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銃と魔法と臆病な賞金首2  作者: 雪方麻耶
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接触

 シオンは風を追い越し、ひたすらに駆け抜けた。

 北西の廃墟なら知っている。ナジカの屋敷跡の事に違いない。昔は子供の恰好の遊び場だったが、崩れ落ちそうな箇所もあり、危険視した大人達が立入禁止にした話を聞いたことがある。現在は、寄り付く者など滅多にいない朽ち果てた屋敷のはずだ。

 お祖父ちゃん……

 苦しんでいるワイズの事を考えると、体の中心が冷えるような感覚が襲ってくる。走っても走っても、絶望的な闇が背後から迫ってきて、ワタシを絡め取ろうとする。こんな不安に駆られたのは黄昏に沈んだ街に巻き込まれて以来だった。

 あの事件から今日まで、ずっと二人で支え合って生きてきた。こんな事で祖父を失ってたまるか。ダーダーはキーラに会いたがってるらしいが関係ない。ワタシが決着を付け、何としてでも治療の魔法を手に入れてやる。


「ん?」


 遥か前方に砂塵が舞うのが見えた。あれは風によって舞い上がったものではない。目を凝らすと、一定のリズムを刻んで移動するものが認められた。

 ダーダーの仲間に違いない。先鋒隊が帰ってこないので、様子を見に来たのか? それにしては数が多い。正確な人数までは確認できないが、砂の舞い上がり方から推察するに、6~7人、いや、8~9人か。どうする? 治療の魔法を持っているのはダーダーとみるべきだ。そろそろ湖の畔に辿り着く。迂回してやり過ごすか。しかし、湖の広さはかなりなもので、ずっと縁に沿って進んだとしたら1時間はロスしてしまう。いや、それより……キーラが目的なら、あいつらが向かっているのはワタシの家だ。


「…………」


 家にはキーラとリムが居る。リムは相当できる。早撃ちの速度、射撃の正確さ、そして冷静さ。どれをとっても一級品だ。キーラはどうだ? 彼の腕を見たのは、決闘の時の一撃だけだ。抜き撃ちの速さは時間の法則を無視したような、目を疑うようなスピードだった。まだトートゥを持っているだろうか。持っていたとして、祖父を守るために禁忌を犯してまで使うだろうか。いや、それはない。出会ったばかりの他人のために、魔法で殺人を犯す禁忌を破るわけがない。祖父の苦しげな顔が脳裏を過る。


「ここで全員倒す」


 一瞬で決断した。ホルスターから銃を抜き、構えた。


 あの少女、なにかおかしい。

 デクトの勘が訴えかけた。普通、俺達のような見るからに無法者と分かる集団に出くわしたら、身を隠す場所などなくてもなんとか潜ませようとする。触らぬ神に祟りなしってわけだ。しかし、前方の少女は隠れるどころか、真っ直ぐに突き進んで来る。しかも明確な意思を持って。

 双方の距離があっという間に縮まった。

 デクトの本能が危険信号を発した。


「散らばれっ!」


 叫ぶと、デクトは馬を操作し、かつ態勢を低くした。

 ほぼ同時に、銃声が響き渡った。デクトが銃を抜く間もなく、シオンはすり抜けた。


「あのガキッ」


 何発撃ちやがった? 2発? いや、3発か?


「おめーらっ、大丈夫かっ?」


 まるでデクトの声に押されたように、手下たちが次々と崩れ落ち、馬から振り落とされた。全部で3人。その中にはテンガロンハットの男も含まれていた。


「ちくしょうっ。シュラーフの弾丸かっ。あの小娘、俺達がダーダー一家と知ってて仕掛けてきたのか?」


 銃を構え、方向転換した。


「ガキにナメられて黙ってられるかっ」


 そのまま逃走するかと思ったが、驚いた事に、少女も方向を変え、再びデクトたちの正面に立った。


「面白え。俺達全員をここで片付けるつもりか」


 デクトの頬が歪んだ。醜い笑みが浮かぶ。怒りの沸点を超えながらも、絶対に負けないという自信が、常人には理解し難い複雑な表情を作り出したのだ。

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