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銃と魔法と臆病な賞金首2  作者: 雪方麻耶
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 ミクスが出ていったと入れ違いに、光来とリムはシオンの部屋から出た。余計な面倒が起こるのを避けて身を隠していたのだが、用心したのが功を奏した。ミクスが手配書を取り出した時には、ヒヤリとした。あの場に二人が居たら、間違いなくまずい事態に発展してしまっていただろう。ワイズ達には言わないが、リムは拳銃に手を掛けていたのだ。


「あの、ありがとうございます」


 光来が礼を述べると、ワイズは首を傾げた。


「俺達の事を黙っていてくれて」

「ミクスは凶悪な二人組と言ってたんじゃ。お前さん達の事じゃなかろう」


 ワイズの不器用な気遣いが、じんと染みた。


「それにしても、結局、ダーダーはなにがしたかったんじゃ?」


 ワイズの疑問は当然だったが、その誰にともなく投げ掛けられた呟きに明確な答は引き出せなかった。

 当事者である光来が、自信なさげに答える。


「なんか、俺の魔力を見たかったみたいだったけど……」

「なんじゃ? それは」

「分かりません。なんか、不可解な奴でした」

「あいつ、様子がおかしかったのは事実ね」


 三人の視線がシオンに集まった。


「確かに目の前に居るのに、存在感がまるでなかったっていうか……」

「それはワタシも感じた」


 リムがシオンの印象を補強した。


「だいたい、これまで耳に入ってきた風評と全然違ってた。噂じゃ進んで荒事を起こす乱暴者で、奥に引っ込んで手下に任せるタイプじゃないって聞いてたんだけど。それに、あれは絶対におかしかった」


 最後は尻つぼみになって考え込んでしまった。ワイズとシオンは、リムの仕草を測りかねて光来に目で問うたが、光来も目で分からないと答えた。

 二人には惚けたが、なんとなく想像はついた。リムの放った魔法が効かなかった事に不気味さを感じているのだ。正確には効いていなかったわけでは決してない。身体は確かにダメージを負っていたのだが、ダーダーはそれを意に介さなかったのだ。最後の一撃に沈んだのは、ダメージの大きさに肉体が耐えられなかったからだろう。あの生気をまるで感じさせない瞳。思い出しただけで身震いしてしまう。

 皆が無言になり、静まった室内に、シオンの発言が妙に響いた。


「あれは、本当にダーダーだったのかしら?」




 まったくわけが分からなかった。

 レンダー・ダートンは、鉄格子の窓から差し込む月光に照らされながら、物思いに耽っていた。冷たく硬いベッドのせいか、怒りと興奮のせいか、眠気はまるで訪れない。

 あいつが現れたところまでははっきり覚えている。無表情というわけではないのに、感情も考えも読めない奴だった。怖れを抱いたなど、決してない。俺に限って、そんな事は断じてない。しかし、不安というか不気味というか、心がざわついたのは確かだ。

 あいつは俺に言った。


 最強の魔力が欲しくないか


 なにを世迷い言をと一笑に付した。抑揚のない目を見ながら、こいつは本物の馬鹿かと思った時から、記憶が定かではない。うっすらとした輪郭は覚えているのだが、ディテールについては、まるで膜を貼られた様に曖昧模糊としているのだ。

 ただ一つ、はっきり思い出せる事がある。キーラ・キッド。その名だけはしっかりと脳裏に刻み込まれている。俺の組織が壊滅したのも、俺がこんな冷たいベッドで横になっているのも、すべてキーラ・キッドのせいなら、落とし前を付けなければならない。

 こんな単純な牢に俺を縛り付けられるなどと安心するなよ。

 眠れないとわかりながらも、ダーダーは目を瞑った。保安官に撃ち込まれた治癒の魔法のおかげで、傷は殆ど癒えている。今は少しでも体力を回復させるのだ。呑気な保安隊め、明け方には俺を助けた事を後悔するだろう。しかし、もっとも後悔させなければならないのは、キーラ・キッドとあいつだ。然るべき報いを喰らわせてやる。

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