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銃と魔法と臆病な賞金首2  作者: 雪方麻耶
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捕食者と被食者

 狙っては照準を外す。進捗のない動作の繰り返しで、さすがに疲労が溜まっていった。

 気晴らしに兎や栗鼠ではなく、一本の木の枝に撃ち込んでみた。ツェアシュテールングの魔法は従来の効果を発揮し、枝はバキンと砕け散り、その衝撃で一斉に葉が散った。

 動物じゃなきゃ普通に撃てるんだよなあ。

 意識してないつもりでも、奥底に死のイメージがこびり付いてるのか。リムに撃ち込んだ時に上手くいったのは偶然だったのか? だとしたら、奇跡的なタイミングで成功した事になる。今更ながら、冷や汗が出る思いが湧き出し、こめかみの辺りが引っ張られるような感覚が襲ってきた。

 あまり詰め込み過ぎても空回りするだけだ。少し休憩して落ち着いてから続きをしようと思い、今撃ち込んだ木に背をもたれて地べたに座った。


「…………」


 神経を使ったせいか、やけに疲労感があった。コーヒーでも飲んで一息つけば気分も変わるかなどと考えていたら、家の方から銃声が響いた。

 突然の事だったので、思わず立ち上がってしまった。ワイズが試し撃ちでもしたのかと思ったが、直感がすぐにその考えを打ち消した。

 あれは攻撃のために放たれた銃声だった。銃声を聞き分けられるわけではないが、これまでの経験から、間違いないという確信があった。撃ったのはワイズか? それとも……

 家の方から何者かが姿を現した。光来は咄嗟に木の影に身を隠した。目を凝らして近づいてくる者の正体を確かめる。


「嘘だろっ?」


 驚愕のあまり、声が出てしまった。

 レンダー・ダートン! なんであいつがここに居るんだ? いや、それより、ワイズは無事なのか?

 ダーダーは、まるで鼻の効く猟犬のように真っ直ぐ光来の方に歩を進め、近づいてきた。

 光来は、信じられない思いで木の影から首を伸ばして覗き見たが、目と目が合ってしまった。視野が押し返される程の眼力に圧倒され、反射的に身を屈めてしまった。だが、その動作が良い方向に転がった。いきなり発砲したダーダーの弾丸は、光来のすぐ頭上の幹に直撃した。

 着弾と同時にオレンジレッドの魔法陣が拡大、四散し、耳を劈く爆発音が襲った。爆ぜた幹の破片は物凄い勢いで頭上から降り注いだ。


「うわっ」


 光来は両手で頭を庇って体を丸めた。爆発の魔法エクスプロジィオーンの威力は、着弾点から幹を真っ二つに割いてしまう程凄まじかった。


「居たな、キーラ」


 残忍な笑みを浮かべながら、ダーダーは近づいてきた。完全に、自分が捕食者、獲物を狩る側だと信じて疑わない者の目だ。

 光来はルシフェルを構えたが、引鉄に指を掛けると、漆黒の魔法陣が生じた。


「ちくしょうっ」


 光来は脱兎の如く駆け出した。

 ワイズが無事か確かめたいが、この状況ではそれもままならない。とにかく、今は逃げるのが先決だ。

 背後で何発か銃声がしたが、振り返る余裕など、とてもなかった。


 あいつがキーラか。そうだ。俺は昨日あいつに会っている。ぼんやりとだが覚えている。俺はキーラになにかをするよう命じたような気がするが、その実、俺が何者かにそうするよう命じられていたような……

 俺はあいつになにをさせた? さっきチラリと見えた魔法陣。初めて見る型だった。なにやらぞわそわと不愉快な感覚が胸の辺りに広がるが……

 ダーダーは鈍痛が抜けない左腕を抑えた。

 くそっ、痛え。あのジジイ、馬鹿力出しやがって。怪我をするなんて想定していなかったから、治癒の魔法なんて持ち合わせていない。

 もう、俺が脱獄したのが発覚して、追っ手が掛かっているに違いない。あまり時間は掛けられない。

 キーラ。お前だけはここで潰す

 腕を庇いながら斜面を歩くのはもどかしかったが、ダーダーは足を早めて光来を追った。

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