僕と先輩と生クリーム
「この前はごめんねイケメン君」
「別に気にしてないよ。それよりあの先輩がお前の彼女?」
「そんなわけあるか! 確かに毎朝モーニングコールしたり弁当作って貰ってるけど、先輩が彼女なのはありえない!」
「ははは、うそだよ。なんとなく分かってた。むきになるお前を見てると本当に楽しい」
「うぅ。でもさ、きっとイケメン君には彼女がわんさかいるんでしょうね」
「彼女とわんさかを合わせるのはおかしいだろ。それに彼女なんていないし、むしろ俺は片思い中」
「教室が静寂に飲まれた!」
静寂が僕に命令してくる、イケメン君の好きな相手を吐かせろと。教室がここまで居心地が悪いのは初めてだ。
すでに女子が来ている。人間の情報伝達力は音速を超えているというのか。
「イケメン君の好きな人って誰?」
「教えたくないよ」
「わかってた! ヒントだけでもいいから、ね?」
「それじゃあ、俺より背が低いよ」
「全員が当てはまるわ! もっと絞ってくれ」
「髪はショートで黒」
「窓から飛び降りようとしてる女子を止めて!」
やばい。このまま質問を続けないと後で女子に呼び出されるのは必然。しかしショックにより女子が死に至ることだってある。
「えっと、イケメン君はその子のどこが好きなの?」
ごめん、僕の犠牲となってくれ。
「話してると楽しいところかな。それに元気があるのも」
イケメン君の照れた笑みは破壊力は抜群だ! 野次馬の半分は倒れた!
男まで倒れさせるとは、これはどうあがいても無傷ではすまなさそうだ。
「ここの学校に来てる?」
「うん。朝、一緒に登校してるんだ」
目視できるだけで全員は天を仰いだ!
いつも僕と登校してるはずなのにイケメン君は遠くまで行ったようだ。
「もういっか、言っちゃうよ」
「え……えぇ!? ほんとに良いの!?」
「うん。俺の好きな人は今喋ってる人」
「そっちの好きかよ! 焦ったじゃん! 僕もイケメン君のこと大好きだよ! 一生親友だよ!」
「あ、ありがと」
「僕は生死の境にいたんだよ! そういうオチ、僕大好き!」
「お、おい、抱きつくなよ。照れるだろ」
「照れちゃえ! 僕も恥ずかしい!」
僕はあることを思いだす。
「あ、今昼休みじゃん! 先輩と昼飯食べるんだった。離れてても心は友情で繋がってるよイケメン君」
「くさいこというな。ほら、早く行って来い」
「それじゃ!」
△▼△
「後輩君、顔がにやけててうざい」
「そうですか? それより先輩、弁当とっても美味しいです。良いお嫁さんになれますよ」
「正気に戻って後輩君!」
「揺らさないでください。ん、僕のプレゼント携帯につけてくれたんですか」
「あ、そうなの、とっても可愛いし後輩君からのプレゼントだもん。まさか一日目私が帰った後、買いに行くなんて後輩君イケメンだね!」
「っ! イケメンなんておこがましい! イケメン君に比べたら僕はカメムシ以下ですよ!」
「後輩君頭ぶつけた!? いつもと全然違うよ」
「い、いつもどうりです。にへへ」
「初めて聞いた笑い声よ!」
「………………。ぐへへ」
「一瞬悟りを開いてすぐに汚い笑いになった! 重症よ、これは精神科医でいいのかしら」
「あの時の生クリームになりたい」
「これはもう駄目だ!」