきなり現れるとつい・・・」
あら素直。しかし腕が確かなら、なお更ついて来られると迷惑だ。俺の活躍が減る。
「しかし、子供一人くらい守ることは出来る。私が身を挺しても必ず送り届けてやろう」
真っ直ぐ目を見つめながら力強く言われて、あ、イケメンてこういう事平気で言うからモテるんだなって分かった。
「だが断固断る」
俺はピューと走り出した。方向なんて分からないけど、まあ何とかなるでしょ。
振り返ると、イケメンが呆然と突っ立っているのが見えた。
で、まあ、どうなったかというと何とかならなかった。
当たり前だ。俺は都会生まれの都会育ちだ。
自然と友達ではなかったのだ。
遠足で山に行って、集団行動してたはすが、好き勝手進んだ挙句、遭難した子供のように俺は浅はかだった。
チート能力って、こういう時何の役に立つだろう。
魔法で空を飛べって?
人のいる方向が分かる魔法を使うとか?
そもそも俺、どんなチート能力があるの?
聞いてなーい。聞く前に森の中に放り込まれたんだから。
力はあるらしいが、今この状況でそれがなんの役に立つんだ。
森の中、道なき道を進むうち、モンスターに出会った。
モンスターのいうことにゃ、お嬢さんお逃げなさいって・・・
言う訳はないよな!
慌てて近場の木の枝を掴んだ。
木にでも登れば何とかなるかと思ったのだが、太い枝は折れ、手の中に残った。
うん、武器として申し分ない。
え?逃げようとなんて、シテナカッタヨ・・・。
さて、モンスターを相手に木の棒を武器にして戦うことになった。
モンスターは中型犬くらいの大きさだ。腕試しにはもってこい。
握っているのはかなり太い枝だが、重さを感じない。
ただ、両手で持たないと持てない太さだ。というより、今の姿の俺の手が子供なみに小さい。
その上、ケンカも武術もやったことのない俺に、モンスター退治が出来るかという事だ。
ゲームなら、ボタンやレバーを操作すればいい。
しかし、今は俺がこの木の棒を振り回して戦わなければならない。
イメージを頭に浮かべたら、剣が振れるとかなってりゃいいのに。そうすりゃ、ゲーム上位者の実力見せてやるぜ!
モンスターが唸った。
来るか?
木の棒を構えた。
素早いモンスターの動きが、はっきりと見える。チートらしきところはあるな。
向かって来るモンスター目掛けて、木の棒を横に振った。
当たったが、かすっただけだ。モンスターは、すぐ俺に向かって跳ね上がった。
俺はまた棒を懸命に振った。
しかし素人の浅はかさ。目をつぶってしまった。
棒を避けて着地したモンスターが、ニヤリと嗤った気がした。
振り回す棒の威力にはビビったようだが、
振り回している俺の方が素人丸出しだと気付いたのかもしれない。
異世界のモンスター、案外頭がいいのかも。
構えともいえない棒を振りかざしているだけの俺、と臨戦態勢のモンスター。
無理じゃん。
無理ゲーじゃん。
チート内容に実は剣道してましたっていう経験値、追加してくれないかなあ。
ビョンっとモスンターが飛び上がった。
俺を頭から食らう気らしい。棒で頭を防ぐ。
恐ろしい衝撃と痛みを覚悟していた俺は、ギャンという叫び声を聞いた。
モンスターは襲って来なかった。
正確には倒されたのだ。
俺の正面に今立っている、細い剣を翻し、虹色の髪をなびかせた美人(確実)によって。
「大丈夫だったか?む、子供ではないか」
さっきとほとんど同じこと言ってるけど、俺はこっちがいい。
あああ、良かった~。さっき逃げといて!
「だ、大丈夫、です」
俺は弱々しく言った。持っていた太い棒を茂みへ放り投げる。
美人の上スタイルグンバツ、目の色は金色でちょっと変わっているけど、声も涼やかで耳に心地よい。
これだよ!
俺はピンときた。今の俺の姿なら、不自然ではない。
この巨乳に、甘えて飛び込んでいけばいいのだ!
「こ、怖かっ・・・」
言い終える前に、森の奥から絹を裂くような悲鳴が響いた。
虹色の髪をした美人が、声のした方へと走り出す。
うわ、置いてかれる。
こんな森の中に置いてかれたら困るし、こんな美人、お知り合いになっておかないと
俺のこれからのチートでハーレムな異世界生活のためにも!
7万文字も投稿出来るんだなあ