僕と先輩と昼休み
昼休み、教室が騒々しい中ある人が現れた。一瞬の静寂が教室を包み込む。
「後輩君、一緒にご飯食べよう!」
テンションの高い上級生が教室に堂々と入ってくると、静かになるのは必然なのかもしれない。
「真反対の校舎からわざわざ来たんですね。ぼっ「ぼっちじゃないよ」
発作的に先輩は僕のクラスへ来て昼飯を一緒に食べようとする。
「今からイケメン君と昼飯食べてくるんで、またの機会にしてください」
「えー、だってここに来たら毎回後輩君が誰かとお昼してるじゃん」
「ならメールすればいいでしょ。前にアドレス渡しましたよね」
「迷惑でしょ? 私からのメールなんて」
「ここまでズカズカ来る人とは思えない言動!」
「オヨオヨ来たんだよ。校舎で迷って」
「三年生ですよね!? それなら僕からお迎えに行きましょうか?」
「それは嫌だ。絶対来ないで、絶対だよ」
これはフリだと捉えていいのだろうか、迷いどころだ。しかしまぁ、教室に行って本当にぼっちだったらリアクションが取りづらいから行かなくていいか。
「分かりました。行きませんよ」
「うむ、くるしゅうない」
「行きますよ」「すみません」
「それで、私と一緒にお昼をとってくれるかな?」
「……」
「いいともー!」
「一人でやっててさびしくないですか? 律儀に黒いサングラスまでつけて」
「ガビーン! これはもう古いネタにされてしまったの!? ナウいヤングたちにはあわないって事?」
「先輩の時代錯誤が開けてびっくり玉手箱!」
「後輩君、何言ってんの?」
「先輩から始めたんでしょ!」
△▼△
先輩と言いあいをしていたら肩を小突かれた。
「俺のこと置いて楽しそうに話してるね」
「あ、イケメン君ごめん。もしかして一人で学食済ませちゃった?」
「まぁな。周りに女子が集まって男子一人だったよ」
「イケメンうざい!」
その時家庭部の人がつまづいて家で作ってきた白いクリームがたくさんのってるケーキが、イケメン君の顔ににダイブ。
「顔面直撃だったのに少しだけしかクリームがついてないイケメン君マジエロい!」
「ごめんね、君が丹精込めて作ったケーキを俺が食べちゃって。今日の帰りケーキ屋で代わりのを一緒に買おう」
「ナチュラルに放課後の約束を取り付けるイケメン君マジうざい!」
イケメン君と家庭部のやり取りを見てたら死にたくなった。
「ちょっと保健室まで連れて行ってくる」
「行ってらっしゃい、ただのイケメン」
そしてイケメン君は肩を貸しながら保健室に行くのでした。
「顔を洗ってから行けよ! 男性ホルモン分泌機が! ……はぁ、そういや次は先輩を置いてけぼりにしてました」
すると先輩が僕の腕に抱きついてきた。
「なんか、あの人と喋ってる時の後輩君楽しそう。私と話してて楽しくない?」
瞳を潤わせながら問いかけてきたら嘘でもはいとは言えない。
「いいえ、先輩と話してるのもとても楽しいですよ」
「私が一番!?」
顔を近づけて欲しくない。僕の顔が熱くなりそうだ。
「え、えぇまぁ」
満面の笑みで腕にすりすりする先輩は子リスを想像させた。
「毎日メールしても良い?」
「はいはい」
「休み時間ごとにメールして良い? 休日にメールして良い? ……電話して良い?」
「どうぞ」
「……モーニングコールしてもらっていい?」
「はいはいじゃない! 僕からするのかよ! しかも休み時間ごとってやっぱり先輩ぼ「ぼっちじゃない」