僕と先輩と夏休み計画
「夏休みが近くなりましたね。先輩は予定ありますか?」
「後輩君がいつでも誘えるように予定は真っ白よ」
「ぼ「ぼっちじゃない! というかもう飽きてきたわ、この突っ込みも」
「ボケてるつもりは無いんですけど……。それと僕が"ぼ"を言うたびにビクッてするのやめられませんか? 一人称を使うたび先輩の寿命を縮めている気分です」
「後輩君と長い時間一緒にいるから反射的にやるようになってしまったの。まぁ、話しの区切りに舌打ちのような発音をする悪い癖だと思って」
「マイナーなものを引っ張ってきますね。もう先輩のことはぼっちって言いませんよ」
「それでいい、ありがと。話を戻すけど後輩君は予定とかあるの?」
「はい。クラスの友達と海に行ってきますし、旅行をするのも皆で考え中です」
「へ、へー」
「あ、その旅行のためにイケメン君の先輩から教えてもらったバイトもしますよ。もう、たくさん予定があって楽しみです」
「死ね! 消えろ! 夏休みの間机上に牛乳ぶっかけパンを置いてしまえ!」
「やっぱりぼっち!」
「約束破るの早すぎ!! くそ、後輩君がただのウザい人に見えてきたわ」
「先輩と遊ぶ一日ぐらいは予定空けられますよ」
「慈悲の表情をしながら言わないで! そ、そうだわ! 後輩君は部活に入ってるのよ、そして部長は私。部長命令で夏休み無休の部活よ!」
「ブラック部活! 退部届けだして良いですか」
「ゆとり世代! でもそれはやめて!」
△▼△
「水着きまりましたか? 早くここから出たいんですけど」
部活帰り先輩が水着を買いたいということで同行しているのだが、試着のときに一人でいるのは恥ずかしい。
「後輩君はこれはどう?」
「見せなくて良いんで、早く決めてください」
「後輩君の意見が聞きたいのー」
「そんじゃあ、水色の水着で」
「水玉模様のフリフリがついている水着が後輩君の好きなやつなのね!」
「大声出すな! 帰ります!」
△▼△
「とか言いながら店の前で待ってくれるんだよね」
「たまたま休憩してただけですよ。たまたま会ったので一緒に帰りますか」
「はいはい、ありがと」
隣に来た先輩が手を掴んでくる。
「いきなりなんですか!」
「いいじゃん、後輩君の手は減るもんじゃないし」
「僕の純潔が無くなります」
「自分で言うなし」
悪戯な笑みをする先輩は可愛らしかった。
「今日だけです。もしも勘違いされても責任は取りませんよ」
「えー、ひどいなー」
「そうだ。先輩、前の十年前のことなんですけど」
「そんな話したっけ? 覚えてない」
「そうなんですか。やっぱりなんでもありません」
「うん」
先輩の握る力が強くなったのは無視しよう。
「さて先輩、一緒に帰りましょうか」
「そうだね後輩君」