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猫にこんばんは  作者: 犬鳴 椛子
第一章 昔と今にこんばんは
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上へ参りま〜す。

『足は大丈夫? フミャ?』

あれから、時間が経ち、フミャの足の痺れも取れただろうと思い、チェフは心配して聞いてくれた。


「うん……。楽に……なったよ……」

『そっか……。それなら良かったわ』

 俯きながら、チェフは謝罪をした。そして、心の内をフミャに明かした。

『ごめんね……。うち……友達とかあまりいなくて……。あなたを見かけた時に、友達に出来るチャンスがうちにも来たんだと思ってさ……。あなたに声をかけたんだ……。でも、まさか猫だったとは思わなくてね……。それでも友達になれるならって、思って……ちょっと強引にいっちゃったんだ……』


 よく分からなかったが、チェフの顔は寂しそうだった。しかし、

 悪い人じゃない事はフミャも良く分かっていた。すると、フミャはチェフの頰を優しく舐めた。

『ひゃっ! な、何をして……!』

 チェフはびっくりして、フミャの顔を見た時、フミャは言った。

「チェフは……お友達……」

 フミャはニッコリと笑ってそう言った。

 決して、チェフを拒む様子など全くなかった。


『フミャ…………』

 チェフは今にも泣きそうな涙を必死に堪えた。しかし、フミャには気付かれていた。

「チェフ……。泣いてる……?」

 思いっきり、図星を突かれたので、チェフは思わず、反論してしまった。

『ば、バカ言ってんじゃないわよ……! このうちがな、泣くわけ……』

「ふふっ……」

 フミャがそのツンデレなチェフを見て、クスリと笑った。

 フミャにはもうチェフの事は、全てお見通しの様だった。


『い、良いから、サッサと行くわよ……!』

「うん……♪」

 フミャは笑顔で答えた。

 チェフは、何事もない様なふりをして、ごまかしながら、神様の元へ向かった。



(数十分後……)

『さて、着いたわよ! フミャ! ここがうちが働く会社よ!』

そこは薄ピンクの高く、立派な大きいビルだった。はたから見れば、趣味の悪いビルにも見えた。


「ふみゃぁ……」

フミャはあまりの立派さに唖然としていた。

『神様はここの一番上よ。ここにはね、うち専用のエレベーターがあるのよ! なんたって、神様の秘書だからね!』

「えべれたー……? 初めて……聞いた……」

 猫がエレベーターを使う事はまずないので理解できるはずがなかった。

『まぁ、すぐに上り下りが出来る箱って考えてくれたらいいわ。さぁ、神様の元へ……っと思ったんだけど……。やっぱり、その格好じゃ、神様に失礼よねぇ……』

「この服……?」

フミャは「I LOVE サバ」Tシャツをバサバサと揺らした。


『ちょ、ちょちょ! あなたねぇ! 今は服は着てるけど、その下は素っ裸なんだからね!?』

「ふみゃぁ……?」

 フミャにとって、裸は恥ずかしい事でも何でもなかった。

 なので、言ってる事が理解できず、フミャは首を傾げた。

『う〜ん……。よしっ! 決めた! うちの服をあげるから、ちゃんと着いてきなさいよ!』

「えっ……うん……。でも……服……いらないよ……?」

『あなたが男の子だったら、まだ少しで良かったけど、女の子だものね。女の子には服が無いとダメなのよ! 絶対!』

「わ……わかった……。服……着る……」


 あまりの気迫に圧倒されて、賛成せざるを得なかった。素が強引でも致し方ない事であったからである。

『じゃぁ、こっちよフミャ』

 彼女はフミャの手を握り、エレベーターの中に連れ込んだ。エレベーターの扉が閉まるとフミャが急に慌てて出した。

「チェフ……! 大変……! 閉められたよ……!?」

 慌てるフミャに落ち着いて、チェフは答えた。

『大丈夫よ。これは、上に上る準備よ。さぁ、あなたもこの重力を身体に感じなさい!』

 そう言うと、最上階の一つ下のボタンを押した。

 その瞬間、エレベーターがグンッと動き始めた。

「ひにゃっ!?」

 フミャは悲鳴をあげて、身体にを縮めた。


『どう? 秘書専用のエレベーターは!? 他のエレベーターよりも速いから、身体が重く感じるでしょ?』

 なんだか自慢そうだが、確かに重たかった。

 フミャには凄い圧迫感があり、潰れるんじゃないかという不安しかなかった。が、しかし、すぐに目的地に到着した。

『着いたわ。ほら、立てる?』

「ハァハァ……」

 何もかもが初めての経験だったので、もう頭がパンパンで整理が追い付かないフミャだった。


『ちなみに言い忘れたけど、今日から、あなたはここに住むのよ? それで、ここがうちらの部屋よ』

 扉を開くと、そこはやたらと広い空間でスケートリンク一つ分の広さはあった。ここまで広いとフミャは元は猫なので、狭い場所を探すのに一苦労だし、移動も一苦労である。

「広い……」

 フミャはチェフの後ろに隠れた。

『広いのは嫌いかしら? じゃぁ、この中の部屋でも良いなら、ちょっと狭い部屋があるよ?』

「そこが……良い……」

『なら、そこでお着替えしましょうか。』

 チェフは微笑み、その部屋まで案内した。

「ふみゃ……」

『不安? 大丈夫よ。それにここは男子禁制だし、神様でも覗けない様になってるから、何も心配いらないわ』

 そう言って、部屋の中へ入った。すると、そこはフミャに最適な広さの部屋だった。

「わぁ……。きれいなお部屋……」

 フミャは部屋を見て、感動した。綺麗に整った部屋はフカフカの絨毯に白い壁で仕切られ、引き戸の棚もあった。

『フミャにこの部屋をあげるわ。あなたはもうただの友達じゃないの。親友よ。』

 チェフは微笑みながら、言った。

「しんゆう……?」

『とっても仲が良い大切な友達のこと。よろしくね。フミャ』

「うん……! チェフ……! しんゆうだよ……!」

『ありがとう。じゃぁ、着替えようか』

「わかった……!」

チェフとフミャは良い関係を築き、服を着替えた。


(その頃、神様は……)

「チェフくんもフミャくんと来ない……。忘れられてないよね……? ぼく……」

一人寂しく待っていたのだった。


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