エピローグ
夢の中で叫び、目を覚ました。空から真っ逆さまに落とされるような、恐怖を伴った目覚めだ。
酸素を貪るように大きく息を吸い、そして吐いた。背中にべったりと張り付く汗が気持ち悪い。自分に落ち着けと言い聞かせても、なかなか動悸が治まらなかった。
夢の内容はいつも同じだ。平凡な日常から始まり、突然の無で終わる。それは嘗て経験した、文字通りの『悪夢』だった。
闇の中、手探りで照明を求めた。置き場所は決まっているので、探り当てるのに苦労はない。それなのに、一刻も早く光を求めて指先が空を乱す。照明が手に触れ、母に手を握られたように安心する。火を点けた。途端に優しい月明かりは掻き消され、揺らめく炎が室内を支配した。
ワタシはいつも暗闇の中に居るな
自嘲気味な考えが過り、それがまた心を暗澹とさせる。
のし掛かる後ろ向きな考えを強引に押しやり、今回の出来事について思った。
新たに発掘した魔法、『ヘルシャフト』ではレンダー・ダートンを完全に支配する事は出来なかった。自体が不安定な魔法なのか、それとも、ワタシの魔力が不足していたのか。
「……」
しかし、成果はあった。トートゥでこそなかったが、あの真っ白い魔法、ワタシの『クランクハイト』さえ打ち消した強大な魔力。やはりキーラは桁外れな魔力の持ち主だった。なんとしても、あの魔力を手に入れなければならない。
ダーダーが自我を取り戻してからも、僅かに意識の繋がりが残っていた。そのおかげで、奴の口からディビドの名が漏れた事も知っている。おそらく、キーラ達の耳にも入った筈だ。聞いた以上、彼らは必ず来る。
事を成すには、キーラの魔力が絶対に必要だ。実った果実をもぎ取るように、確実に手に入れるのだ。確実に。
「既に門は開かれた……」
呟いてから、自分の口から出たその言い回しが妙に気に入り、低く笑う。
「くくっ……」
その場に他人がいたなら、不安を与えるような笑い方だった。その笑いさえも、闇に溶けていく。波紋の生じた水面が徐々に穏やかになるように、闇は闇へ帰るのだった。
〈了〉
これにて「銃と魔法と臆病な賞金首2」は完結です。
ここまで読んでくださった方へ、ありがとうございました。
今回はシリーズの第二章という位置づけで、近々、続編を投稿するつもりです。徐々に物語の核心に迫っていきますので、よろしければ、そちらもお読みいただければ嬉しく思います。
それでは、この更新を持ちまして、この作品を終わらせていただきます。
ありがとうございました。




