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銃と魔法と臆病な賞金首2  作者: 雪方麻耶
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次の目的地

 ワイズはシオンに肘を抱えられながら椅子に座った。ワイズの体重で、椅子がぎしりと悲鳴を上げる。治癒の魔法で怪我は治ったが、疲労まで癒す効果はない。それこそ、全体重を椅子に預けた。


「やれやれ、ひどい目にあったわい」


 嫌味のつもりで言ったのではないだろうが、光来は思わず俯いてしまった。


「今度こそ、おしまいじゃろうな」

「ここの保安官だって、二度も脱獄される程、無能じゃないでしょ」


 リムの台詞に、ワイズは苦笑で返した。


「ワイズさん……」


 光来はおずおずと切り出した。


「リムとも相談したんですが、俺達、明日にはこの街を出ます」


 僅かな間があった後、ワイズは鼻から息を漏らした。


「そうか。あてはあるのか?」

「ええ。ディビドという街に行くつもりです。今回のダーダーの行動には裏があるようです」

「裏?」

「ダーダー自身、自分の意思で行動していなかったフシがあります」

「なんじゃ、それは?」

「さっきのダーダーが本来の彼で、昨日のは違う何者かに操られていたという事です。それなら、昨日と今日で雰囲気がまるで違かったのも頷けるし、魔法が効かなかったのも、ダーダーの意識が深いところに沈んでいたからだと思います」

「人を操る……にわかには信じられん話だな……」

「昨日は三発撃ち込んでも耐えたのに、今日は一撃で倒せました」


 光来の説明を聞いて、シオンは自分の推測が遠からず当たっていたと確信した。オリジナル・ソーサリー『ファントム』は、ダーダーにはしっかり掛かっていたのだ。しかし、あの時、彼の精神は心の奥底に沈まされていた。だから効果が少なかったのだ。ファントムの効果が発揮されたのはダーダーの方で、彼を動かしていた何者かには影響がなかったという事になる。


「その、ダーダーになにかしらの魔法を掛けた奴が、ディビドにいると言うのか?」


 その質問にはリムが答えた。


「分からない。でも、ディビドで会ったと言ってたらしいから、手掛りくらい見つけられると思う。何者かは知らないけど、キーラに会いたがっていた。いえ、キーラの魔力を知りたがっていたなんて、放っておけないわ」

「ディビドか。ここからだと、馬車で四〜五日は掛かるな」


 言いながら、ワイズは一つの事が気になっていた。ディビドは、『暁に沈んだ街』カトリッジのすぐ近くなのだ


「大体、俺の事を調べる奴が居るっていうか事自体、おかしいんだ。俺はつい数日前にこっちの世界に……」


 リムが思い切り光来の足を踏んだ。


「あいった」

「なんじゃい?」

「なっなんでもありません。はは」


 光来は笑ってごまかしたが、シオンは違和感を覚えた。このキーラという少年、何度か世界という言葉を口にしている。世界。世の中。特定の領域。空間の広がり、時の流れ。日常生活ではあまり使わない言葉だ。彼にとって、特別な意味があるのだろうか。

 ふと静寂が訪れた。決して気まずい空気ではない。たまにごく自然と降りてくる沈黙の時。その静寂を追い払うように、ワイズはパンッと勢い良く両手を合わせた。それは、一つの事が終わり、新しい事が始まる合図だった。


「そうと決まれば、今夜は心ゆくまで楽しんでいけ。収穫祭も今夜で最後じゃ」


 ワイズの言い方には慈愛が込められていた。光来たちの訪問によって、トラブルに巻き込まれたにも関わらず、それさえも優しく包容する。長い歳月を経る事でしか得られない風格があった。

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