仕返し
『秘書を殺そうとする神様が普通いるかしらねぇ。まったくもぅ……』
チェフは殺人未遂の事をネチネチと言っていた。そして、矢の方に目をやって、歩き出すとその矢を力強く引き抜いた。矢先には、小さな鉄球が付いていた。
『こんなもので……』
そう言うと呆れた顔で矢を揺らした。
その動きは、まるで猫じゃらしの様でフミャはつい反応してしまい、それを目で追いかけた。
その猫の様な動きに気付いたチェフは悪戯心が働き、少し大きめに振ってみた。
その動きにフミャの顔はバッチリと付いてきていた。まさに獲物を狙うハンターの様に。
さらに遊ぶ為に大きく振るとフミャもさらに動きについていく。
すると、不意にチェフが矢を投げた。
それに反応して、フミャも飛び出そうとしたが、フミャは正座で足が痺れていて、そのまま、うつ伏せに転んでしまった。
『フミャ!? 大丈夫!?』
チェフはフミャに駆け寄る。
「いたた……。へいき……。でも……足が……動かないよ……」
心配かけまいと笑顔で振る舞うが、足の痺れの顔は隠し切れなかった。
チェフは罪悪感に押し潰されそうになった。心の中で自分のした事を悔やみ、責めていた。
(うち……何やってんだろ……。自分が恥ずかしいわ……)
そう思っていた時だった。
「チェフ……」
悲しそうな顔をしたチェフを見て、フミャは心配してくれていた。
そして、手を差し伸べた。
「立たせて……チェフ……」
『あっ……。うん……』
そう誘われて、手を握った。
その時、フミャが力いっぱいチェフの手を引いて、転ばせた。
『きゃっ! あたた……。ちょっと、フミャ! 何すん……』
チェフは言い止まった。
何故なら、フミャが悪戯っ子の様な笑顔をしていたからである。
(やっぱり、この子はただ者ではないわ……)
そう、チェフも確信をした。
『フミャ、あなたに会わせたい方がいるの。付き合ってね』
そう言われて、お姫様抱っこされて、フミャは神様の待つオフィスに強制連行されたのだった。